ファンダメンタルズ分析において知っておきたい経済指標のひとつ「耐久財受注額」は、主にアメリカの指標のことを指します。アメリカの商務省から月1回発表されています。

なお日本にも「耐久財」の指標はあるのですが、言葉の意味合いが日米で大きく異なるため注意が必要です。日本の場合は「消費者サイドの需要」の意味があります。

まずはこの違いを説明しましょう。

日本の耐久財受注額は家計における耐久財のこと

例えば車や布団、家具、家電など、日常生活においてよく使うものであっても、それほど頻繁には買わないものが「耐久財」です。

もしこれらの価格が安ければ、定期的に買い替えたりもできるのでしょうが、一般的には価格が高いため、一度買ったものを何年も使い続けることになると思います。

またこういった商品は、ある程度生活に余裕がないと買えない価格のものですよね。

このことから「耐久消費財の需要が伸びるときは、景気がよいとき」になることが分かります。

景気と関係なく受注額が伸びることもある

ただし例外もあります。数年前に、高額商品である耐久消費財「テレビ」や「車」の需要が大きく盛り上がったことがありました。

いつだったかというと、テレビは電波が地上波からデジタル放送に切り替わったとき、それと東日本震災の直後です。

また車に関しては、ハイブリッドカーにエコカー減税が適用されることになったときにも、お金がないと思われていた高齢者層に対して、トヨタのプリウスがとてもよく売れました。

このように、景気が悪いとしても政策的な理由で一時的に消費者の購入意識が高まったり、特殊事情で購入の必要に迫られたりしたときには、消費が大きく伸びる可能性があります。注意しましょう。

さて、次にアメリカの耐久消費財について解説します。アメリカでは「企業サイドの需要」の意味があります。

アメリカの耐久財受注額は企業の設備投資

アメリカの「耐久財」とは、企業が設備などに高い金額を投資することを指します。

話を身近に分かりやすく考えるために、ここではあえて「家計」に例えながらお話ししてみたいと思います。

アメリカでの「耐久財」は、一般の家計で言えば「家を買うようなこと」と同じイメージです。

一般的に、家を買うことは一生に一度か二度の高価な買い物ですよね。企業の場合も、そうめったにはない思い切った高額投資をするものに対して「耐久財」という言葉が当てはめられています。

家を購入するときにはローンを組むことが多いと思いますが、企業の場合も、例えば商品を製造するために大きく高価な機械をローンを組んで導入するようなことを指します。これが「耐久財購入」で、この注文を受ける側が「耐久財受注」になるわけです。

新商品を作る場合、コストが多額にかかりますし、これから作るのだから利益は出ていません。このため借金をするような大きな金額になります。

また、商品の増産の場合で考えると、売れているから増産するわけで借金は新商品のときよりは少ないことになりますが、新しい製造ラインを一本増やすためには多額のコストがかかります。

これら、企業が費やした大きな金額の受注額を発表するのが「耐久財受注額」の指標です。

企業で耐久財受注額が決まるのはいつ?

企業ではこの数字がいつ決まって、どのタイミングで分かるのでしょうか?企業が新しい商品を企画してから製造に入るまでの流れで考えてみましょう。

「計画 → 立案 → 計画の承認 → 予算の適用 → 材料や設備の注文 → 新商品の製造開始」

このうち、企業の内部で行われる計画や立案の段階では外部の誰にも影響がありませんが、企画が承認されて実行に移される際、設備の注文のところで機械(耐久財)を導入することになると、機械の注文を受ける企業に耐久財の受注が入ります。

この金額を算出したものが「耐久財受注額」です。設備投資額として公表された上場企業のデータが発表されています。

耐久財受注額は指標の中でも先行指数

設備投資の指標は、「企業」「政府」「家計」の3つの主体のうちの「企業」「先行指数」となります。その中でも耐久財受注額は、設備投資よりもより早い指標です。

新商品や増産品の開発製造の過程において、設備の注文段階で発表されることになりますので、企業が、景気が良くなることを見込んで対応していることを読み取れます。

重要な先行指標であることもお分かりいただけるでしょう。

ファンダメンタルズ分析においても、この指標によって分かることは非常に明確です。

数値が上昇しているということは、消費が堅調である、景気が良いということになります。

日本で耐久財受注額に当たるのは「機械受注額」

日本では、耐久財受注額と同じ意味合いの指標ことを「機械受注額」と呼んでいます。日本国内の企業の耐久財への投資額に関する指標です。

金額が大きすぎるものは除外して算出されている

なお日本の場合は、発電所の設備や造船の機械受注額、製鉄所の設備などは除いた金額で統計を取っています。なぜならば、これらがかなり大きい金額で指標の数値に大きな影響が出てしまうからです。

アメリカの耐久財受注額では上記に加えて、航空機や宇宙設備など軍需産業の数字も除かれています。

国民の生活と企業の景気動向を見る目的で利用される経済指標に、国がかかわるような大きな産業の設備投資の数字も加えてしまうと、かなりのブレが出て正確な分析ができなくなるからですね。

異なる呼び名と意味を覚えて分析に活用しよう

アメリカでは耐久財受注額、日本では機械受注額。そして日本での耐久財受注額。少々混乱しますが違いについて理解できたでしょうか?

耐久財受注額と機械受注額は、企業の設備投資の中でもより先行する指標です。

相場の先行きを気にする投資家にとって非常に重要な指標です。ぜひしっかり覚えてファンダメンタルズ分析に活用していきましょう。