前回は、アメリカとユーロのGDP総額を使ったユーロドルの基準値の算出方法を解説しました。今回は、ドル円の基準値を示してみたいと思います。
実質GDPの前期比を使います。例として今回使用するデータは、2017年7~9月期のものです。
日本GDP
2017年7~9月期実質GDP: 「前期比0.6%」 「年率2.5%」
「2017(平成29)年7~9月期四半期別GDP速報 (2次速報値)」
※ 日本のGDPは、2次速報が確定値になります。
アメリカGDP
2017年7~9月期実質GDP: 「前期比3.3%」 「年率2.2%」
11/28発表
これらの数字を使って計算をしていきます。
GDPの数字を使ったドル円の計算方法
ドル円の円がいくらかを求める計算式は、「ドル÷円」です。
しかし、単純に前期比の数字を割り算するのではなく実際の計算はパーセンテージで行いますので、以下の計算式となります。
「アメリカの成長率前期比1.033÷日本成長率前期比1.06=1.0268」
つまりドル円は、約2.6%の価格変動があると分かることになります。
2017年9月末のドル円は112.5円程度です。7~9月の価格よりも2.6%ほど円高になる計算をすると、「112.5×0.974=109.55円」くらいが適正値(基準値)、ということになります。
GDP年率の場合で計算してみましょう
GDP年率 「アメリカ2.2%」 「日本2.5%」
「1.022÷1.025=0.997」
つまり、3パーセント程度動くことになります。
2016年9月末のドル円の終値は、101.4円でした。
そして「アメリカ<日本」になりますので、円安方向に動くことになります。
「101.4×1.03=104.44」 が基準値になります。
名目GDP年率で計算した場合は
名目GDP年率 「アメリカ2.2%」 「日本3.2%」
「1.022÷1.032=0.9990」
2016年9月末の終値101.4円
「アメリカ<日本」になりますので円安
「101.4×1.01=102.41」
なお、2016/7~9月期の平均レートは102.4円、ここから1パーセント円安になったとしても、103.5円程度になります。
2017年7月~9月期GDP相対値から分かること
年率で計算しても前期比で計算しても、基準値は現在の実際のレートよりも円高になることが分かりました。現在は円安すぎるというのが結論です。
しかしこのようなパーセント表示のレートでは、正確な計算はできないことになります。かといってGDP総額の数字を使って年率と前期比で計算をしても、結果が現状の値と同じには、なりません。
ただ、このような値を実際に見ると、アメリカが日本に対して不公正な貿易であると主張している理由は理解できたのではないかと思います。
また、このドル円レートが120円や130円になることは極めて非現実的であると言えることも理解できると思います。
なお、2017年9月の終値と平均値がともに水準以上に売られていた場合には、基準値は上昇することになります。現在のレートは113.5円で、この数字は、基準値の一番低いもの101.44から12パーセント上昇したものということになります。
そしてこの「12%」という数字、「ユーロドルの解説」の中でも出てきましたよね。一連の解釈が正しいことが分かると思います。