今回は、まずは産油国の国内総生産を見てみましょう。

このグラフは中東各国のみの記載で、中東以外の産油国であるロシアやイギリスなどは記載されていませんが、なぜ、サウジアラビアが国営のアラムコ石油を株式上場したがるのかが、よく分かると思います。

2014年を境に、産油国のほとんどが経済的な苦境に陥っています。この年に何が起こったかというと、原油価格の指標であるWTIが100ドルから50ドルまで急落したのでした。

中東の産油国はほとんどが原油からの収入に頼っていますので、原油価格に何かあると、すぐに経済的苦境に陥ってしまうのです。

原油価格はGDPと為替に影響する

原油価格はGDPに影響し、為替相場にも影響する、ということが今回の話の趣旨です。

日本は、石油をほぼ100パーセント輸入に頼っていますから、原油価格が1割動いたら、GDPも1割動くと考えてもよいと思います。

原油価格は、日本の消費者物価の約14~15パーセントを占めます。厳密に算出するには詳細な計算が必要になりますが、まずはざっくりとこのぐらいだと考えてよいと思います。

そして簡単に分かりやすく説明すると、消費者物価の総合がGDPであると考えることもできますから、原油価格が100ドルから50ドルに下がったのなら、占有率の14パーセントも7パーセントに下がると考えることもできるのです。この変化の影響を考えると、原油価格がGDPに与える影響は甚大であること、もうお気づきですね。

また現在の日常生活は、外国製品なしには語れないです。外国製品の価格は為替レートが影響し、日本のすべての物価にも同様に影響しますから、円建てである実質GDPも、為替レートの影響を100パーセント受けることになる、と言っても過言ではありません。

日本が円安になるとGDPは上昇します。円安は円の価値が上がることだからです。そして円高になると価値は低くなりますので、GDPも下がります。

GDPに大きな影響を与える原油価格と為替レート、要注意です。

為替変動と物価変動の感じ方は国によって異なる

ドル円の為替レート表記は「112.65 円」というように整数は3桁です。ほとんどの対日本円の通貨レートは2桁か3桁です。

しかし例えばユーロドルは「1.1706ドル」小数点以下の部分が重要です。価格が1.1から10パーセント上昇すると1.21、動いた数字は小数点以下であるため、心理的に物価が上がるという実感はそれほど大きくならないと思います。

日本の場合は、ドル円100円から日本の景気がよくなって10パーセント円安になって110円になると、物価の上昇も大きいと感じると思います。

このようにユーロ圏内に住んでいる人と、日本人では、同じ10パーセントの変動でも、感じ方が大きく異なるのです。1ユーロのものが1.1ユーロになる心理的な購買制限意欲と、100円のものが110円になる心理的抑制効果は、どちらが大きいのか、消費行動に影響するか、ということにもつながっていきます。

またこれをGDPで考えると、毎年10パーセントの成長という状態であればイケイケドンドンになりますが、上がったり下がったりであると、変動も大きく感じて「不安定である」と、日本人はより感じやすいことになります。

サウジアラビアのGDPの動向

上記は、サウジアラビアと日本の名目GDPです。ここで注目するべきは、サウジアラビアです。

1970年~1980年代

サウジアラビアのGDPは、1970年代に上昇しています。何の影響かというと、オイルショックによってアメリカのメジャー石油会社に原油価格の主導権を握られたことが挙げられます。その結果でGDPが上昇しました。

しかし、1980年代はアメリカ経済の低迷によって、原油価格も低迷しました。その結果がそのまま、GDPに直結しています。

少々脱線しますが、ちなみにこのときのオイルショックによって大きく儲けたソ連は、その資金を使ってアフガニスタンに侵攻しました。そして資金が尽きたときには国が崩壊しています。ソビエト連邦はなくなってしまいました。

このように、原油で儲けることで国が盛衰した歴史は世界に山ほどあるため、サウジアラビアは自分たちも同じ道を辿るのではないかと、常に恐怖に思っているのです。

2000年以降

2000年代には、元ゴールドマンサックス、アセットマネジメントの会長のジム・オニール氏によって「BRICS(経済発展の見込みが高い新興諸国)は今後成長する」と提言されたおかげもあって、原油の需要が伸びました。

実際にBRICSの「C」である中国などは、工業化が成功し、急成長した恩恵を直接受けています。

その後9.11やリーマンショックによってドル安が進行し、原油価格も上昇した恩恵を受けたのが、サウジアラビアでした。

現在サウジアラビアにはさまざまな混乱が起こっていますが、原油で儲けたお金の使い方が影響しています。サウジアラビアは1980年代も2000年代も、世界各地にイスラム教シーア派のモスクを建設し続けました。

原油で儲けたオイルマネーが各国に与える影響

インドネシアなどは、中東から移り住む人が多かったことによって人口が増え続け、また国民の過半がイスラム教になっています。この変化はサウジアラビアのオイルマネーの影響が一番大きいと思います。

そしてインドネシアは、もともとはOPECに加盟していたのですが、移民による経済成長も影響して、自国で産出した原油を自国で使い切ってしまうため他国に輸出することができなくなり、OPECを脱退しています。

また別の例では、ちょっと飛躍的かもしれませんが、アメリカがサウジアラビアに支払った原油代金が世界各地のモスク建設に充てられ、その結果として、ウサマ・ビンラディンがアルカイダを組織し、アメリカで同時多発テロを起こして、ワールドトレードセンターなどを崩壊させてしまいました。

儲けたお金を、世界を破壊する行為に使う結果になったサウジアラビア、アメリカから相当な非難を受けたことは想像に難くないでしょう。

ノルウェーも同じような構図ではありますが、現在はよい影響の段階にあります。1990年代には福祉の先進国として注目されていたノルウェーですが、実はの国家財政は悲惨なもので、国民に高い税金を課すことによって福祉の穴埋めをしていました。

しかし2000年代に石油採掘が可能になってからは、税金は安くなり、義務教育と医療は無料となり、今ではGNIが世界一の水準になっています。

日本はというと、効率化によって高福祉を実現しようとしているのですが、日本近海のメタンハイドレートなど、実用化は早くても2020年にできるかどうか、先が見えないものに期待しても仕方がない、と思います。

このようなことは「グリーン革命」というかなり流行った本に詳細に書かれています。興味がありましたらご覧ください。

サウジアラビアがアラムコを上場したい理由

そして「グリーン革命」にも書かれているように、やっとサウジアラビアは、国内の経済改革に乗り出しました。原油からの収入だけに頼った国家の運営を止め、これまで儲けたお金は国の変革のために使い、国家を改革しようという動きです。

その第一弾として国営の石油会社、アラムコをニューヨークやロンドンの株式市場に上場させようという話が出ているのです。日本や韓国、中国も、自国の証券取引所にアラムコを誘致しようとして国王一族を接待しました。

サウジアラビアはなぜここまで本気になっているのでしょうか。それは、原油価格がこれからも下がるとの見通しをしているからです。

需給面では、中東はもはや世界の産油国ではなくなっています。現在の世界一の産油国はアメリカです。アメリカはシェールオイルとシェールガスによって世界一の産油国となりました。

アメリカが介入する必要もなくなっている

参考までに、天然ガスの産出国といえばこれまではロシアでしたが、アメリカが世界一に代わってからは、ロシアの高価な天然ガスや石油は誰も買いたくありません。

なおアメリカは、自国で消費するエネルギーを自国で賄うことができるですから、中東に介入する必要がなくなっています。

このことで、わざわざ中東に配慮してエルサレムを首都に認定するのを遅らせたのですが、これからはそんな遠慮も必要がないでしょう。

アメリカがエルサレムをイスラエルの首都に認定したことについて、ヨーロッパは反対を表明しています。

しかし、彼らはリビアなどの原油輸入に頼っていますから、中東東への配慮は必要ありません。また日本はアメリカの同盟国で万が一のときにはアメリカという保険があるため、賛成も反対もしていません。

OPECが減産するのはアメリカが理由

OPECは原油を減産しています。現在はリーマンショック前よりも景気がいいはずなのに、なぜ減産しなければならないほど需要が落ち込むのかといえば、最大の原油消費国であったアメリカが、中東から原油を輸入しなくなったことにあります。

そして、なぜ原油価格が下がるのかというとこれもまたアメリカで、景気回復によってドル高になった結果なのです。

つまりOPECは、需要以上の資源を保有しているから減産をするのです。

トランプ大統領がエルサレムを首都に認定した理由

トランプ大統領が突然エルサレムを首都と認定した背景には、「いきなり明日から「中東の石油はもういりません」ではあなた方は困るでしょうが、しばらくドル安にして原油価格を維持してあげるから、その間に国の体質を変えなさい」という意味もあります。

そして、「そこまでしてあげたのだから、アメリカの同盟国であるイスラエルの首都は、エルサレムにしますよ」ということでもあるです。

アメリカとしては、「中東でもし戦争が起こってももう関知しませんが、イスラエルまで巻き添えにしたら許しませんよ」というメッセージも送っているのですが、日本国内のマスコミは誰一人として正確に報道しようとしません。

現在中東で混乱が続いている理由は、原油の価格が将来下がることが分かっているからであって、アメリカに追従したサウジアラビアに、イランなどのスンニ派が反発しているのです。

中東は、これから大きく変わろうとしています。いつまでもアメリカに逆らうイランは、おそらく将来、中国かロシアの傘下に入ることになるでしょう。

そしてもしこの先どこか暴発するとすればイランでしょう。サウジアラビアはすでに、根本的に国を変える準備をしていますので、何も問題ありません。

投資先として将来性があるサウジアラビア

原油価格はこれから下がるとされているのに、日本のGDPを上昇させたい安倍首相はどうするのでしょうね。

中東の情勢を正しく理解して、今後の投資先としてサウジアラビアを考えると、おそらく相当なリターンがあるだろうと考えられると思います。

ドバイとかはもうだめですよ、下手したら高値つかみになって大損してしまうかもしれません。

アメリカは自国で生産できて消費するから、原油価格はあまり影響しませんが、日本は原油価格が下がるとGDPとしては不利です。

景気がよければ、原油価格が下がることはプラスになるのですが、今の状態で原油価格が下がるのは、日本にとって何の得にもなりません。

ゆえに、ここでもやっぱり「円高になる」結論となるのです。