まずは、下記のグラフをご覧ください。
このグラフは国内総生産GNPで、GDPが世界標準になる以前に標準として利用されていた経済指標です。
GNPのNはNationalナショナルの頭文字で国籍関係なく国内に住んでいる意味、GDPのDはDomesticドメスティック、その国に居住する人のことを意味します。この二つは、「総生産」のカウントに含める対象が異なります。
世界的に人の移動の自由が保障されたこと、そしてユーロ誕生によって世界の人々の往来が加速したことで、国の総生産のカウント方法を変えて表記も変えたものです。
「日本のGNP」というと日本人や日本企業が世界で稼ぎだすお金で、「日本のGDP」というと、外国人も含めた日本に居住する人や日本にある法人が稼ぎ出すお金という意味になります。
日本は島国で諸外国に比べると外国人は少ないのですが、バブル崩壊以降、法人は海外に進出し、GNPには外国での稼ぎもカウントをしていました。一方GDPでは、外国で働く日本人の稼ぎは除外されています。
これらの数字は、多少違ってはいても、世界情勢をよく表現をしているものです。
アメリカの成長は過去から将来まで続く
アメリカの場合は、1980年代にレーガン大統領のレーガノミクスにより、国の成長が急加速しました。
主な功績にはプラザ合意がありますが、レーガン政権時代からの成長は現在まで維持されています。今後に関しても、成長は続くように見えます。
例えば人口動態。若い人がこれから増えていくアメリカは、生産人口も増える見込みが高いですし、経済力の面でもアップルやグーグル、アマゾンなどの企業の世界進出はまだ続くことでしょう。
一方、中国の成長は、日本の成長が鈍化し始めた1990年代から加速し、リーマンショック前後からはさらに急加速しています。
中国の成長のきっかけは、鄧小平氏による改革開放路線が最も大きいですが、外部要因としては、日本の成長の鈍化とリーマンショックによるアメリカの成長鈍化によっても、もたらされたと言えます。ライバル国の経済が鈍化するたびに、成長を促進しているのです。
現在の中国は、経済成長が鈍化していますが、この先アメリカから、中国が市場のシェアを奪うようなことはできるのでしょうか?アメリカ経済は絶好調になっていますし、個人的には無理だと思います。
中国の成長のためには今後、中国国内の内需の新興を行わなければならないといと思います。中国は人口13億人もいるのですから、国民の生活水準が先進国並みになれば、充分達成は可能だとは思います。
しかし、その前に共産党の姿勢を改めないと、中国人民の生活は一向に改善しないでしょう。
中国の共産党は、儲かっている人がいると、私有財産の禁止を名目に財産を取り上げてしまうのです。さらにそれを国民がまねるようなこともしています。共産党指導部は役人の汚職撲滅運動をやっていますが、効果のほどはどうでしょうか。
成長のために、日本は他国からシェアを奪えるか
日本の成長が加速するためには、中国や韓国が占有している市場のシェアを、何とかして奪わなければならないと思います。しかしそうなると、必ず歴史問題が余計衝突することになりますので、ほとんど無理だと思います。
富を高められるかどうかは、自分次第
汚職役人の話に関連して、少々脱線します。汚職については、どこの国でもどの時代にもほぼ必ず起こっており、私たちも意識しなければいけないことだと思います。
本来の富、お金は地球上に無限にあり、真面目に働ければ得られるものです。
富を増やすためには、得られたものをどのように自分に還元するかが問題で、単なる消費で終わらせてはいけないのです。
投資そのものや自分の学習への投資によって、富の価値はいくらでも高めることができます。しかしこれを認識して実行できるかどうかの問題です。
まず、投資とは自分のためにするものではなく、社会や世の中のために、皆が幸せになるために行うものである、と認識することです。自分の老後が楽になる目的だけで投資をすると、決してうまくはいきません。
話がだいぶそれましたが、人口がこれだけ多い中国の人々が、自分の利益のためではなく、アメリカ人のように他人の権利や自由を保証することによって発展していくことを覚えたなら、この先最強の国家になることができるのでしょう。
個人的にはその意識改革には相当な時間がかかり20年は必要と思っています。また、共産党の私有財産の禁止などという体制の崩壊も必要でしょう。
私は、日本が戦後占領されてアメリカニズムになったのは、不幸中の幸いだったと思っています。もしこれが中国に占領されていたら、と思うと背筋が冷たくなります。
いくら生産性が向上したとしても、他人の利益を略奪してまでも自分が幸せになりたいという欲望は、なかなか治らないと思います。そんな中国の行動の象徴が、東シナ海や南シナ海などの軍事行動だと思います。そういうわけで中国は今後、おそらく下向きになるでしょう。
日本と中国の高度経済成長が世界的モデルに
日本の場合には、1960年からの高度経済成長と90年代のバブル景気まではよかったのですが、それ以降全くよくなっていません。日本の高度経済成長は、中国の90年代の成長と同じで、人口によるものも大きかったと思います。
日本の高度成長は、工業化社会になったこと、具体的には家電などを工場で生産をして、その量産品が安価で世の中に普及したことが理由と言われています。
日本も昔は、新興国のひとつに数えられていた時代があります。日本の経済成長は、新興国が工業化することによって、ものすごい経済成長国になれるという、モデルになったのです。
中国も工業化をしたことによって、経済が異常なまでに発展しました。後進国や新興国は、工業化すればものすごい成長ができるということを、日本と中国が世界に証明したのです。
世界に貢献する実績をあげられたことは素晴らしいと思います。ただし日本も中国も、アメリカやそのほかの先進国の利益を奪ったからこそ、この成長を成し遂げたことも、忘れてはいけないと思います。
成長が止まって、全く元気がない日本
成長期だったバブル経済が終わり、日本は低迷していました。2013年から大幅な通貨切り下げを行って現在2017年ですが、成長率においては全く成果が出ていないと思います。
レーガン大統領が任期の8年で見事に不況からの脱却を成功させたのに対し、安倍首相にはその手腕がないといってしまえる状態だと思います。
アベノミクスは、いつも私がいうように蜃気楼です。例えばアメリカは2000年以降、インターネットの技術開放によって国の成長が加速しました。
2000年代に主流であったIBMなどの企業はすでにあまり話題に上らなくなり、今は、FANGの時代です。FANGとは、Facebook、Amazon、Netflix、Googleの頭文字を取ったもので、アメリカ株式市場の巨大ハイテク銘柄群の呼称です。
日本の場合、成長の軸になる顔ぶれがいまだ変わらず、昔と同じネームが幅を利かせています。老舗企業が幅を利かせているようでは、日本の成長などありえないわけです。
老舗企業が優良企業なら成長もあるのでしょうけれど、東芝、日産、電通のように、古い体制も悪影響しているのか、社会的に許容できない悪さをする点だけが際立っていて日本経済には何も貢献していません。
多少貢献していたとしても、意思決定が牛のように遅く、確実に安全が約束されている範囲でしか行動しない。こういったことも日本の経済成長の歩みが遅い原因となっています。国が法人税を減税してくれて企業の利益が増えた分を、国にも社会にも還元しない、というのもひどいことだと思います。
日本全体に、バレたり法に触れたりしなければ何をやってもいいという雰囲気が蔓延しており、楽な道ばかり選ぶ人が増えています。
楽な道を選ぶことを一度自分に許してしまうと、成長は一切なく、あとは果てしなく落ちていくだけだと気付けないのでしょうか。そのうちモラルも崩壊して、やってはいけないことまで平気でやってしまうことになると思います。
既存の技術を「発想の転換」して大成功した例
今の日本に必要なものは、最先端のAIなどを用いた新技術ではなく、既存の技術を使った画期的なアイディア、例えばスマホのようなものだと思います。
近頃のヒット商品を見ても、ビットコイン、AIスピーカー、配車手配、出前手配など、すべて既存の技術やサービスを転換しただけのものです。
Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)のサービスなどは、別にアメリカが発祥である必要は何もないのです。日本の出前という文化をウーバーやアマゾンが代行しているだけの話なのに、出前の文化を知らない若者が賞賛したことで、世界に知られるようになったのです。
ちなみに、携帯電話を世界で初めて作ったのは日本であったということ、ご存知でしょうか。電話が固定されているという概念を壊したのは日本だったのです。
アイディアとして発表されたのは、1970年の万国博覧会だったと言われています。市場向けに製品化されたのは1985年で、当時は自動車電話でした。
だからアップルのような会社が、技術力の高い日本に部品調達を求めるのです。そしてその組み立ては、アメリカ国内ではなくコストの安い中国というように、得意分野を理解して使い分けています。
日本が携帯電話発明の成長余韻に浸っていた2000年前半、パーソナルコンピューターの一部機能を携帯できるように替えてしまったのが、アップルでした。スマホです。
つまり、技術水準は日本にもあったのですが、経済的な苦境に立たされる日本にはコロンブスの卵のような逆転の発想が思いつかなかったのです。今も、新しい発想は出ていませんね。日本企業は、創造性に欠いた存在となってしまいました。
ビットコインやその中核技術であるブロックチェーンの技術も発想の転換から生まれたもので、何も目新しい技術などありません。これまでの概念を壊すサービスであったから、これだけ普及して、あれほどの値段にも上がったのです。
でも、個人的にはビットコインには未来がないと思います。あそこまでやってしまうと中国支配が明確になり、みんなしらけてしまいます。
あんな極端な買い占めを行うのは中国人以外いないと思います。先進国の投資家ならば、不当な値段釣り上げ工作として逮捕、検挙されるのが怖いからしないでしょう。
結局、中国人は全体の利益を考えず、こういう画期的なものまでを私利私欲でこわしてしまうことがあるのです。ビットコインでもそれが証明されるでしょう。
別の例では、スポーツブランドの世界で、長年トップを走っていたのはアメリカのナイキでした。その後、ナイキより老舗のドイツのアディダスが、スポーツ機能性を捨て去るという発想の転換をしたことによって大躍進しています。
日本に入ってきた当初のナイキは、デザインがあまりにも派手で日本人受けしそうではではなかったのですが、ある程度デザインを地味にすることで日本人にも受け入れられたのだと思います。
アディダスは、デザインをさらに地味にシンプルにすることによって、今では本国のアメリカでも、ナイキよりアディダスのほうが売れている状態です。デザインはシンプルなほうがいいと、アメリカ人も気づいてしまったのでしょう。
おそらく、アディダスの躍進はこの先もすごいことになると思います。一方でいまだに派手なデザインと機能性を売るナイキは、取り残されていくのではないかと思っています。
日本にも、このような発想の転換が必要です。戦後行われたような財閥解体のように老舗企業の古い体制を取り壊すこと、そして今ある技術の中から、逆転の発想でアイディアを出すことが、日本の成長のための課題となるでしょう。
企業の経営者、自分の会社の株価が高いことに気をよくして、日本経済の復活には政府の赤字削減が必要、などと人のせいするようなことを言っていますが、根本的な問題は自分たちにあることに、早く気付くべきです。
世界の他の国々は
アメリカ、日本、中国の話をしてきましたが、それ以外の世界の先進国の国はドングリの背比べ状態です。その中で個人的には、島国でも活躍しているイギリスには注目したいと思いました。また他の国についても見ていきたいと思います。
イギリス
あの国土の狭さからすると、イギリスのGDPが世界9位のGDPを誇っていることは素晴らしいことだと思います。
しかし、やはり去年のブリグジットは大きな問題だと思います。2017年の年末に、アイルランドも共同してEUを離脱するかの問題を積み残したまま、離脱を進行させることを決断してしまいました。
アイルランドの問題を残したままイギリスとアイルランドが分裂、それぞれ独立騒動になると、国力が半減することは想像に難くないでしょう。この先のイギリスの国力は、今後の対応と交渉次第によって極端に衰える可能性が出てきました。
ですからこの年末に、イギリスポンドの買い推奨は、凍結する判断に至りました。
ドイツ
ドイツの好調は2000年代からです。好調の要因は、ユーロ誕生によって関税が撤廃されたためであることは明らかです。ユーロ経済が不安定になれば、その不安定要因としてドイツは落ちていく、と考えるのが普通です。
この間のギリシャ問題の債務を片づけたメルケル政権は非常に優秀、ということで、今はドイツ経済に注目が集まっていますが、冒頭のグラフからは、根本はユーロ誕生によってもっとも恩恵を受けた国だから、と見るのが適正だと考えます。
スペイン
スペインは、本記事でも取り上げていますね。カタルーニャ地方の独立問題は一応の収束を見せていますが、この問題はスペインの統治問題が根本原因です。
このため、また沸くようにこの問題は再び噴出すると思います。つまりイギリスと並んで分離独立問題は、来年以降相当な問題となり得ると思います。
オーストラリア
オーストラリアは、土地バブルの崩壊が顕著で消費者サイドが不振になっていますが、一方で最近、企業サイドは持ち直したと話題になっています。
しかしこれは日本同様、消費が不振であれば成長が加速する見通しはよくないです。
さらにオーストラリアは、地球温暖化の影響を受けて天候不順が続いています。その割には穀物生産が全く落ちないように見える点は称賛に価しますが、オーストラリアの貿易相手は中国ですから、中国の減速が大きく影響していて、問題にならないのだと思います。
国の成長余力を引っ張る、貿易と消費が不振になる可能性がある国は、買いを進められないこと、お分かりいただけると思います。
国を劇的に変化させるのは投資と貿易です。投資が継続的に行われれば、暴落はそうそうないとは思いますが、大きく上がる期待もできないということです。
オーストラリアには、日本からの投資も相当入りますが、日本や欧米からの投資を受けても、消費者は土地の債務によって可処分所得が少ない状態と言うのが現実です。
その結果、現在好調な企業も長くは続かないと懸念されます。また、貿易相手の中国は、急速な成長が終わろうとしていることも考えると、あまり期待はできないだろうなと思います。
以上のように、アメリカ以外のほとんどの国は、日本と同様の問題を抱えており、ドイツのような特殊要因がない限りは、低成長に陥っているといえると思います。
どの国も、発想の転換をして新しいものづくりを
アメリカのように成功したいなら、アメリカのような発想の転換ができる頭の柔らかさと、それを実現できる社会的環境を作ることが、大切なのではいでしょうか。
ここのところの世界的ヒット商品とは、新技術を使ったものではなく、既存の技術の効率性を生かした商品やサービスばかりです。アイディアとインターネットを利用したものが世界を席巻している事実をよく見ることです。
既存の技術からでいいのに、日本は技術が既にあるにもかかわらず、発想の転換はできずに、AIなど新技術にばかり注目してしまう。これは日本のよくないところだと思います。新技術開発は、既存技術の応用に比べて、コストも時間もかかります。
例えばAIスピーカーなんて、要は据え置き型のマウスのないコンピューターで、新しい技術であるAIは音声認識システムのところだけです。手動操作していたものを音声認識に変えたというけで、世界的なヒット商品になっていることにもっと注目するべきでしょう。
なお成功例ばかりではなく、アップルの腕時計のように不発になっている製品もあることも忘れないでほしいと思います。
とにかく日本には、新しいアイディアが思いついた人がいても、それを回りが受け入れて実現させるための、社会的なインフラがあるとは到底思えないわけです。
せっかく世界を席巻するアイディアを持っていても、実行力がない、資金がないからとあきらめるしかない、この環境の違いも、日本がアメリカに常に大きく遅れを取っている原因だと思います。
もっと世界に目を向けて、世界で何が起こっているか、日本は何ができていないのか、興味を持つ人が増えることを願います。