今回はまず、テクニカル分析の勉強中の誰もが、きっと心当たりがある話から始めましょう。

正直な話、テクニカル指標の専門家がしていることは、生産性に結び付いていません。私も過去にテクニカル分析をさんざん試したからこそ、現在もこの連鎖にかかわる人が存在することを理解しているのですが…。

テクニカル指標の専門家を名乗る人とその下層の予備軍の人々は、新しい指標を探すことに常に躍起です。見つけてはバックテストを行う。しかしよい結果が出たとしてもせいぜい2~3か月で、それ以降は全く機能しなくなる。なぜなのかは分からない。

彼らは問題の答えを見つける作業はせずに、次の魔法の杖を求めて新しい指標を探します。

彷徨い人だったのに専門家と名乗ってしまう日本人

そのうち彼らは、短期的にしか儲からないことに気づき、さらに最下層の人間を巻き込もうとします。

一般的には、自分が専門家であると名乗り、高価な「情報商材」を販売し始めるのです。その情報が機能しなくなる頃には、販売元ごとドロン。

最下層とは、相場で勝てる方法を求めて彷徨っている人々のことで、この層は常に沸いて出てきます。この層をターゲットにして儲けようとする元彷徨い人も、いつも沸いてきますが、彼らが成功者側になることはありません。

いい加減にこの連鎖を断ち切って解放されたらどうなのか、と思いますが、彼らは叶わぬ夢を追い続けます。

このような連鎖が発生してしまう理由のひとつは、テクニカル分析が、複雑な相場を一般の人にわかりやすく図解したものでいるからです。

テクニカル分析で将来のことが本当に分かるのか

相場のことを全く知らない人でも、テクニカルツールで表された相場をみれば、今が買われすぎなのか売られすぎなのか、なんとなく分かった気になります。

だからテクニカルは、分析方法として入りやすいのです。しかし昔からの格言では、「悪銭身に付かず」。楽して手に入れたお金は身につかないのと同じで、楽して覚えた技術は身につかないのですけれどね。

昨今AIが流行りはじめ、どこもかしかも合理化、効率化の名の下に数字が全盛の時代です。

しかし数字だけで将来のことが本当に分かるのでしょうか?

数字という統計、テクニカル指標で、本当に相場の未来の価格を算出できるのでしょうか?私はできないと思います。

私は個人的には、ごく簡単な自動売買プログラムしか組むことができないレベルですが、数字を追求しても答えは出ないと考えています。なぜなら、考え方の根本が間違っているからです。

数か月しか機能しない自動売買ソフトが多い

たいていの自動売買ソフトは3か月しかよい結果が出ません。長い場合でも半年でしょう。いったんうまく機能をした自動売買ソフトやテクニカルツールが、3か月で機能しなくなるのはなぜでしょう?

なおもし半年以上続けて儲かる場合は、よいソフトだからとは言えず、単に相場が特殊な状態で「誰でも儲かる相場」の時期だからであることがほとんどです。

ちなみに、相場観が変化しているにもかかわらず「変わらない、ずっと買いでいい」などと言い続けるアナリストが支持される理由は、視聴者サイドからみれば、必ず買いと言ってくれることが安心感につながるからです。

一時売り局面になったとしても、彼らは「買い」と言い続けることでしょう。なぜなら、長く続いた低迷した相場でも、いつかは買いになります。

長い目で見れば結果的に当たっていたことになるだけの話です。しかし、そんなアナリストを信用していると、いつかあなたが破綻します。

私のファンダメンタルズ分析では、ドル円の根本的な価格決定論を考えると、長い目で見ても間違いなく円高です。

分析結果が通用しなくなってしまう理由

「なぜ相場は3か月に一度変わるのか」考えなくてはいけないと思います。

それは四季があるからで、季節が変われば人間の考え方は変わるものであるからです。人の考え方が変わっていくから、世の中が変わっていき、相場の場付きも変わるのです。

赤道付近には四季がありませんので、考え方は変わらないかもしれませんね。しかし人間は、過ごしやすい気候のところに集中して住居を構えるもので、経済が発展しやすいのも四季がある地域です。四季があるから人々は豊かな生活を送ることができます。

なお相場のサイクルには例外もあり、素人でも儲かる相場がたびたび現れます。それはバブル期です。

通常バブル期とは、半年から1年半で収束するもので、その間に作った自動売買システムは、3か月以上もちます。つまり、情報商材でもバブル期に作られたものは結構長持ちします。

しかし考えてみてください。「素人でも誰でも儲かる」相場のときに、わざわざ何十万円も出して商材を買っても意味ないですよね。

また、本当に儲かるのならば、誰にも教えないでその利益を独り占めしたほうがはるかに合理的、と考える日本人の方が多いと思います。

今の日本経済もこの流れです。自分のことしか考えない日本人には、独り占めせずに販売することはおかしい、裏があるのかもと疑ってもよいと思います。

四季と人が変わる影響の考慮が抜けている機械

AIのことで考えてみましょう。これだけ統計的データを解析して将来の予想をしたとしてもそれ以前のところで、開発者である「人」が、人が季節ごとに変わることを理解していない、そしてそのことに気づいてもいないと思います。これは致命的です。

普段人は、自分自身が変わっていることを全く意識していないのですから、無理もないとは思います。

久しぶりに友人会うなどして初めて、自分が変わっているということに気付く程度ですよね。人間の本能的には、自分自身が変わっていない、と感じているものです。

人間は、急激な環境の変化には対応できない生き物です。例えば平均気温が10度上昇すれば、自然に生息している動植物も劇的に変化するはずです。環境変化に耐えられない動植物は生き続けることができません。

人間も同様で「変わっていない」と感じることが生命維持装置でもあり、ゆっくりと四季が移り変わって1年経てば元に戻るから、人は生き続けていられるのです。

世の中には、数字で表すことができないことが存在する

自動売買システムやAIの研究をしている人々は、自分が変わらないと思っているのと同様に、マーケットの場付きも変わらないことを前提にシステムを作っています。だから必ず対応できなくなる時が来るのです。

なお、この微妙な変化を数字として表現することは、まだ技術的に達成されていません。ということは数字のみで構成されている自動売買システムの的中率も、これ以上は上がらないと言えると思います。

技術的に数字で表すことができない、最たる例が時間の変化です。「時間は誰にでも平等に与えられているもの」とは言いますが、実際の時間の経過の感じ方には大きく個人差があります。

危機を感じている人は時間の経過がゆっくりに感じ、楽観の多い人は早く時間が経過するという個人差があります。

また逆に考えている人もいます。これらもAIなどで表すことは不可能でしょう。

移動平均線のランダムウォークと酔っ払いの千鳥足

テクニカル分析で最も重要とされている移動平均線は、値動きの平均値を表した線に値動きそのものが近づいたり離れたりする習性を相場分析に活用しますが、これはアインシュタインの「相対性理論」の一部であるとも言えます。

しかしマーケットのチャートは根本的に、時間の経過を一定であると仮定して測定しているため、測定不能の値動きは「ランダムウォーク」と呼んでいます。

しかしこの値段の動きにもある法則があります。酔っ払いの千鳥足のこともランダムウォークと呼ぶのですが、どんなに千鳥足でも酔っぱらいには目的があります。

その目的とは「家に帰ること」です。いくら千鳥足でも、途中で寝てしまっても、最終電車に乗り遅れたとしても、家に向かって進んでいることだけは確実なのです。

移動平均線の話に戻ると、値動きの目的、どこにベクトルが向いているかというと、平均線です。つまり、ランダムな動きをしてもいつかは平均値に収束していく、というのが、チャートの移動平均線の理論なのです。

ただし、値動きは酔っ払いと同じですので、まっすぐ歩くことはできず、思わぬ事態によって大きく蛇行することもあります。例えば、途中で知り合いに声をかけられたり、居眠りをしたり、電車がなくなったり、ということは、移動平均線で言うと平均線からの乖離になります。

しかし、途中さまざまな事態が起きても、家に帰るという究極の目的が変わらない限り結局は家に向かう、同様に値動きも、平均線に向かうのです。

なお、ここまでが一般的にAIや自動売買で考えられている範囲です。必ず目的に回帰していく前提でしか考えられていません。

家に帰るのをあきらめる酔っ払いもいる

しかし千鳥足の酔っ払いのうち、家に抱えるのを途中であきらめてホテルに泊まる、家に着く前に夜が明けたからそのまま会社に向かう、という人もいると思います。

相場の値動きにも、平均線に収束しない事態が稀に起こります。システムではこのことも考慮して対応するべきなのに、対応ができないのがAIやテクニカル分析全般なのです。

ちなみに現在の科学では、このような事象の確認までできています。酔っぱらって千鳥足の人が家に向かう人が100人いるとすると、そのうちの70~80人は家に向かう行動をします。

残りの20~30人は、ベンチで寝たり、終電を逃したり、ホテルに泊まったりして、家に着かずそのまま会社に向かうのです。これは、統計上明らかにされていることです。

テクニカル指標の理論を正しく理解していますか

これを目に見えるようにしたのが、RSI指数と呼ばれるテクニカル指標です。70~80パーセント、または20~30パーセントの指数のところで相場が反転する、という理論です。

しかし「70~80」とはあくまでも目安であって、ここで確実に反転するわけではありません。それなのに人は、なぜか「70~80に来れば100パーセント確実に反転する」と思ってしまう、だからRSIは役に立たない、となるわけです。

また、その20~30パーセントの乖離の中に歩みが70~80パーセント収まるという理論がボリンジャーバンドです。この的中率も70~80パーセントです。

RSIもボリンジャーバンドもそもそもの的中率は70~80パーセント、しかしこの前提条件を忘れて、それ以上を求めてしまうから彷徨うことになるのです。

私から言わせれば、せっかく便利な指標なのに、中身をしっかり理解していない、しようとしないから、結局うまくいかないだけなのではないかと思います。70~80パーセント以上の部分の精度を上げようといくら研究しても無駄、とも思います。

要するにテクニカルアナリストとは、上記のようなことを知っていれば誰でもなれるものなのです。彼らがする検証も、結局根本の理論は紀元前から変わっていないのに、さも進化したかのようにAIだEAだと言い換えているだけなのです。

平均線を複雑にしすぎると答えが出なくなる

つまりテクニカルとは単純明快で、移動平均線の乖離と収束だけの話です。この理論を正確に覚えさえすれば、最高値や最安値をピンポイントで当てることは、誰にでもできるのです。

それをさも難しそうな、加重平均とか指数平滑平均とか、複雑にしていますね。加重平均にしたところで予測の精度は、上がるのではなくて下がるのです。

最も単純な平均だけでも70~80パーセントの確率で当たるのに、加重平均にすると的中率は10パーセントほど下がります。複雑にすればするほど精度が高まると思い込んでいる人は、一度基本に戻ったほうがよいと思います。

RCIやストキャティクスなどが代表例でしょう。数字で統計をとれば、単純移動平均のほうが優れていることは確かなのです。

もしテクニカルアナリストが、加重平均のほうが単純平均より優れていると言ったとしたら要注意です。何も分かっていない証拠でしょう。加重平均を用いるということは、一部の少ないデータを無視して分析の考慮に入れないことになります。

相場分析の場合特に、データを無視するということは、歴史を無視するということと同じです。これは大切な基本から外れていることになりますよね。

一方で、太古のキリスト時代から単純移動平均の計算方法が存在し、現在も利用されている理由は、的中率が変わらないからです。

とにかく、加重平均は、現状を判断するのには多少有効だとしても、将来を予測するためには向かないものであること、ぜひ覚えておくとよいでしょう。

宇宙工学から移動平均線の計算期間を考える

単純移動平均線がベスト、と分かったところで次の疑問は、いったい何日間の平均を使えばよいのか?だと思います。そのヒントをここから書いていきます。

太古の昔から、人間は天体の動きに常に関心がありました。古くは地動説、天動説があります。なぜ昔の人々はこれほど天体の動きを知りたかったのでしょうか?季節の移り変わりを解明し、将来を予測したかったからでしょう。

季節は、地球の公転や自転、そして天体の動きによってもたらされるものです。

相場のテクニカルには、宇宙の知識まで関連してくるのです。四季があることで人の意識や行動が変わり、相場の値動きも変わることは、先にお話ししたとおりです。

また、人間は光り輝くものが大好きですが、太陽、星、月は光るものということからも、昔から常に人々を惹きつけ、自然に深い関わりもできてきました。現在使われているカレンダーも太陽暦ですし、時間軸も太陽の動きに合わせたものですよね。

人間は無意識に、天体が作り出す季節に従い、天体が示す時間に従って、すべて行動していることになります。

人間の深層心理と関連があるのは月や星の動き

人間の表面的な行動をつかさどるのは、目に見える太陽だとすると、相場の値動きを生み出す人間の深層心理からの判断や行動と関係があるのは、月や星の動きです。

ということは、月や星座の動きに合わせた移動平均線を引けば、だいたい間違いがないことになる、とは唐突すぎるでしょうか。

なにごとも、個体では別々の動きに見えますが、結局は平均に収束していくことが分かっています。人間は、天空の動きに支配されているのですから、マーケットの動きも天体の動きに収斂をされる、ならば、天体の動きと同じ平均線に合わせておけばよい、という考え方です。いかがでしょうか。

重要な移動平均線は10と30

マーケットの動きは、大自然の流れに逆らうことはできないものです。そしてテクニカル分析とは平均値を活用すること。となれば、平均値には自然の流れに沿ったものを選べばよいのです。

私が日々使う「10」と「30」は、天体の動きを研究して単純化したものです。この動きから大きく予想を外れることはないと思っています。

よく株式相場では25日移動平均が使われますが、個人的には意味がわかりません。この動きは何を基準にとっているのか、天体の動きに沿っているのかは分かりません。

テクニカル分析を究めようとすれば、移動平均の設定以外に道はありません。個人的にもいろいろ試しましたが、そのほかのことは、凝れば凝るほど精度は下がります。RSIやボリンジャーバンド以上の精度があるものはないと、個人的には結論が出ています。

それでもまだ、精度を上げる研究を続けたい方には、乖離30パーセント以上の頻度や値段、そして50パーセント以上の乖離がどういう状態で起こるのかを考えると、ノーベル賞への近道になるかもしれませんね。

テールリスクまでも対応可能なファンダメンタルズ

参考までに、50パーセント以上の乖離をテールリスクといい、このことを指す事象は、100年に一度の事象などと言われているリーマンショックです。テールリスクはテクニカル分析では対応できない典型でもあります。

しかしこのようなときにも、安値を探し出すことは、私には難しくありませんでした。ファンダメンタルズ分析も行っているからです。

微積や方程式など知らなくても、とても簡単な計算で出せるのです。今のニューヨークダウの高値や節目の値段も、リーマンショックのときの値動きから求めることができます。

テクニカルの限界を補うのがファンダメンタルズ

私は基本的に、テクニカル分析は限界に達していて、この先この限界が何らかの研究によって破られるまでは、現在以上の進歩はないと考えています。

例えば、なぜランダムウォークが起こるのか、そして乖離30パーセント以上とはどのような条件下で起こるのか、などを研究する人がいれば、という話です。

ご自分でテクニカルに詳しいと思っている方、私がここまで書いたことはご存知だったでしょうか。私以上にテクニカルの知識がある人がいればお目にかかりたいものです。びっくりするようなアイディアをお待ちしています。

なお私は、今回解説したことも含め、テクニカルでできることはやりつくしたのではないかと考えているため、ファンダメンタルズ分析がより重要であることを紹介しています。ぜひお付き合いいただければ幸いです。