何事においても、ものごとを判断するための基準の存在は大切です。

例えば「水」は高いところから低いところに流れますが、これには、水の質量の高いことと重力があるという「前提条件」があります。この前提条件を満たさなければ、水は高いところから低いところには流れません。

このように、世の中にはさまざまな法則があります。法則に当てはまる事象は、答えも100パーセント法則どおりの結果になる、と思いこんでいる人は多いでしょう。しかし条件次第であることも忘れてはいけません。

上記の水の例の場合は、前提条件が揃えば法則どおりに水が流れますが、前提条件が揃っていない場合、「重力がない場合には、水は空中に浮遊する」この認識をすることも大切です。

100パーセント法則どおりの結果が出るためには、前提条件も100%満たしていることが必要です。このように丁寧に説明すれば、「結果が法則どおりにはならなかった」理由も理解できると思います。

テクニカル指標は前提条件が明確でないものが多い

ところが、相場におけるテクニカル指標は、「〇という数字が出たら、売り」「△という形になったら買い」などと示されても、前提条件そのものが明確ではなく論旨が薄弱で、充分な説明がない場合がほとんどです。

前提条件が明確でなければ法則どおりの結果にならないのは当然であるにもかかわらず、テクニカルを使うトレーダーは、常に法則が100パーセント適用された場合の結果のみを期待しがちです。

法則に従ったつもりでも結果が出ない理由

相場で必ず勝てるテクニカル指標、いわゆる「魔法の杖」や「聖杯」を見つけた場合、もしくは似た経験が一度でもある場合、ほとんどの人は、また別の魔法の杖を見つけようとします。

まともな思考で少し考えれば、このような不可能であると気付くはずなのですが、なぜか人類はAIの開発に邁進し、トレーダーは魔法の杖を探し続けます。

法則が法則どおりの結果にならない理由は、前提条件が揃っていないからです。そして法則に当てはまらなくなってくる理由は、人間が常に変化している動物であるためです。

人には、特に心理面において「昨日と今日では全く違う状態である」という認識がないのです。実際にこのような説明をしても、昨日の自分と今日の自分が違うことを認めようとしない人がほとんどでしょう。

昨日の自分と今日の自分が違うということは、環境変化への適応能力がないと認めることにもなります。また人間という動物にとって、環境の変化や自分が変化することは、生命の危機を感じることにもつながるため、本能的に認め難くなっているのです。

前提条件が揃わないまま行われるシステム開発

変化の存在を認識しないシステム開発者は、未来永劫、地球がこのままの状態で存在することを信じてトレードシステムを構築します。

昨日のデータと今日のデータが細部まで寸分たがわないことを信じながらシステムを構築するのです。実際、微細な変化を数字で表現することは技術的に不可能です。

刻々と変わっている現実を無視し、未来が変わらないことを前提に作られたトレードシステムはいつか破綻します。このことに気づくことができないばかりか、全幅の信頼を寄せている人々が多いことには、心が痛みます。

現実には、環境も自分も刻々と変化しています。例えば天候は、毎日微妙に変化を遂げているから季節が進行をするのであって、変わらないのであれば四季も存在するわけがないのです。

また、人間の体は季節の進行に合わせることができるから生き延びることができるのです。人間も日々変化しているのです。

一方、AIや自動売買の判断認定は変化も進化もしていません。システムの認知能力を向上させなければだんだんと誤差が生じてきて、判断の誤りが顕著になっていくのは当然でしょう。

変化することが考慮されておらず、ハンコを押すようにいつまでも同じ判断を繰り返すシステムは、ダメな機械、ダメなシステムなのです。

現在の世の中にあるほとんどのAIや自動売買は、同じ判断を繰り返す方式を採用しているから、最初は調子がよくてもあるときからパフォーマンスが落ちてくるのです。

テクニカルの要諦、移動平均線がすごい理由

「テクニカルの要諦は、移動平均線である」と他の記事でも言っていますが、この法則は、イエスキリストの時代から続いている不朽のものです。平均線からのかい離と集合は、あらゆる変化に対応し未来を予測する判断ができるから、素晴らしいのです。

移動平均線という線の性質について考えてみてください。移動平均線の日足の基準値は毎日変わります。5分足の基準値は、5分毎に変化します。

ちょうど人間の体や意識が毎日変化をするように、移動平均線の基準も変化するのです。だから判断基準として移動平均線は、非常に優秀であると言えるのです。

しかし、これを使ってシステムを作ったとしても、前提条件の微妙な変化を考慮しない機械は、いつか判断を間違えるでしょう。

人間はここでも間違いを犯しており、「判断の基準とは、変わらないものである」と勝手に、もっと大胆に言えば自分勝手な決めつけをしているのです。

人間は、生命維持の基本的な本能である「変わらないほうがいい」をそののまま、さまざまな判断基準にも押し付けているのです。

移動平均線は、基準が毎日変化をしていることを意識しなくても、その変化が読み取れます。つまり人間の勘違いを帳消しにしてくれる、不朽の未来予想システムであるから、今でも存在感高く残っているのです。

移動平均線の収束とかい離の法則は一定である

テクニカル分析の基本指標とされる移動平均線の法則は、移動平均線にローソクが近づいたときか到達したときが、売買のタイミングです。これを「移動平均線への収束」といいます。

また反対に、移動平均線からかい離したときにも明確な法則があります。かい離はある地点でいっぱいになりますが、必ず一定です。

2008年に発生したリーマンショックの時でさえ、その値は一定でした。しかしその時のあげいっぱいのパーセンテージと、現在のあげいっぱいのパーセンテージは同じなのかといえば、違います。

このように移動平均線の集合とかい離によってある程度の未来は分かるのですが、上限、下限は、常に変化をしています。

私はリーマンショックの下げ相場において明確に、しかもピンポイントで「下げ幅いっぱいの地点」「戻りの範囲」そして、「そこからさらに突っ込む値段」も予測できていたのですが、これは移動平均線の収束とかい離の法則をよく知っていたからです。

この測定方法については、機会があればまたお話ししたいと思います。その話を読めば、トレードシステムの開発をする方も、そのシステムで70~80パーセントの勝率を上げるために、何をどうシステムを組めばよいか、理解できることになると思います。

もちろん、この文章を読んだだけではシステムを組めるわけもなく、もう3つくらいのアイディアが必要です。そこまで行きつくには10年間必死で考えて、やっと思いつくぐらいでしょう。

そこまで根気が続く方も珍しいのでここで少しヒントを書いてしまいます。

要点として、判断基準としての平均値とは、人間の劣っている認知機能をカバーする相当な優れものになるということです。そしてかい離は常に均一ですから、これをきれいに数字でまとめ上げると、簡単にある法則を導き出すことができます。

割安か割高かを決める相対的価値基準「比較」

ここまで、相場におけるテクニカル分析を中心に判断基準の話をしてきましたが、実際の生活でも同じです。みなさんがスーパーに行って買い物をするとき、棚に並べてある同じ質量と品質の商品の一方が高く、一方が安い場合は誰でも、安い商品を手に取ると思います。

この場合の価値判断基準は値段です。株や為替の「割安、割高」の判断と同じです。

何かの価値判断をする場合、人間は、比較をして優劣を決めます。「比較」はかなり楽な方法です。人間は楽な方に流されるもので、現代社会も人と競争して自分の優劣を決めるという結果になっていますよね。

「別の記事」でも話題にしましたが「比較」という方法は、別名「相対的」な決め方であり、そこに絶対的な価値基準はありません。比較対象そのものが間違っていた場合は結果も間違うことになるという欠点があります。

なお移動平均線の「平均」は絶対的な価値基準であり、別のモノと比較して優劣を決めるという判断方法とは異なります。

間違わずに価値を判断できる方法は、絶対的評価

間違わない価値基準と判断とは、スーパーに並んでいる商品の例の場合、原価をひとつ一つ調べて積み重ねた結果、その価値判断をするという方法です。これが最も間違うリスクがない方法ということになります。

そして、この方法で証券分析をした巨匠が、「ウォーレン・バッフェット」です。

一方で為替の世界には、このレベルの巨匠がいまだに存在しません。私が、その巨匠の仲間入りをすることをもくろんでいるのでが、いかがでしょうか?

これまで記事には、そのようなことを中心に書いています。私の説明が分かれば、なぜこんなことを説明しているのかも分かると思います。

テクニカル分析が当たる確率の精度は頭打ち

テクニカル分析は非常にわかりやすいです。使い方さえ覚えれば、たとえ結果は間違えたとしても、自信をもって判断できるようになります。極端なことを言えば小学生でも、少なくとも売り、買いの判断はできるようになるでしょう。

しかしこの分析方法は、現代の科学、数学、物理で新たな発見がない限り、その精度、確率論の上昇があり得ないところまで分かっています。もはや高頻度取引HFTのような方法でしか、成長できる余地は残されていない分野なのです。

具体的に言うと、かい離30パーセント以上の値段は具体的にどのような条件で発生し、頻度はどうなるかを数学的に証明しなければなりません。一般の頭脳である私には想像ができないことです。

もちろん感覚的には、「こういう条件下ならこういう頻度で現れる」ということは分かっていますが、そこからデータ分析して数学的に証明をすることは私にはできません。

私でさえ気づいているくらいですから、世界の物理、数学の天才でこれを証明できる人は、必ずいると思います。しかし日本にはそういう方がいらっしゃらない、とも思います。

テクニカル分析はこのように閉塞感にまみれている状況ですが、ファンダメンタルズ分析にはまだまだ研究の余地があると思うのです。

なお、内部要因や酒田理論、ダウ理論、フィナボッチなどは、テクニカルともファンダメンタルズとも言えず、端的にいえばマーケットの技術的な要因の理論です。ここではそういった、上記のような分析は行いません。

ファンダメンタルズ分析で絶対的評価をする

ファンダメンタルズ分析で目指すところは、絶対的評価方法によって株価の適正価格を導き出し、実際の株価の割安、割高の判断をすることです。これができれば自分の判断に自信を持つこともできます。ひいては「バッフェット流の投資」にも近づきます。

よく巷間で言われるような、「安くなる時期まで待って買い、高いものは買わない」は当たり前で、これはバッフェット流投資「バリュー投資」ではありません。

バフェット氏の投資の神髄とは「株価の適正値」を探し出すことです。ロジカルに値段を推測し、その値段が実際の値段より安い場合は買い、高い場合は見送るということなのです。

彼のこのやり方は、それまでは勘や経験で一かバチかで勝負するのが一般的だった相場の世界を激変をさせました。

そしてこの方法は為替、FXの世界にも必ず有効だと思います。これをFXの世界に実際に適用した例は、私が今まで読み聞きした中ではいません。だからその方法を解説しようというのが私の試みです。

例えば、2017年11月に起こった株価と為替の急落を予知できたきっかけは、各国政府から出された経済指標の分析結果でした。もともともうそろそろ近いと思っていたところに確信を持てたのは、ファンダメンタルズ分析を適切に行っていたことからです。

また、為替相場のドル円の基準値は、現在も80~90円から変わりありません。トランプ大統領はこの基準値を理解しているから文句を言うのです。

中国人民元にしても同じことです。日本のいわゆる「専門家」たちは、ドル円は既に割安すぎるにもかかわらず問題視するのですけれどね。

このようなさまざまな分析ができますが、ファンダメンタルズからの結果に基づいた判断には、ほぼ確信に近いものがあると言えます。テクニカル分析の結果には常に疑問がありますが、そこが大きく違うところです。