「そもそもファンダメンタルズって何?」

ファンダメンタルズの勉強に向かうとき、最初に誰もが思う疑問です。

FXと株式ではまた意味合いが異なるようですが、FXの場合で簡単に説明するとファンダメンタルズとは「政府やその関連機関から発表される経済指標」のことだと思っておけば大丈夫です。

と書いても、なんだか小難しく、初心者には理解できないことだろうと敷居が高いイメージがありますよね。

今回の記事ではなぜファンダメンタルズ分析を学ぶ必要があるのかを考え、ファンダメンタルズの大分類についても解説を行っていきます。

投資家に人気のテクニカル分析。実は欠点も

FX投資家には一般的に、ファンダメンタルズ分析よりもテクニカル分析のほうが人気がある傾向があります。

テクニカル分析は、グラフ、チャートに投影をさせる指標で、その形や数字が何を意味するのかを読み取っていくものです。

ただでさえ難しいマーケットに対して、敷居が高くて複雑そうなファンダメンタルズ分析と、初心者にもパッと見て分かったような気になれるテクニカル分析を比べると、理解度の点からも後者に軍配が上がってしまうのでしょう。

しかし、数字やグラフ、チャートによって表現する技術であるテクニカル分析は、指標そのものから景気がいいのか悪いのかまでは、分かりません。

また、テクニカル指標で表される数字はパーセンテージによる相対的な結果がほとんどで、絶対的な数字を判断の材料にするものではありません。

例えば「ストキャスティクス」の数字はすべてパーセンテージですが、以下のように考えてみると、とてもあいまいな指標であることに気づくと思います。

「1と10の倍率は?」の答えは「10倍」です。「100と1000の倍率は?」の答えも同じ「10倍」です。1から10への変化率と100から1000への変化率は同じ数字で表されますが、実際のマーケットに当てはめるとこの数字の変化があったときの動きは、全く異なるものになります。

さらに具体例を示すと、1ドル100円から20円に落ちた時のストキャティクス20パーセントと、株価が1000円から100円に落ちたときの20パーセントではいかがでしょうか。全く意味合いが異なる現実になりますよね。

わかりやすく「住宅」で考えてみましょう

それではここで「ファンダメンタルズ」をからめた説明に変えてみましょう。

住宅が「1軒から10軒」に増えたときと「100軒から1000軒」に増えたときを比較してみます。

この変化のよる経済への寄与度は同じでしょうか?倍率は同じでも、寄与度は全く異なるということがお分かりいただけると思います。

また例えば1軒から10軒に増えたときの住人を数える場合は、手作業で対応できる作業量です。しかし100軒から1000軒となると、手作業では難しく別の対応方法を考えなければなりませんよね。

このように同じパーセンテージの数字が表れたときにも、内容は毎回全く異なることを理解して、実際の対応方法を変えていかなければならないはずなのです。

しかしテクニカル指標が示すのは「数字だけ」であり、その数字となった実情や背景まで把握することはできません。どのような対応をするのが適切であるのかの見極めが、難しいことになるのです。

テクニカル分析のみのトレードには限界が

テクニカル分析の現状のやり方では、前回の20パーセントと今回の20パーセントは「同じ状況」と判断することが鉄則で、同じ対応をします。前回と今回では全く時代が異なり、状況も全く異なる現実があるにもかかわらず、トレードでの対応は全く同じにします。

テクニカル分析で「同じような形」になることはいくらでもありますが、「全く同じ相場」は存在しません。異なる相場だから異なる対応をしていかなければならないのに、テクニカル分析でのトレードではそれをしません。

このため、テクニカル分析だけでトレードする投資家は、時代についていけず生き残れない人が大多数なのです。

相対的なパーセンテージに頼ることになるテクニカル分析も、数字は数字と割り切った判断をして有効活用しつつ、それだけでなく絶対数用いた分析も同時に行い、その数字となった背景まで見抜いて、正確なマーケットの現状を把握し対応していきたいものです。

市販されているシステムは相対値の判断のみ

市販されているチャートソフトや自動売買システムのほとんどは、相対値で売買を執行するしくみです。これだけでも理論上は70~80パーセントの的中率になるはずと言われますが、そこまでにはならないソフトがほとんどでしょう。

的中率の高いソフトも稀にあり、そのコンセプトを聞いたことがありますが、なるほどと思う仕組みでした。しかしここまで考えられる開発者は本当に稀で、巷に出ているソフトはたいていごく普通の人が開発したものです。

日本ではそもそもこのようなソフトを販売することが法律で禁じられていますし、優秀なソフトができたら他人に教えず独り占めしたくなるのが普通の日本人です。

「儲かる」として市販されているシステムやチャートの90パーセント以上は詐欺かもしれないことは、認識しておいたほうがよいでしょう。

中には稀に、お金に困っている理由で外国の数学の天才がたいへん優れたソフトを販売しているケースもあります。しかしこのような方は宣伝が上手ではなく、思うほど世には広まらない傾向もあるようです。

「まともな思考」ができることが重要

ファンダメンタルズ分析では、経済指標の数字を受けて、すべてを自らでロジカルに判断していくことになります。経済学になじむこと、そして「まともな思考」を持って常に適正な判断ができる人物になる必要があります。

それによってマーケットにおいても正しい対処ができるようになるのです。

「ジョージ・ソロス氏」や「ウォーレン・バフェット氏」など、世界的大富豪であり著名な投資家たちはみな慈善活動に熱心です。このことは、彼らの考え方が非常に「まとも」である証拠とも言えます。

現在の世の中は、お金がすべてという「拝金主義」に圧巻されている傾向があり、「まともな思考」ができる人が少なくなっていると感じます。

「いい仕事をしたかどうか」は重要視されず正当な評価もされず、手段は選ばずとも自分のことだけ考えて「ただ儲けられればそれでよい」風潮。

このような風潮が、正規の検査員の点検を受けていない車を販売するとか、人を不幸にする可能性が高い原子力発電を計画するといった行為も容認してしまっています。この拝金主義を改めない限りは、日産や東芝のような事件はまだしばらく続けて起きることになるでしょう。

「まともな思考」は大きな間違いを犯さない

トレードにも同じことが言えます。自分の利益のことだけ考えるのではなく、この判断で世界の人が幸せになれるのか?と考えて相場観を組み立てられるのが理想です。それができないにしても最低限、時代に沿った相場観なのかを確認する必要があるでしょう。

察しの良い方は、ファンダメンタルズとは自分の人生設計にもよい影響を与えるものであること、お気づきでしょうか。バッフェット氏やソロス氏もファンダメンタルズには詳しく「まともな思考」をしていることから、マーケットにおいても常に、決して大きな間違いを起こさない判断をしています。

私の周囲でも、ファンダメンタルズに精通している投資家は一様にお金持ちであり、誰にも好かれる性格で、何より不正を許しません。

「東芝、日産などの不正を犯した企業には投資しない」そのような不正の温床が少しでもある企業は投資対象から外す、このことは皆で一致している意見です。

ファンダメンタルズ投資家は、自分の生き方についての考え方改め「まともな思考ができる企業」を選ぶことで、自らも傷つかない投資ができるようになるのです。

彼らは、過去に不正を犯した企業にも投資することはありますが、それは不正をする土壌がなくなったと判断したときのみです。

なお個人的な見解を述べさせていただくと、今回の一連の騒動のあと、改善がみられるのは「スバル」のみです。もう少し様子をみたいのが「電通」です。

それ以外は信用に値するような企業はない、と申し上げておきましょう。

ファンダメンタルズの大分類

冒頭で、ファンダメンタルズとは「経済指標のことである」という話をしました。

もう少し詳しく書くと、各国の政府や政府関連企業、外郭団体などが発表する経済統計や経済指標のことです。

しかし、これらは名称が小難しいものばかりで、初心者には近寄りがたい印象になると思います。一つ一つの名称の解説は後回し(第二章で解説しております。)にしますが、ここからはその「分類方法」のお話をしていきます。

経済の主体による分類方法

経済学では経済の主体を大きく「3つ」に分けて考えます。

  • 1つ目は消費者経済学では一般的には「家計」といいます。
  • 2つ目はその家計にお給料をもたらす「企業」です。
  • 3つ目は「政府」です。

この3つの主体を細かく分析することによって経済を理解しようというのが経済学です。経済学とは「お金を稼ぐことについての学問」です。

なお先に出てきた「拝金主義」ですが、昨今世界では経済学が幅を利かせているため拝金主義も助長されることになっています。

「お金」の価値を勘違いしてはならない

拝金主義の人たちの典型的な話題は「どうやって、効率的にお金を儲けるか」なのですが、残念ながら彼らは一生かかってもお金持ちになどなれないでしょう。

「お金」とはそもそも物々交換の手段の「道具のひとつ」にすぎず、お金がない時代はモノとモノを交換するのが主体となって経済が成り立っていました。壺を作る職人は食べ物と交換することができたのです。

しかし、魚は時間が経てば腐敗し無価値になってしまいます。そこであるときから、価値判断の目安として「お金」が使われるようになりました。

「お金」はこの道具のひとつにすぎないモノであるにもかかわらず、価値の高さを勘違いしてしまい、大切なことや大切な人を二の次にし、命の次に大事であると思い込んでいる人がこんなにも多いことは、たいへん残念であると思います。

お金がないと生活ができないと思うのは当然のことかもしれませんが、人間というものは周囲にサポートしてくれる人さえいれば、たとえ体が不自由だとしても、年齢が何歳であったとしても、生きていくことはできるのです。

ですから、本来なにより大切なものは、私たちが住んでいる地球やあなたの周囲にある環境、そしてあなたの生活をサポートしてくれる人々なのです。お金の順位はもっとずっと後です。

自分よりも他人を大事にすることによって、より豊かな生活を営むことができる、というのが本来あるべき考え方であると、個人的には思います。

人間には、生命を維持することに危機感を覚えると体に防御の反応が現れます。

このときは「自分が一番大切」になるわけなのですが、これは野生動物の本能と変わりません。人間は高度な知識や感情を持つ動物なのですから、「自分が一番大切」という本能ばかりで生きようとせず、他人を思いやり豊かな生活を送るべきではないでしょうか。

本当の「お金持ち」は正しい使い方を知っている

「お金」は単なる道具だとすると、「お金持ち」とはいらない道具をたくさん持っている人ということになります。ある企業を成功に導き、自分が使いきれないほどの財産を持ったとしても、いらないものをそんなに持っていてどうするの、と評価する人もいます。

人や社会に貢献しながら自身の商売を地道に営み、そして自然にお金がたまる人こそが本来の「お金持ち」でしょう。このような人々と、偶然のお金持ちを同じに考えるべきではないと思います。

偶然のお金持ちのことを「成金」とも言いますね。彼らは使えない道具(お金)をたくさん持っており正しい使い道も知らないまま、貯め込むのが好きです。

世の中に「使わないものを捨てよう」という断捨離が流行したとしても、貯め込んだままです。

自分では使わない道具なのに、自分のおかげで得た自分のものだから持っていたい。寄付などの社会貢献は思いつきません。寄付するとしても税金対策としてほんの少額のみです。

本当のお金持ちは、道具の正しい使い方を知っている人です。自分が使わないお金は、自分で持っておこうとはせずに慈善活動や寄付として惜しげなく社会に提供します。

例えば世界の大金持ちたちは毎年当然のように巨額の寄付を行っていますが、日本国内ではほぼそのような話は聞きません。

私個人は経済学徒の一人とは思っていますが、経済学にかかわりすぎて拝金主義にならないように気を付けています。少なくともお金が命の次に大事なものとは思いませんし、成金にもならないようにと、使いきれないお金は積極的に赤十字やユネスコ、国境なき医師団などに寄付をしています。

経済学を勉強しすぎると、生産効率を上げてもっと儲かることだけを考える偏った人間になる恐れがあると私は考えています。みなさんもそうならないように注意しましょう。

成金だけではない。儲けたお金を貯めこむ大企業

さて、何度も申しあげているとおり経済学では、「家計」「企業」「政府」の三主体で分析をするのが一般的です。

日本全体が稼ぎ出すお金のことを「国内総生産(GDP)」といいます。

そのおおまかな内訳は「家計60パーセント、企業30パーセント、政府10パーセント」です。

現政権は、上記内訳30パーセントの企業に優遇政策を与え、その発展を期待しているのですが、企業は儲けたお金をため込むだけで消費に回そうとはしません。

いくら優遇政策を出しても、特定の箇所にため込まれて「お金が回らないから日本経済はよくならない」というのが現状なのです。

ため込むのが上場企業だとしたら、いっそのこと上場企業はなくなってくれたほうが日本経済のためになるのかもしれない、とさえ思ってしまうほどです。

家計に目を向けなければ日本経済は復活しない

日本経済が復活するためには、上記のGDPの60パーセントを占める家計、いわゆる個人消費を焦点にしてここへ恩恵を与えていかなければなりません。

それを分かっているはずの内閣の御用学者や側近は権力にひれ伏して意見できない。流行語となった「忖度」という言葉が使われた背景も分かる気がします。

どなたにも多少経験があるでしょう。目上の人に気に入られたい一心で、明らかに間違っていると認識していても同意を求められるとつい賛同してしまうこと。

しかし言いたいことを正直に言えない、間違っていることを間違っていると指摘できない環境は、組織の不正を生み出します。

なお、はっきりと間違いの指摘をできる人は貴重ですが、日本の組織においてそのような人々は「空気を読めない人」と評されてしまい、組織に長くは居ることはできません。

企業に雇ってもらいお給料をもらうためには何も言ってはいけないとされる従業員は、上記60パーセントを占める「家計」部門を担う消費者です。

しかしそれよりも企業の力が強く、政府からは税金を減免してもらい、従業員への還元もしない。これだから日本経済は弱いままなのです。

景気回復の本来の対策は「家計である消費者が使えるお金を増やしていくこと」です。

そのはずなのに現代社会では、他人や弱い者の利益をどうやって搾取して、いかに自分だけがお金持ちになれるか、というところに焦点が当たっています。

お金を増やすことは悪いことではありません。

お金、富とは無限にあるものですからそれを得る方法はいくらでもあります。「まともな思考」ができない人々が間違った方向に向かい、景気回復から遠ざかるような経済社会を形成しつつあることは大きな問題です。

だいぶ話がそれましたが、結局経済指標については「家計」「企業」「政府」の3つの部門のうち、どこに属するものであるかをよく考えて分析することが大切です。

なお、このほかに「貿易」という項目もありますが、この貿易の変動率が大きいことは日本の独特な事情によるものです。これには為替レートが大きく関係しており、日本でFXが流行する理由ともなっています。貿易については別の記事で詳しく解説して参りましょう。