一生に一度あるかないかの大きな買い物となるのが「家」です。

家を買うことを思いついたとき、日本では新築住宅から選ぶのが普通ですが、新築に固執することは世界標準から考えると特殊な状況です。

「中古住宅販売件数の話題」でも述べましたが、欧米の人々にとって「家を買う」とは、住む地域のコミュニティを丸ごと買うことです。

家の周りの環境が整い、安全快適に暮らしていけるかどうかの方が重要で、家自体が新築か中古かは、大きな問題にはされません。

そもそも、フランスのパリやアメリカのニューヨークなどは、とにかく建物が密集しています。新たに住宅を建設する余地がありませんので、リノベーションは多くても、完全に一から新築という物件はめったにありません。

日本の住宅市場の場合、需要は新築に一極集中しているせいで価格も「新築>中古」になっています。しかし欧米の住宅価格は、新築だから高いということはないためここは特に意識されず、地域に住んでいる人やコミュニティの質によって左右されます。

新設住宅着工戸数はなぜ重要なのか

新築は重要ではないにもかかわらず、なぜ新築の住宅販売着工件数が注目されるのでしょうか。

その理由は「新車販売台数」が注目される理由と似ています。

新築住宅は、更地や荒れた大地の上に建てられます。コンクリートや木材、建材などを幅広く大量に使います。

そして家を購入した人は、そこへ住むにあたり家具や家電などの「耐久消費財」をたくさん買います。

新築住宅1軒が建って、ひとつの家族がそこで生活を始めることは、使われる材料や製品の製造や販売に携わっている人々すべてに影響を与えるのです。国の隅々に幅広い需要を生み出し、高い経済効果があるから重要なのです。

新築住宅を建設するときの需要の内訳とは

新築住宅を建設する場合の需要について、もっと細かく考えてみましょう。なぜそれほどまでに重要なのかも理解できるようになると思います。

まず、建設予定地を更地にするためには、重機が必要です。そして重機を動かすのは人です。ここを機械化することはできません。建築現場ひとつひとつ、更地にする工程は異なるからです。

また必要な資材を作る工場では、現場に合わせて資材をカットしたり加工したりする部分はオートメーション化できますが、それを現場で組み立てるのには人が必要です。

人件費は、さまざまな経費の中でも最も高くなるものですが、人件費の削減はできません。ここに「雇用が発生する」ことにもなりますね。

もちろん材料にかかる部分も需要を生み出す要因になります。さらに新しい家具や家電製品を買い揃えるところにも、新規の需要が発生することになります。

これらのことからどの国でも、新設住宅着工戸数が増えるということは、広範囲に新しい需要が発生し「これから景気が上昇する」と分析することができるのです。

どれほどの経済効果があるのか?日本の場合

日本のGDPに占める割合で表すと住宅産業の割合は1パーセントで、これはあなたが100円お金を使ったとき、うち1円は住宅産業に必ず支払っていることと同じです。

自動車産業の場合は2.7パーセントで、2.7円お金を払っていることになります。

数字だけ聞くと小さく感じるかもしれませんが、ある特定の産業だけでGDPにこれほどのパーセンテージを占めることは、大きい意味があります。

住宅や自動車は産業としてのすそ野がたいへん広く、景気に与える影響が非常に大きいのです。

新設住宅着工戸数は先行指標

新築住宅販売着工件数増えるということは、これから幅広い需要をたくさん生み出すことになり、景気が上向いていくことを意味します。

ファンダメンタルズ分析で景気動向を判断する指標としては「先行指数」に分類されます。

中古住宅販売件数という指標もある

なお、新設住宅着工戸数だけが重要であるとは、どうぞ勘違いをしないようにしてください。

冒頭で述べたように住宅産業においての供給は、欧米に限らず日本においても「中古住宅」のほうが圧倒的に多く、市場のメインも新築より中古です。なお、自動車産業にもこれと同じことが言えます。

中古住宅販売件数」との指標もあって、こちらも重要ですので、合わせてぜひ読んでみてください。

新築住宅に関連するさまざまな指標がある

アメリカでは、新築住宅に関する指標が細かくさまざまあります。

例えば「新築住宅着工許可件数」は規制当局がその着工を「許可した」直後の件数です。着工よりも前に需要の見込みが分かる指標です。

また「成約保留件数」という指標もあります。これは「新築物件が完成はしたけれど引き渡す人が決まっていない」意味になります。

また、「住宅ローン申請数」では、これから家を買おうとする人がどれぐらいいるか分かることになります。

例えば建設業者は、建物の着工許可を受ける前に、資金がどれぐらい確保できるかを確認したいものだと思います。「新設住宅着工戸数」よりも早く、需要の見込みが分かることになります。

ただし、この「住宅ローン申請者数」は、純粋に新築住宅購入者数と結びつくわけではないため注意が必要です。

現実には「今の銀行よりもあちらの銀行のほうが利子は安いから乗り換える」といった目的のケースが申請者数の過半の比率を占めます。

また、住宅購入のためのローンだったとしても、新築ではなくリノベーションされた物件や中古物件の購入に充てられる割合が多い現実はもうお分かりでしょう。

景気動向の分析の先行指標だから注目される

住宅の指標がいろいろある中でも、新築住宅に関する指標が注目される理由は「先行指数」であるからです。先行指数の中でさらに先行するものも多数あるため、注目されるのです。

ファンダメンタルズ分析を行うにあたり、景気の上昇、下降の兆候を早い段階で認識できることが、投資の結果を左右することになります。先行指標を活用していきましょう。