何かと何かの値の比較した差の広がりのことを「スプレッド」と言い、FXでスプレッドといえば「売値と買値の差のこと」です。

これ以外にもさまざまな種類のスプレッドがあるのですが、「TIPSスプレッド」は、アメリカの物価と連動した国債TIPS(Treasury Inflation-Protected Securities)と市場金利の差を表したものです。

FRBから発表されて為替相場が大きく変動する要因となる、アメリカの政策金利とも関係があると聞けば、ぜひ知っておきたいと思いますよね。

TIPS国債とは

TIPS国債は、インフレの現象が起こったときに、債券の額面と金利が調整される国債です。

インフレが起こると通常は、TIPS国債の金利に「市場金利+消費者物価指数」の金利が付与されます。普通の国債は、額面の金利が提示をされます。

つまり、インフレの場面においては、物価上昇分の金利を受け取ることができ、一方、国債の額面は下がることになります。

これが通常の形態ですが、その時々によって金利や額面は変わりますので、いつも必ず上記のような状態になるわけではありません。

TIPSスプレッドを見ていると利上げの傾向が分かる

金利市場においては、TIPS国債と通常国債の差を表すTIPSスプレッドが実質の金利ということになり、債券トレーダーはもちろんFRBも常にこの変動を注視しています。

最近は何度も利上げが行われるようになっていますが、TIPSスプレッドも利上げ判断の基準にされています。

利上げされるかかどうかの確率や、利上げの折り込み具合が何%、などと報道されますが、この報道もTIPSスプレッドであるケースがほとんどです。

金利の重要性について理解していますか?

金利については、別の記事でもときどき話題にしていますが、ファンダメンタルズ分析においてなぜ金利が重要なのか、お分かりになりましたでしょうか?

時間の経過は地球上に生きるものすべてに分け与えられているもので、世の中の時間の経過には必ず「金利」というものが付与されます。

経済学でも時間経過は金利であると定義されています。

「時は金なり」も、金利について説明した格言であると言えるでしょう。経済にも、金利が必要不可欠なのです。

なお、金利の専門家である債券トレーダーの方から言わせれば、株式やFXのトレーダーは金利に関しての知識がなさすぎる、皆無といっても過言ではないような状態である、ということです。

例えば、FXをやっている方で政策金利と市場金利の区別のつかない方は90%以上ですし、株式トレーダーの方だと95%以上です。

金利が相場に影響することを考慮しないでトレードが行われているため、株式やFXの相場は不規則な動きをするのだとも言われています。

つまりFXをより深く知るためには、金利の勉強をするべきなのです。特にスワップ金利目的のトレーダーは、スワップ金利がどういう要因で決定されるのかを、しっかりと知っておくべきなのです。

スワップ金利が高い国は信用も低くリスクが高い

金利についてしっかり勉強すれば、なぜオーストラリアやトルコ、南アフリカ、ブラジル、メキシコの金利が高いのかが分かると思います。また各国の経済の内容も知れば、長く保有すべき通貨ではない、注意しなければならない通貨があることも理解できるようになると思います。

ここでスワップ金利について少しだけ解説すると、一般の市場金利よりスワップ金利が高いということは、それだけ不安定でリスクが高いという意味なのです。

金利が高い国では利払いのリスクが高い、最悪のケースでは金利が支払われないこともあり得ます。

確実に利払いが行える国や会社の金利が、高いはずはありません。このことを理解している人は少ないと思います。

例えば、消費者金融業者が高い金利を設定して、返済できるかどうかの信用の薄い人にまで誰にでも融資する状況と同じです。

本来は、信用があれば金利は低くて済むものです。信用がない人には高い金利を支払わなければ資金を提供してくれる投資家がいない、だから高い、ということにもなります。

世界の国の政策金利にも同じことが言えます。スワップ金利を目当てにポジションを保有している方たちは、経済が不安定な国の通貨を保有することは危険である事実に気づいていないからこそ、世界の国々から信用されていない国の通貨を平気で保有していられるのだと思います。

2018年8月9日~13日にかけても、トルコリラが急落しました。スワップ金利目的のポジションが強制ロスカットされてしまい、大損をした方は大勢いると思います。

このようなことがたびたび起きると、もっと金利のことを勉強してほしいと切に感じます。FXをやっている以上、金利の知識は相場で負うリスクを下げるための必須アイテムなのです。