ビッグマック、と聞いて何が思い浮かびますか?やはりハンバーガーでしょうか。

「ビッグマック指数」とはそのとおり、世界的ハンバーガーチェーン店「マクドナルド」の商品「ビッグマック」を基準に為替レートを考えるための指数です。

世界中に点在する「マクドナルド」の店舗。ここの看板商品である「ビッグマック」は、世界のどの地域に行っても同じ品質と量で提供されます。「それなら価格も、世界どの地域でも同じはず」という前提条件で組み立てられたロジックが「ビッグマック指数」です。

FXについて学び始めたとき、FX関連書籍の初めの章にある「為替レートはどのようにして決定されるのか」という小難しい理論を理解しようと努力したことがあったと思いますが、この指数はこの理論を身近な事例を使って説明したものと考えるとよいと思います。

ビッグマック指数は誰が考えたのか?

ビッグマック指数は、イギリスのエコノミスト誌の記者によって1986年に発表されました。

この指数についての最新の詳細な説明を読んでみたい方は「エコノミスト誌のサイト(英)」で確認できます。

ビッグマックの価格から適正な為替レートを出せる

ビッグマック指数の理論を簡単に説明してみましょう。

世界各地のビッグマックの現地価格を調べ、それをアメリカ本土の価格と比較をします。それを2国の通貨に換算して価格差がないようにレートを調整します。すると両国の適正な為替レートが分かることになるのです。

現在の為替レートが、適正レートとどれぐらい乖離しているかの分析にも利用できるようです。

ビッグマック指数理論の背景は経済学の概念

この理論の背景には、経済学の「同一の性質の同一の商品は、同一時点の同一市場において同じ価格になる」という「一物一価の法則」の概念があります。

これだけ世界的に工業化が進んでいるのですから、同じような商品が世界にはたくさんあります。

現在、一般家電やさまざまな商品は、国が変われば価格差も生じていますが、それらも時間をかけて、いつかは同じ価格になるのです。

そして、マクドナルドのセールスポイントであり会社の方針ともなっている「世界のどこに行っても同じ量、同じサービス、同じ価格のビッグマックを買うことができる」、この調整をするのは為替レートということなのです。

ビッグマックの理論を応用した裁定取引

この概念を応用し、マーケットにおいて「必ず将来のある時点で、同じ価格になる」と考えて行われるのが裁定取引、いわゆるアービトラージです。

世界の取引所において同じ日経平均が、例えばシカゴやシンガポールに上場していますが、場所やタイミングが異なれば価格は変わります。この状況に経済学の「同じものはいつか同じ価格になる」との原則を掛け合わせます。

安い市場の日経平均を買い、高いタイミングで日経平均を売り、同じ価格になったときに両方とも決済する。

すると、買った時と売ったときの価格の差額が利益になります。理論的には、100パーセント確実に儲かるわけです。

為替レートでいうと、例えばドル円にユーロドルをかけ合わせるとユーロ円になりますが、いつも正確にその価格になっているわけでなく、必ず差が生じています。

この差が発生する時間は、まれに10分程度続くときもありますが、たいていの場合は1秒以下で起こります。

人間の手では正確に取引ができません。そこで、現在では超高速取引(HFT, High frequency trading)によって自動で処理され、マイクロ秒で変わる価格や決済処理も可能な仕組みが作られています。

ビッグマック指数理論を難しくいうと購買力平価説

初心者の方にはちょっと難しいかもしれませんが、ビッグマック指数理論は、「購買力平価説(PPP, Purchasing Power Parity)」の一種です。PPPは、為替レートが決定される要因を説明する概念の最終版であるとも言えます。

PPPの考え方も、「ビッグマックの価格は世界のどこの地域に行っても同じ価格になるはずだ」という理論と同じです。

ただ、2国間を比較するための対象が消費者物価指数であったりGDPであったりと、さまざまな指標が使われてそこから為替レートの適正値を探ろうというものです。

やってみると分かるのですが、この価格はなぜこんなにも乖離するのかと、理解するのには時間がかかると思います。

特にドル円レートの適正値は、通常であれば1ドル3.7円程度になるはずなのですが、なぜ今100円以上のレートになっているのか?などなど。

それなりの背景があるからこそドル円は100円以上になっているわけなのですが、背景はたいへん奥が深いです。ポンドやオーストラリアドルも同様です。

なお購買力平価説に最も適切に当てはまるのは、ユーロドル相場です。時間のある方は、理解できるかどうかトライしてみるのもよいでしょう。そして、これを簡単にしたものが「ビッグマック指数理論」であることを思い出すとよいと思います。