「毎月第1金曜日は雇用統計の日」と覚えている方は多いと思います。その2営業日前にも「ADP雇用統計」という別の指標が発表されていることをご存知でしょうか?
ADP雇用統計は、米国の大手給与計算アウトソーシング会社であるADP(Automatic Data Processing)社から発表されるアメリカの雇用に関する指標です。
第1金曜日の雇用統計を意識して作られたもので、新規雇用者数に関しては実数に近い数字が発表されています。
月1回相場が大きく盛り上がる経済指標の発表直前に出される同類の指標であることで、注目度はかなり高いものです。
ADP雇用統計は民間会社のみの指標
ADP社は、全米に50万社の顧客を抱えて給与計算を代行していることから、全米の新規雇用や退職などの正確な最新データを持っています。ADP雇用統計はこのデータを月1回まとめて発表する経済指標です。
なお発表される数値は、民間の会社の給与計算から得られるデータのみを指標に表したものです。
政府機関の給与計算データは含まれていないことは、注意点としてぜひ覚えておきましょう。「新規雇用者数」の数値一つとっても、ADP雇用統計では民間の新規雇用者数しかカウントされていません。
なお、第1金曜日の雇用統計はアメリカ労働省により発表されますが、こちらの数値には政府や地方自治体の雇用者データも含まれています。
2006年から公表になった比較的新しい指標
それならば発表される数値は「労働省の雇用統計>ADP雇用統計」となりそうなのですが、実際にはそうなっていません。
これは労働省のサンプルの集め方と、ADP社のカウントの仕方が異なるためです。
このADP雇用統計は、2006年5月から公表されるようになった比較的新しい経済指標になります。
まだ12年程度のデータしかないため、
過去の景気の拡大期と後退期に数値がどうなっていたか?などといった分析を行うためには情報が少ないのです。
つまり、ADP雇用統計のデータをどう分析に活用したら効果的なのかの方法もまだ確立していません。
また、当初は第1金曜日の雇用統計の数値の参考として大いに注目されましたが、近年では値の相関性が低くなっており、ADP雇用統計の結果をどのように解釈をしたらよいのかは、悩みどころともなってきています。
ADP雇用統計の活用方法は?
ADP雇用統計の数字はオンラインで管理されています。
また業種別や規模別になっていて、例えば従業員が1~49人の小さな企業から大手チェーンのアメリカ国内のフランチャイズ店での新規雇用数といった、きめ細かく実態が分かる方式で発表されています。
さらに全米各地の雇用情勢のレポートなどもあります。これらのことは、第1金曜日の雇用統計とは全く違った側面の数字やレポートとして、分析の参考にできるでしょう。
ADP社の知名度が上がったきっかけ
株式投資している方は、元マゼランファンドのマネージャーである「ピーター・リンチ氏」の代表的な著書「ピーター・リンチの株で勝つ」をご存知かと思います。
ADP社は、彼が言う「テンバガー株(ten bagger)」つまり株価が10倍に跳ね上がった株の代表例として挙げられたことで有名になりました。
おそらくADP社は、この「ピーター・リンチ氏」の著書によって知名度が上昇したものと思われます。