みなさんが普段、買い物をすると「小売売上」になります。サービスを受けて代金の支払いをしても「小売売上」です。

例えばマッサージ店でマッサージをしてもらってお金を払ったものも小売売上に含まれます。小売売上に関する指標はたくさんあります。アメリカでは商務省、日本では経産省から発表されています。

本来なら税務署が発表すればいいように思うのですがそうではないため、何れも正確な数字ではありません。それでより正確な数字を求めるためでしょうか、民間会社やシンクタンクがさまざまな規模と頻度の指標を発表しています。

最近アメリカなどでは「ネット通販の売上高」を毎週末発表しているほどです。

クリスマスを盛大にお祝いするアメリカでは、親しい人々へたくさんプレゼントを贈りあう習慣もあって、感謝祭明けの休日からクリスマスの準備に入ります。

クリスマスセールの初日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、この日から国中で大規模なセールが行われます。

通常は週末にネット通販の売上高を発表しますが、今年は翌週の月曜日にも発表を行いました。このような盛り上がりは、売上高の伸びの勢いが止まらない証となっています。

外国の風習を真似するのが大好きな日本でも、イオンやユニクロなどを中心に独自の「ブラックフライデー」を開催しています。

しかし認知度はイマイチで、日本にはなじみません。それ以前に、(あまり関係ありませんが)政府が行う「プレミアムフライデー」も全くなじまず、風前の灯という感じですね。

 

ネット通販に押される小売の実店舗

ネット通販は「eコマース」に分類されますが、2017年アメリカにおけるブラックフライデーから始まる歳末商戦の売上の半分近くは、eコマースでした。もうネット通販が主流になり、実店舗は時代遅れかのような勢いにさえなっています。

このような流れに、日本の小売業界も生き残りにかけて必死です。

ネットに顧客をとられまいと実店舗では歳末に大きなディスカウントセールを行うなどしています。しかしこれはもう、時代の流れと言うしかないでしょう。いずれ実店舗は縮小の傾向に入ると思います。

逆にネット通販は、まだまだ拡大の余地があると思います。日本の小売売上高も、いずれはネット通販が過半を占めることになるのでしょう。

小売売上高を指標として分析するときの考え方

「小売売上高が多ければ多いほど、景気は高揚している」これは誰でも分かりますね。

さて、ファンダメンタルズ分析を行うにあたりこの小売売上高は、「先行」「一致」「遅行」のうち、どの指標に当たるのか考えてみましょう。

小売売上が上昇するためには、消費者が買い物をしなければなりません。買い物するにはお金が必要ですね。簡単に流れを書き出してみましょう。

「雇用される → お給料が支払われる → 家計の可処分所得が増える → 消費が増える → 小売の売上が上昇する」

「雇用」は、経済指標の中では「遅行指数」の位置づけですが、上記の順番から見ても「小売売上は、遅行指標の中でもさらに遅い指標」ということになります。

見方によっては超先行指数になることもある

日本においても、2017年のクリスマス商戦は大きな盛り上がりを見せています。小売店や製造業者では予想以上の売上に、在庫が追い付かない状況も発生しています。

顧客のニーズに応えてもっと多く売るためには、もっと人を雇い、設備投資をして増産する必要があります。

どのぐらい製造すればよいか判断するためには、どのぐらい売れそうか把握する必要がありますよね。すなわち、小売売上高は増産の判断にも利用されることになるわけです。

なお「設備投資」は、経済指標の中では「先行指数」の位置づけです。好景気循環の中では、設備投資をする前に小売売上高を見るわけですから、見方によっては、小売売上高は、超先行指数ともなり得るのです。

売上好調でも増産しないなら好景気ではない

ところが、多少好調な売上のときに、商品の在庫がなくなる見込みでも増産はしない、すなわち「設備投資をしない」という判断がされることもあります。

例えばこれから景気は悪化しそうなときには、増産しても売れ残るかもしれません。またお給料のデータがあまり上昇していないため、売れ行き好調も一過性の現象と判断して、顧客ニーズがあったとしても必要最小限しか製造をしないケースも考えられます。

2019年秋の消費税増を控えた日本が、典型的な例です。店頭に商品がなくなっても「それほど売れるわけがない」と増産しない体制が取られます。

この状況からは、小売売上高などの遅行指数がピークを迎えた時点で、景気が後退局面に入る可能性が高いことが分かるでしょう。

消費税の増税を控えて一般市民は節約に走ります。消費がなければ売上が伸びるはずはありませんし、企業は新規雇用を行わない、雇ったとしても非正規雇用なわけです。

この状態では、せっかく消費が盛り上がりつつあっても好景気には結びつかず、盛り上がりも長続きしないことになります。

景気がしぼんでいくのは明らかなのに、なぜか現在の日本政府もマスコミも、景気はいい、景気はいいとはやし立てています。惑わされずにご自分でファンダメンタルズ分析を極め、真実を把握したいものです。

小売売上高は超先行にも遅行にもなる指標

「小売売上高」は、状況次第で指標の分類が変わる性質があることを、覚えておきましょう。

好景気循環の中で小売売上が好調なときは、小売売上高が「超先行指数」となります。

しかし、景気後退局面で小売売上増が発生したときには「遅行指数」ともなります。このときは景気が盛り返すきっかけとなる転換なのか、もっと悪くなる前の一時的な盛り上がりなのかを、よく見極める必要があるでしょう。