「最先端の工業が世界で一番発展している国は?」この質問に「アメリカ」と答える方は多いと思います。

フィンテックや、IT、ハイテクなど、最先端の技術を世界に発信するのはいつもアメリカです。

例えば、今流行の仮想通貨「ビットコイン Bitcoin」はフィンテックの派生商品です。ビットコインに代表される「ブロックチェーン Blockchain」の技術は近い将来、世界中のサービス形態と決済制度を大きく変えることになるでしょう。

ただし、個人的にはビットコインが生き残るのは難しいと思っています。

そのほか、個人が気軽に参加できてお金を稼げる「ウーバー Uber」のような配車サービス、空き部屋を宿泊施設にできる「エアビーアンドビー Airbnb」などといった、効率化の事業もアメリカから始まって世界に広がりつつあり、注目を集めています。

株価指数ニューヨークダウは「工業」株の平均

「アメリカを代表する株価指数は?」この質問には、日本では「ニューヨークダウと」と答える方が多いと思います。しかし世界標準では、アメリカを代表する株価指数は「S&P500株価指数」であってニューヨークダウではありません。

なおこのニューヨークダウ、単なる略称であって、正式な名称は「ニューヨークダウ工業株30種平均」であることはご存知でしょうか。企業が、この有名な株価指数の銘柄の一つとして加えられるためには、鉱工業製品を製造していなければならないのです。

アメリカでは最近、電話を発明したベルに由来する通信大手のAT&Tがこのダウ工業株30種から外され、代わりにアップルが新たに加えられました。

アップルはみなさんがご存じのように携帯電話や腕時計などの工業製品を扱う会社です。

アメリカというと「最先端の技術を扱う国」というイメージがみなさん強いかもしれませんが、「伝統的には鉱工業も強い」のです。そしてアメリカの代表的な株価指数がニューヨークダウとされていることからも、アメリカの代表的な産業は結局、鉱工業なのです。

鉱工業生産だけが強いわけではないアメリカ

ただし鉱工業生産だけしているわけではなく、先のようなハイテク産業も世界で1位です。

また、農業でも国家単位では穀物の生産が世界一を誇り、またエネルギー産業もシェールガス、シェールオイルによって中東やロシアを抜いて生産量世界一、そして消費も1位です。

とにかく、アメリカは何から何まで自由闊達、世界でナンバー1です。世界第2位の中国の躍進もすごいのですが、寄せ付けないレベルです。

なお参考までにユーロですが、ユーロ圏経済は、域内貿易によって圏内の国々の食料やエネルギー生産などを賄っています。自給自足の内向的な経済圏であるところが大きく違います。

発展を続ける工業と鉱業

イギリスで産業革命が起こって以来、世界では工業の発展が続いています。世界で同じような製品を生産する技術が増えており、生産量も年々増えています。

例えば世界中どこでも同じような車が作られていますよね。全く同じ車を作っているとさえ言えることがほとんどです。

ちなみに、アメリカ人がなぜ燃費の悪い車に乗るのかというと、アメリカに住んだことがある方はお分かりと思いますが、ガソリンの値段が異様に安いからです。

アメリカでは最近自動車の売上も好調なのですが、燃費基準のきついセダンの売上は落ちており、燃費基準の緩いSUVやバンなどのピックアップトラックという車種が売上に大きく貢献しています。

日本のトヨタのRAV4などは爆発的な人気ですし、スバルの4WDのピックアップトラックは高級車としてよく売れています。

鉱業の面では、中国が金の生産量世界一です。最近ではパソコンやスマホなどに金製品を使いますが、金の消費は石油やガソリンのように日常的というわけではありません。それほど減らなければ生産量も限定されるため、やはり中国はアメリカにかなわない状況になっています。

工場で作られるものが工業製品で、生産量を表すものが工業生産高です。鉱業も含まれます。そしてこれらの生産高を指数に表したものが「鉱工業製品生産指数」です。

鉱工業生産指数はGDP変動にかかわる重要指標

鉱工業生産が増えるための担い手は、個人の消費者ではなく皆さんのご想像のどおり企業です。

先進国や後進国、新興国においても、GDPの占有率として「家計(消費者)」の比率は高いことがGDP変動の大きな要因です。

しかしそれだけでなく、鉱工業生産は「企業」の生産と同じことです。GDPでの比率は国によって大きく異なりますが、重要な経済指標であることには変わりはないのです。

鉱工業生産指数は、「一致指数」

鉱工業生産指数はファンダメンタルズ分析においては「一致指数」で、景気の山や谷と同じ動きをすることになります。

また、この鉱工業生産指数の先行指数となるのは、企業の設備投資や設備稼働率、在庫などです。これら鉱工業に関する指標が上向き始めれば、続いて鉱工業生産指数も上向いていくことになります。

先行指標に続く指標は、予想どおりに動かないことも多く、すると「セオリーどおりではないから景気が上向いているわけではない」などという判断をするわけですが、鉱工業生産指数に関しては、「その前の指標が上昇したのに鉱工業生産が上昇しない」ということはありません。

なぜなら企業は、売れないものや売れ行きが悪いと予想されるものは製造をしないからです。

企業の行動の基準は利潤を追い求めることにありますから、無駄なものや儲からないものは作らなくて当然ということになります。