最近、興味深い話を読みました。私も初めて知ったのですが、学問の世界には「人口学」という分野があるのだそうです。日本の人口学の専門家は1桁の人数しかいませんが、アメリカには3桁はいるそうです。

昨今日本は「少子高齢化」と言われています。しかしこの言葉の本来の意味は正しく知られておらず、間違った認識を持っている人が多いようです。

一般的な意味として「赤ちゃんが少なくて、老齢人口が増える」ことには間違いないのですが「だから人口が減る」という部分は正しくないそうです。

2016年の日本の人口は約1億2千万人ですが、これが7000万人近くまで減るようなことには、なりません。

「少子高齢化」の本当の意味とは

「少子高齢化」とされる理由は、長生きする高齢者が増えていることにもあります。

例えば84歳の天皇陛下は、30年前であればもう大往生の年齢ですが、つらいとは言いながらもしっかりと公務をこなしていらっしゃいます。言い換えると、高齢でもたいへん元気でおられます。このような方が今の日本には多いのです。

少子高齢化の意味は、子供が減って若い人の割合も多くないけれど、高齢者が長生きすることによって高齢者の人口の割合が増えるということです。人口全体が減ることを意味しては、いないのです。

なお、少子高齢化は日本に限った話ではありません。

中国においても「一人っ子政策」は事実上撤廃されて、現在は「二人っ子政策」に代わっていますが、これらの政策によって中国は人口増がピークを打っただけでなく、少子高齢化が進行して人口の高齢化が進んでいます。

生産人口とは自らお金を稼ぎ自立して生活できる人

日本では古来より「成人=20歳」とされてきましたが、先の公職選挙法の改正によって参政権は18歳から与えられることになりました。

2018年6月には民法も改正されて、今後の流れは「成人=18歳」となるようです。成人式はどうなるのでしょうね。

さて、選挙権があったり成人式を済ませたりしたということは、一人前の大人の仲間入りをしたことになり、自分でお金を稼いで自立して生活をしていくことを意味します。

これに該当する人が「生産人口」にカウントされます。もっと簡単に言うと、働くことができる人が「生産人口」です。

なお、日本の公務員の退職年齢は65歳と60歳に設定されています。老齢年金の受給年齢も選べるようになっています。

生産人口にカウントされる人の年齢の始まりは、18歳なのか20歳なのか?終わりは、退職年齢なのか年金受給年齢なのか?冒頭でお話ししたように、日本には人口学の専門家がほとんどいない関係もあって、この定義があいまいですが、世界的な基準での定義は「18~60歳」が一般的なようです。

人口が多いだけで経済寄与も高く見える

世界2位の経済大国である中国は、人口が13億人もいます。一人一人が稼いだ金額の総和は、人口1.27億人の日本よりも多くなるのは当然でしょう。むしろ、2010年までは日本のGDP総額の方が高かったことのほうが不思議と言えるかもしれません。

裏を返せば、日本は過去にはそれほど豊かな国であったということであり、誇りに思うことはよいことだと思います。しかし現在の日本は、それほど裕福な国ではありません。

GDP総額で比較するランキングは、人口が多い国ほど有利です。それよりも一人当たりのGDPを算出しよう、という動きが出ています。単純に考えると、GDP総額をその国の人口で割れば算出できますね。

結果は、1位はノルウェーでアメリカは5位です。日本は11位です。GDPでは世界3位の国が、一人当たりになると11位に下がるのは、一人当たりの生産性が悪いということになります。だから安倍首相が、生産性の向上を訴えているわけです。

本当の国力を測るためには「一人当たり」が重要

世界的に、国家単位の優劣の比較の視点が変わってきています。

国家として稼ぎ出すお金(GDP)ではなく、国民一人当たりが稼ぐ金額(GNI)で比較していこう、という流れになってきています。

ただし現状はまだGDPで国力を測っていますので、為替の基準値もGDP総額によって決定されています。しかし近い将来に必ず、GNIに変更しようという動きが出てくると思います。

人口が多いか少ないかで国力を測ることになるGDPの場合、働ける人の割合、生産人口の割合がどれぐらいであるのかも影響してきます。日本、中国、そしてヨーロッパも抱えている少子高齢化問題は、生産性の問題に直結してくるのです。

生産人口が下がってしまう少子高齢化

少子高齢化が進行をすると、働けない人の割合が増えて、生産性が低下してしまうだろうということは、想像できると思います。

中国のように、人口が13億人いてもその半数以上が働くことができない年齢、幼児と高齢者の割合ばかりが多い場合は、大きな問題になります。

実際の中国の生産年齢の定義や生産人口のパーセンテージは調べていませんが、例えば実際にお金を稼ぎだす人は半分の6.5億人しかいない、またこれから生産人口になっていくはずの幼児の割合も「一人っ子政策」の影響で極端に少ない、となれば国力は衰えていくだろうと考えられるのも当然でしょう。

生産人口が増えない自体が続けば、経済成長もストップしてしまう可能性があるのです。

一方、アメリカなど若年層の世代が一番多い国では、今後も生産人口が増え続けます。実際に働ける人が多ければ多いほど、その国は将来裕福になっていくことになります。このような国の経済は、今後も安泰といえるでしょう。

生産人口は全体数よりも年齢割合に注目した指標

これまでは、国の将来性を計る指標として人口の全体数だけが注目され、人口が多ければ有望であるとの未来予測がされてきました。

しかしそれでは十分な分析ができないことが知られるようになり、人口の質を問うためにと、「生産人口」との新たな視点の指標ができたのです。

この見方では、幼児年齢や青少年齢の割合が多い国は、今後生産人口が増えるということで「有望である」と分析できます。

人口と年齢構成は重要な経済指標となる

経済予測にはさまざまな種類の指標が使われますが、実は、人口を背景とした経済予測は、ほぼ100パーセントに近い高い的中率を誇ります。

その代表格が「ブリックス BRICs」という言葉を生みだした、元ゴールドマンサックス会長です。結果、彼の予測通りになっていると思います。

BRICsとは、新興国を表す代名詞で、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を取った造語です。

その後「ミント MINT」との言葉も生まれました。こちらはメキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコの頭文字です。

彼の予測では、これらの新興国の経済成長に着目し、人口をメインに教育や携帯電話の普及率など分析します。例えば携帯電話の普及は、生活の効率化や生産性の向上を意味するのです。

このように人口を背景にした経済予測は、ほぼ間違いないと言えます。アメリカは2050年まで若年層の割合が増えると言われていますので、将来有望な国として投資先はドルになってくるでしょう。