LIBORは「ライボー」と読みます。ロンドン市場の銀行間取引金利の名称です。ユーロ市場で資金調達する際、期間が1年以下の短期やり取りに使われる資金の基準金利がLIBORです。

借金をする際にはその返済の保証として、借金の金額に応じて担保を取るのが一般的です。しかしLIBORは、無担保の取引に適用されています。

昨今日本では、不特定多数の一般消費者を相手にするカードローンの利用者が増えて問題視されつつありますが、カードローンは無担保です。

無担保ということは貸す側からすれば貸したお金が返ってこないリスクがあるため、一般的に、金利は高額に設定されているものです。

LIBORは銀行間取引に限定される理由で無担保

一方、LIBORでやり取りされる相手は有名な銀行に限定されることになりますので、それほど金利は高くはありません。

銀行間で無担保取引ができる背景には、お互いの銀行の信頼関係があると考えるとよいでしょう。

例えば、ある銀行が投資家から1億円の預金引き出しを要請されたとします。その際たとえ銀行に実際それほどの資金がなかったとしても、「用意できないです、引き出せません」では済まされない事情があります。

このように、資金が他のことに使われていて顧客に要請された現金が手元にない場合、どこかから借りて調達しなければならない状況は、どこの銀行でも発生する可能性があります。

もしもそのときにはお互いに助け合えるようにするために、銀行間で無担保取引ができるシステムになっているのです。

LIBORは金融ビックバンの頃に始まった

LIBORの歴史は意外に浅く、取引が始まったのは1986年のことです。

ちょうどサッチャー政権ができた頃になりますが、サッチャー首相が行った有名な金融改革は「金融ビックバン」と呼ばれていますよね。LIBORもこの政策の一環です。

この頃からイギリスのシティ(金融街)は通貨、先物、オプション市場において、世界最大規模の取引所としての存在感を放つようになりました。

「ウォール・ストリート」と言えばアメリカ・ニューヨークの金融街の代名詞ですが、同様に「ロンドンのシティ」はイギリス・ロンドンの金融街の代名詞です。

ロンドンのシティは通貨先物やオプションの世界一

ロンドンのシティは、現在でも通貨先物、オプション市場で世界一の座についています。

株や債券の取引、商品相場はやはりアメリカが本場になりますが、伝統ある貴金属の取引やロコロンドンのような市場と通貨市場のデリバティブ商品は、ロンドン市場が世界ナンバー1です。

また昨今では、アメリカの指標原油であるWTIの取引量もイギリスの市場のほうが多くなることがあります。

イギリスが世界一になった理由は「保険」

なお、イギリスが通貨の先物とオプション市場で世界一になった理由には、「再保険」の影響が大きいと思います。

みなさんも生命保険や自動車保険、火災保険など、なにかしら保険に加入していると思います。

万一その保険会社が倒産してその掛け金が支払われなかった場合には、いわゆる保険会社のため保険会社「再保険会社」が対応します。

この「再保険会社」がイギリスに集中していることが、オプション市場を活性化しています。オプション市場で保険をかけられている再保険会社大手ロイズなどは、ロンドンが本拠地です。

参考までに保険とは、なんでもそうなのですが結局は「オプション市場」のことを指します。みなさんも加入している一般的な保険は、つまり金融市場のオプションのことであり、その胴元は再保険会社です。

日本の保険会社はその掛け金徴収の代行を行っているだけ、という考え方もできます。

金融の部門では株や債券も需要が多いのですが、一般生活では株や債券よりも保険を使う頻度が高いと思います。その保険のオプション市場がロンドンに集中していることで、ロンドンは世界一となったのです。

再保険市場が集中しているロンドンは没落しない

ロンドンに再保険市場が集中しているということは、日本の銀行も必要なお金がないときにはロンドンで資金調達をしたほうが良いことになります。もし最悪の結果になっても、再保険で補償をしてもらえるからです。

このように無担保で保険付きで資金調達できる利便性から、ロンドンのシティは世界中の銀行や金融機関が利用する資金調達のメッカとなっています。これは「ブリグジット」の後にも変わりません。

サッチャー首相が行った金融改革のおかげでロンドンのシティが安泰であるから、イギリスはこの先も、EUを離脱してもやっていける自信にあふれているのです。

LIBORはどのように読んでどう活用する?

冒頭で述べたとおり、LIBORは銀行間の貸出金利のことです。その借金の金利が上昇するということは、銀行間のやり取りが不安定になっていることを意味します。

これは金融システムが不安定になっているということの証であり、その結果、どこかの金融機関が破たんする懸念にもつながります。

LIBORは、イギリスだけでなく世界の地域向けの金利も発表しており、各地域の金利の上下動が分かります。これを見れば、どの辺の地域の金融システムが不安定になりつつあるのかが、分かるのです。

なお、金利が上昇するという状況を別の視点で分析すると「景気がよくなっている」とも取れます。

このため必ずしも「LIBORの金利上昇=危機が迫っている」とはなりませんので、ご注意ください。金利が上下した、その変化した背景が何であるかを冷静に分析する必要があります。そしてそれから投資行動を起こすのかが、賢明な判断です。