「銅価格の景気への影響」と聞いて、なぜ銅が景気と関係あるのか?と考える方も多いと思います。

リーマンショック直後、あの「ウォーレン・バッフェット氏」が、ゴールドマンサックスやAIGの株を買い、出資したことは有名な話ですが、同時に銅も買っていたことはあまり注目されませんでした。

バッフェット氏は、銅価格が景気に先行をすることをよく知っていたから、買ったのです。

ただしこのときコメントを求められた彼は、「銅価格が採算コストを下回ったから買った」とだけ答えました。

この発言は彼の哲学である、安いものを買って保有するという「バリュー投資」に沿うものです。

しかしそれよりも何よりも景気に先行して金融株や銅価格が上昇することを、私は知っているから」というのが理由だったと思います。このような知識がある人は少ないです。

あの劇的な下げが終わったあと、あの時点で景気が回復をしてくると予想する人は少なかったと思います。銅を買っただの、ゴールドマンサックスを買うだの、あの当時はさまざまな報道がされました。

彼が金融株や銅を買い始めるということは、彼は強い信念のもとで、アメリカをはじめとした世界の景気は回復する、「景気はこれから上昇するよ」と宣言しているようなものだったのです。

バフェット氏の深意を、誰も読み取れなかった

そのことには気付けず、彼がいくつかの企業の株を買ったという事実しか認識しない人がこのとき多数であったことは、大変に残念に思います。

バッフェット氏がこれらの銘柄を買ったとのニュースがあったときには、「近い将来、景気は回復するのだから、株は買いなのだな」と深意を読み取れることが重要でした。

そして、何か株を買うとすればのであれば、景気回復期に一番早く上昇する金融株を買い、銅でも金でも原油でもなんでもいいから商品も買えばよかったのです。

あのとき、バフェット氏のニュースを報道する人やブログを書く人が彼の真意までは理解できなかったから、そして彼の言葉そのものだけを伝えるにとどまったから、株を買えなかった人が多いのだと思います。

なお為替に関して言えば、その後FRBが量的緩和(QE)を始めました。これはドルの大量供給、そして供給過多となり、必然的にドルの価格は下がりました。

銅価格の上昇に乗ることが、景気回復時の基本戦略

つまり景気回復期には「金融株を買い、そして商品相場の中では銅を買う」という投資戦略が有効なのです。そして自国通貨は金融緩和によって下がりますので、FXの方向性としては「売り」です。さらに通貨が売りということは、債券も「売り」になります。

景気回復時とはいっても、景気に対してはまだ不信感が残っていると思います。

このような場面においては、何かを買うと同時に何かを売るというアービトラージ、いわゆる「裁定取引」を仕掛けると、パフォーマンスがよくなるでしょう。

なお、裁定取引と聞くと「違法なのでは?」というイメージを持つFX投資家の方もいるかと思います。

確かにFXでは、同じ通貨ペア同士で裁定取引行うことは禁止されていることが多いですが、株や金属など全く異なる商品で組み合わせるのなら、リスク回避の有効手段となるのです。

銅は工業製品に欠かせない重要なモノ

さて、価格の相場から視点を移して、銅の需要から重要性について考えてみましょう。

銅は、通電性に優れています。金も同様に優れていますが、価格が銅より高価であるため、工業製品に利用するにはコストがかかりすぎて需要を満たしきれない側面があります。

しかし銅は安価であるため、需要が旺盛になったとしても対応できます。銅は昔から比較的安価であることで、20世紀から需要量は減っていません。

銅は電線の材料として使われています。みなさんの身の回りの家電製品のうち電線が使われていないものがあるか?と言ったら探すのが大変なほど、電気を使うものには必ず電線が使われています。

この電線の需要が減らない限りは、マーケットにおいての銅価格の重要性も変わらないことになります。

なお参考までに、金はハイテク商品のICチップに多用されています。スマホやパソコン、タブレットなどの値段が高いのは、部品に金や白金などの高価な貴金属が使われているからなのです。

ハイブリットカー、電気自動車などの蓄電池にも大量の貴金属が使われています。この蓄電池が高くて重いためこれら商品の価格は高く、普及があまり進まない原因となっています。

テクノロジーの進歩によって、蓄電池技術が安価な金属や炭素などに置き換えられるようになってくると、上記のようなハイテク商品の低価格化も進み、より一層便利で豊かな暮らしになることでしょう。

銅価格が景気と連動しなくなる時が来る?

なおこの先、銅を使う電線の需要が少なくなるとしたらこの蓄電池技術の発達です。

電気を貯蔵するための技術は今後も進歩するでしょう。

そして蓄電池が安価になり世の中に普及してくると、電線を使う必要がなくなり銅の需要も重要性も下がることになります。

そうなると、銅価格が必ずしも景気の状況と連動した動きになることは見込めなくなってしまいます。

この先、いつの時代も同じ見方でよいわけではないことは、ぜひ認識しておきましょう。

銅価格について知る

銅価格の国際標準はロンドン市場、LME(London Metal Exchange)です。ロンドンはFXや先物、オプションなどの主要な市場でもありますが、貴金属、非鉄金属市場においては世界最大規模の先物取引所でもあります。

銅価格をはじめとした貴金属、非鉄金属の価格推移は、日本の投資家は以下サイトを利用するのが伝統です。

「kitoco」と言われるこのサイトの歴史は古く、インターネット黎明期から世界中の投資家に愛用されています。

http://www.kitcometals.com/

なお価格は、ドル建てで判断をされることが多いです。

1ポンドあたり(注: ここで言う「ポンド」は重さの単位であって、イギリスの通貨のことではありません。)1ドルを割り込むと景気の低迷期である、そして3ドルを超えると景気は拡大期であるか、拡大のし過ぎで転換が近い、と警戒をしなくてはなりません。

銅価格を読めないときは需要と在庫も確認する

銅価格の推移だけを見ていても世界の現状が分からず物足りないことがあります。国際的な有事が発生すると高騰したり、暴落したりすることもあります。

現在、銅の最需要国は中国ですが、この中国で工場の生産停止などが起こった場合には銅価格が下落することがあります。またまれに上昇するケースもあります。

それでもよく分からないときには、需要をみる方法もあります。在庫状況をチェックすることも有効です。

在庫の見方としては、在庫が少ないのであれば価格は上昇し、景気も拡大していると判断することができます。反対に在庫が積み増しをされるとしたら景気低迷期ということになります。

銅価格同様に、在庫量も毎日発表されている

需要や在庫が分かる理由は「LME」の指定の倉庫というものがあり、供給サイドのメーカー、需要サイドのメーカーがその倉庫を銅の在庫を預けるために利用しているからです。

なぜこのようなシステムになっているのかというと、市況に合わせて臨機応変に、在庫を市場に放出をしたり、逆に在庫を確保するために倉庫会社に預けたりするためです。

この倉庫の合計の在庫は、毎日、値段のように発表されています。これも「kitoco」で確認することができます。

⇒ 30 Day LME Lead Warehouse Stocks Lebel

銅価格をサイトで確認するときには、普段からこの在庫量も一緒に確認するようにしておくとよいと思います。しかしこれだけ見たからといって、景気動向が分かるかと言えば、そう単純にはいきませんので留意しておきましょう。

銅市況を見るのは景気回復期のみでよい

一般的に銅市況は「景気回復期に見るものである」ことをぜひ覚えておきましょう。

景気回復期に向かうときの先行性は、かなりパフォーマンスが良くなるのですが、景気拡大がピークとなりリセッションに向かうときには、あまり先行性がなく、景気との連動性もかなり低くなります。

活用の仕方と時期の参考として、覚えておくとファンダメンタルズ分析に役立ちます。