金利を大まかに区分けすると、「政策金利」と「市場金利」に分類できます。

「政策金利」は中央銀行が金融政策決定会合で決定されるものです。

政策金利には市場金利の誘導目標となる役目もあり、この金利を基準にして国債の利回りやローンや、融資金利なども「市場金利」が決まっていきます。

言い換えると「政策金利は基準金利」です。そして市場金利は基準金利である政策金利に近づこうとする動きになっていくのが一般的です。

この2つの金利の動きは、相場チャートの「移動平均線と価格の関係」に似ています。

価格は、移動平均線に向かって集合したり離散したりを繰り返しますよね。テクニカル分析に関してはみなさんのほうが詳しいと思いますが、政策金利と市場金利の関係もこれに似ていて、集合したり離散したりします。

クレジットスプレッドとは

基準金利である政策金利と、市場金利はいつも同じ水準にあるわけではありません。

市場金利が頻繁に変わるものであることは「別の記事」で解説しましたが、基準金利に向かって近づいたり離れたりを繰り返します。

この金利の乖離の幅のことを「クレジットスプレッド」と言います。

なおもっと範囲を狭くして国債と社債など、2種類の債券を比較した金利差のことも「クレジットスプレッド」と呼ばれています。「スプレッドspread」とは広がりの意味です。

クレジットスプレッドをどう見るか

クレジットスプレッドの乖離を見ることで、経済の状況がどう分かるのでしょうか。

国の誘導目標である政策金利に市場金利が近いということは、国債のマーケットが政府の指導の下で順調に動いており、経済も落ち着いていると言えると思います。

一方、この2つの金利の乖離が大きい場合は、中央銀行の意図しない方向に経済が動いていることになります。

景気がいいと思っていたところに、例えば自然災害や大規模な事故などが突然発生すると、それをきっかけに一気に不景気に突入することなどもあり得るのです。

なお、こういった不慮の事故や自然災害による経済の混乱は一時的なものになることが多いですが、このようなときには政策金利と市場金利のスプレッドがさらに大きく乖離することがあります。

乖離が続く期間は、事故や災害の規模によっても異なりますが、いずれにしてもしばらくすると、市場金利は政策金利の値に向かって収縮していくことになります。

クレジットスプレッドが長期間縮まらないとき

なお、災害が復旧まで長引いたり、戦争起こったりした場合にはいつまでもスプレッドが開いたままの状態になることもあります。

このようなときには、市場、特に国債の市場が中央銀行に対して「あなたがたが行っている金融政策は間違っていますよ」と警告しているに等しいことになります。

このため、近々行われるFOMCなどの金融政策決定会合では、金利の見直しや金融緩和が行われる可能性が高いです。政策金利と市場金利の乖離を解消しようとされるためです。

しかし近年では、中央銀行の政策が大きな間違いとなることは非常に稀です。基本的には、クレジットスプレッドが長期間開いたままになることはほとんどありません。

最近、中国のクレジットスプレットが開いたまま?

中国では最近、共産党の誘導目標金利に対して銀行の貸出し金利が大きくかい離をしていることが話題になっています。

中国のこの状態は、政府や政府系の銀行が、インフレ対策のために貸し渋りを行っているため、起きています。

資金需要を賄いきれず、銀行やシャドーバンクが金利を釣り上げていることから、誘導目標と市場金利が乖離するのです。この状態の中国が今後どうなるかを分析してみましょう。

上記の説明のとおり、2つの金利の乖離期間が長引くようなら、経済の実情が変わってくることになります。

中国は2015年のチャイナショックから立ち直り、景気回復をしていたはずですから、この金利差の拡大はおそらく、中国のリセッション、景気後退を意味しているのではないかと思います。

好景気のときに金利差を発生させる効果とは

好景気のときに金利引き上げが行われる目的については、別の記事でも紹介しましたが、ここでも改めて説明しておきましょう。

金利を上昇させると、企業が融資を受ける際のコストが高くなります。融資を受けづらくなり、企業は設備投資を躊躇する、結果として、景気は下向きになり始める、と言う解釈が一般的です。

しかし好景気の中で行われる利上げは、好景気を持続させるためのものです。景気に急な過熱感があると利上げを行い、いったんクールダウンさせて、さらなる上昇につなげようとするための調整なのです。

日本の専門家は「利上げしたら買い」と言います。「利上げすればするほど景気がいい」と解釈する人がほとんどです。しかしこの解釈は、全面的に正しいわけではありません。

確かに、長期的には株買い、通貨買いで正しいのだと思います。しかし上記のように直近の「調整目的」で行われているのですから、目先の株価や為替も調整局面に入ります。

利上げ直後に買うとだいたいのケースにおいて、思惑とは反対方向に動くことになるのはこのためです。短期売買なら「売り」が正しいのです。

中国の現状とこの先は?

中国の共産党も、景気の上昇をいったん押さえ付けるためにと3か月物の低めの誘導金利を設定しているのでしょう。実際の市場金利は高すぎる状態にあり、かといってさらに金利を引き上げると国営企業の資金繰りが悪くなります。

そのうえ、地方政府の財政も悪化するといった問題も抱えていますので、誘導目標金利を上げたいとしても上げられないジレンマに陥っているのです。

銀行が貸し渋りを行ったときには、シャドーバンクが代わりに融資を行うのですが、人民会議では、必達ではないですがこのシャドーバンクの根絶を目標とした方針を示しています。

方針はどこまで徹底されるのか分かりませんが、シャドーバンクからも貸付不能という状態になれば、中国経済は資金需要を満たせないことになり、長い不景気に突入する可能性があります。

ちなみに私個人的には、シャドーバンクを規制すれば中国の経済事態が不安定になることは、彼らも分かっていますから、きつい規制は施行しないだろう、と予想はしています。

いずれにしても、現在の中国のクレジットスプレッドが乖離している状態は、経済の転換、景気の転換につながることが予想されます。中国経済はじめ関連分野全般に要警戒、ということになるでしょう。