FXの情報収集をしていると耳にする指標のひとつに「消費者信頼感指数」があります。

以前「別の記事」で、経済主体が「消費者」「企業」「政府」と3つあると説明をしましたが、「消費者信頼感指数」はこのうちの「消費者」の景況感指標です。

「企業」や「政府」の先行き見通しの指標は比較的いろいろあるのですが、「消費者」サイドの先行き見通し調査はなかなかないため、「消費者信頼感指数」の数字はかなり貴重な指標といえます。

消費者サイドの調査がなかなかない理由は、どこの国でも国の主体は国民にあり、一人一人の国民の生活は多岐多様であるためです。このため調査方法を統一することが難しいのです。

消費者信頼感指数は「遅行」指数。見方は?

「景気回復のロジックの記事」でも述べましたが、消費者の行動に景気の影響が現れるのはいつも最後です。このためこの指数の種類は「先行」「一致」「遅行」でいうと「遅行」の指数であることを覚えておきましょう。

景気上昇局面において消費者信頼感指数がピークに達した時一般的には、この指標が最後に反応する性質があることを考慮して、景気が徐々に後退期に入っていると判断します。

しかし、いつも必ずしもそうではないこともあるのが、難しいところですね。

消費者の需要がピークになっているときに、企業がさらなる設備投資を始めることがあり、このようなときには企業の景況を示す指標「先行指標」のほうも上昇し始めることがあるのです。

消費者がたっぷり買い物をして、お腹いっぱい満足したところに、さらに企業が消費者サイドの需要を見込んで投資を行う場合、目先は既に満足しているのですから、大して消費は伸びない、需要はいったん落ち込むことも予想されます。

ただし企業の設備投資が次の需要期に備えるためであって、例えば消費者がボーナスをもらって可処分所得が増えたときに買い物をする気になったとすれば、景気の動向としてはいったん調整が入ったのち、さらに上へ向いていくことになります。

景気のピークがどこかを判断するには

景気は常に「循環」しています。投資戦略を考えるにあたり、景気のピークがどこかを判断することは非常に重要ですが、実際の景気の動きは基本ロジックで動いているのか、それとも今回は例外なのか、見極めが難しいです。

ここでひとつ、ピークを見極めるためのヒントをお教えしたいと思います。

それは、「消費者の債務残高を確認する」のです。

消費者サイドの需要がピークに達したとき、消費者の債務残高も上昇してきている場合は、消費者に現金の余裕がなくなってきていることを意味します。

つまりこのケースでは「景気はピークを迎えている」と判断をすることができるのです。

もし債務比率が上昇せずに、また企業が設備投資を始め先行指標が上昇した場合は、新たな需要がまた掘り起こされると考えてよいでしょう。

好景気の最中にはいったん調整局面があります。これが単なる調整なのか転換なのか目極めが難しいことになりますが、このとき消費者の借金が少ないなら、彼らはお給料日に買い物を繰り返す可能性が高い、消費は続くから「調整」と判断できることになります。

消費者の行動には、季節も関係がある

アメリカや中国など国土が広い国においては、季節と天候により需要が増減することもぜひ覚えておきたいものです。国土の中に広い降雪地帯があり、その地域に雪が多く降る季節には、一般的には需要は下がるものです。

これは単純に、外が寒いときに積極的に外出して消費行動をするか?と考えれば分かりますね。普通の人は寒ければ、わざわざ出かけるようなことはしないと思います。

降雪地帯を多く抱える国、特にアメリカやカナダは、冬場には購買意欲が低くなる特性があり、景気が停滞しやすい側面があるのです。

なお中国は、一番寒い時期に「春節」という、国民にとって大切なお正月の行事があります。

この期間、工場などはお休みとなり供給は一時停止しますが、行事を楽しむ準備のため消費の需要はあまり減らないと考えられます。このためアメリカやカナダほどは、季節による景気の停滞が少ないことになります。

経済指標では、季節のことも考慮されている

上記のような季節による特殊事情を考慮して、指標値の振れ幅を少なくするための経済指標には「調整値」というものがあります。一般的には、実際に出た数字に対して、この季節調整値を掛け合わせたものが経済指標として発表されています。

例えば、灯油や天然ガスの需要は夏に比べて、冬の方が1割ほど伸びることはよく知られていると思います。

しかし季節調整値が掛け合わされているため、経済指標上の原油の需要は一見、夏も冬もあまり変化がないような発表になっています。しかし実際の需要は毎月変化をしているのです。

商品相場などをやっている方は、冬灯油と天然ガスは冬に高く、夏はガソリンが高いことを知っていると、上手にトレードができるようになると思います。

消費者信頼感指数はアンケート調査結果

「消費者信頼感指数」は、アメリカの消費者約5000世帯へのアンケート調査の結果を元にした景況感指数です。

アンケート内容は、現況の景況がどうなのか、そして将来はどうなのか、ということを聞き「はい」か「いいえ」そして「どちらでもない」といった回答を求めるざっくりとした調査です。実際の月収を聞いたり、どのぐらい消費したかの金額を聞いたりするものではありません。

例えば景況感について「現状と変わらない」が50とすると、これに引き続いて「先月よりもよいか、悪いか」という質問があり、「よい」という回答であれば指数は50以上、「悪い」との答えは50以下の指数になります。

具体的に収入が何パーセント上昇して、消費は何パーセント下落したといった具体的な数字が発表されているのではないです。アンケート調査結果を指数化したものなのです。

「消費者信頼感指数」との名称が分かりづらい

「消費者信頼感指数」を英語で表記すると「CCI : Consumer Confidence Index」です。

コンフィデンスという単語が「信頼感」と直訳されてしまったのでしょう。この日本語訳の名称は、中身がどのような調査による指標であるのかがパッと見て分かりづらい原因となっていると思います。

「消費者景況感指数」とでもすればよかったのではないでしょうかね。

これが日本の調査だとすると、「街角景況感指数」「消費者マインド調査」と呼ばれるでしょう。

そのような呼称であれば「きっとこれはアンケート形式の調査なのだな」と分かると思います。ちなみに日本の企業へのアンケート調査で景況感指数に相当するものは「日銀短観」です。

この指数の信頼性は、世界に数あるPMI指数の中でも群を抜いて高いものとなっています。

消費者信頼感指数は2種類ある

アメリカの消費者信頼感指数は、大別して二種類あります。ひとつは「ミシガン大学の調査によるもの」もうひとつは「コンファレンスボード」によるものです。なおコンファレンスボードは、民間の調査会社です。

ミシガン大学の調査は「ミシガンサーベイ」とも呼ばれ、毎月上旬に速報値、そして下旬に確定値が発表されます。

ミシガン大学による各種調査は、たいてい速報と本発表とに大きなずれがないことで、高い信頼が寄せられています。

コンファレンスボードによる調査は、大規模かつ詳細な分野にわたって行われます。例えば車を買う予定、家電を買う予定など、消費者心理に重きをおいた質問で構成されています。

この調査結果が、各種業界の生産計画などに実際に参考にされ、重宝されていることは想像に難くないでしょう。

目先と将来の景況感からこの先の消費動向が見える

両調査とも、現状の景況感に関する調査、そして来年とさらに5年後の景気動向についてどう思うか、といった内容のアンケート調査になっています。

一般的な消費者の行動や心理を考えてみると、景気の先行きに不安がある人は、手元にお金があったとしても消費には回さず、貯蓄や投資に回すことが多いと思います。

また、今手元に十分なお金があって、この先もしばらく自分の生活は景気がよいと思える人が、お金を使うと思います。

人が予測できるのはせいぜい翌年のことまでであって、5年後も余裕があるかを想像できる人は少ないと思います。

ということは例えば「5年後も景気がいいだろう」とアンケートで答えた人には相当な余裕があり、目先にある現金は消費に回す可能性が高い、ということになります。

消費者信頼感指数の具体的な見方の例

「消費者信頼感指数」の見方として、現況の数字を見て良いか悪いか判断するだけにとどまる人が過半数だと思います。しかしこの指数でより重要になってくるのは「来年や5年後のことを消費者がどう考えているか」です。

同じ経済指標でも発表された指数の見方を変えることで、そこから分かることの解釈は全く違ったものとなるでしょう。

例えば現状の指数が「極めて良好」であったけれど、来年と5年後の指数が現状の指数よりもよくなかった場合は、将来を不安視していることになります。

この場合、消費者は持っているお金を全部使って買い物をするという消費行動は起こさないでしょう。余力を持ちつつ買い物をすると思います。

一方、来年も5年後も良好との指数が出ていれば将来の見通しも明るいと認識していることになります。今あるお金を全部使ってしまってもいい、という大胆な消費行動に出ることも予想できるわけです。

なお先に「消費者の債務が増加していれば消費行動は停滞する」と書きました。しかし例外として極端な話をすると、借金をしてまでも自分の買いたいものを買うという行動もあり得ないわけではありません。

ただし本当にこういう状態になってしまうと、その先には景気の崩壊が予想されるでしょう。