今まで、さまざまな「経済指標」についてのお話しをしてきました。

なぜこのようなお話をしたのかというと、世に出ているさまざまな専門書も正しく説明しているものと間違ったものがあるためです。また、ウェブで素人が書いたものは間違いだらけであることも非常に多いです。

重要なポイントが説明されていない例

ISM指数は総合指数だけ見ても分析にならない

「ISM指数」を例に挙げると、この代表数字である「総合指数」はあまり重要ではないにもかかわらず、この解説だけがされています。

そしてほとんどは、「総合指数が50を超えているか、否か」ということしか触れられていません。

50という数字は確かに景気の良し悪しの節目とはなりますが、それだけです。私たち投資家が最も知りたい、今後の見通しを予測することは、この数字を見ただけでは不可能でしょう。

「有効な分析」をするなら、3か月平均や半年平均も合わせて見ることです。これらの平均値よりも、指数の実数が上にあるか下にあるかが重要です。

移動平均線の活用の仕方も理解していますか

テクニカル分析の基本とも言える移動平均線を使った分析方法、正しく理解されているでしょうか。トレンドを確認することは分析において非常に重要です。

移動平均線がアップトレンドであれば、景気は今後も上昇する可能性が高いですし、ダウントレンドの場合は、景気も下向きになる可能性が高いということになります。

また、実際の価格が移動平均線からかけ離れている場合には、価格も移動平均線に向かって収縮してくる可能性が高く、移動平均線に近いところに価格がある場合は、この先移動平均線から離れる方向に進む可能性が高いのです。

テクニカル分析の欠点とは何なのか

「テクニカル分析は判断の根拠が乏しい」とは、「まともな思考を持つ人」の代表とも言えるウォーレン・バッフェット氏の言い分ですが、私もそう思います。

例えば、太陽が東から昇ることは暗記して覚えるほかないのですが、人間は「なぜ、そんなことが起こるのか?」という疑問の回答が、自分の経験や勉強したことに基づくものであれば、納得をするものです。

しかし、数字から導き出された結果の場合は少々異なります。すべてを正しい解釈で正しい数値が計算されれば正しいことにはなりますが、途中の解釈を少し間違えた場合には、結果も正しくないことになります。

そして、解釈を間違えたことに気づけない場合など、間違いの根本的な原因を探求できないデメリットがあるのです。

「数字」の客観性が素晴らしいことは認めますが、人間の本能的には一般的に、まずは数字で理解しようとせず、ロジカルに理屈が通っているかいないかで判断するものです。

計算で出た答えどおりに最終的に落ち着くとしても、実際のマーケットではその答えが出る過程で、上に下に値が振れるものです。この間、計算によって出された数字への自信と根拠に疑念が沸き、激しく心が揺さぶられるものです。

一方、答えへの到達がロジカルなもの、つまり仮説から結論まで一本筋の通った説から導き出されたものであった場合、多少マーケットが上下に振れるところを見たとしても、答えの根拠に納得していれば心が揺れることは少なくて済むのです。

テクニカル分析は数字の論拠も結果もあいまい

「テクニカル分析だけでは儲けられない」と言われているのは、各分析に使われる数字が、どういう論拠で出てきたものなのか一つ一つ探究するのは難しいからです。

もともと数字というものは、小学校の算数と一緒でたった一つしか答えがありません。

テクニカル分析でも「1+1=2」というような回答が出されますが、別の記事でも話題にしたように、この答えがマーケットにおいて的中する確率は、今の統計学で最高70~80パーセントが限度とされています。

数学的に考えると、解釈も根拠も本当に正しいテクニカル分析があれば、現在も将来もその答えは一つになるはずで、それが100%正しいはずです。

しかしそのような答えは出せないのが現状です。つまりこのようなテクニカル分析は、アプローチが間違っているか、まだ確固たる方法が開発されていないだけの話なのだと思います。

美しい方程式で導き出されるプロセスと答え

私個人的には、答えが一つしか出ない数式が「美しい方程式」であると考えます。回答の種類が2つも3つもある方程式など興味がありませんし、だからと言って美しい方程式を開発する能力と才能も持ち合わせていません。

経験のある方は少ないと思いますが、仮説の立て方が正しくて、正しい結果に向かっていくときには、そのプロセス一つ一つまで面白いように仮説の条件に当てはまったように動くものです。そして結果も完全に一致します。

起こっている事象に対する根拠を正しく捉えていて仮説を立て方が十分であれば、たとえプロセスにおいて予期しないことが起こったとしても、それは想定内の事象として十分に対処が可能です。

美しい方程式や美しいロジック、正しい仮説の数式の場合は答えが一つであり、全てのプロセスも対処方法も一本の筋に通っているように見えるものなのです。少なくとも私には、そう見えます。

この視点で考えると、現在のテクニカル分析は全く筋が通っていないものばかりで、対処できない予想外のことばかりが起こります。こんな美しくない方程式を理解しようと真剣に取り組んでも無駄、というのが現時点の私の持論です。

ISM指数を分析するとは、こういうこと

「ISM指数」の話に戻りましょう。一般的に注視されている数字は総合指数、ISM指標を表す代表的な数字であって、ほとんど意味がありません。もちろん現状を表す数字ではありますが、私達が知りたいのは現状の数字ではなく、将来の見通しです。

例えば今月「製造業が60、非製造業が57」と発表されて、与えられた情報は「50より上だと景気がよくて、それ以下だと景気が悪い」。これだけで将来を予想することはできないでしょう。

この数字から有効な分析を行うためには、なぜこのような数字になったかの背景が必要です。

例えば、「非製造業の新規受注と価格、受注残は先月もマイナスだった、今月もさらにマイナスになった」などということです。

これを聞いただけでも、企業の利益が圧迫されることが想像できるでしょう。さらに「企業のコストとなる雇用はプラスになった、費用も増える」と別の情報も聞いたとすると、ますます企業収益が圧迫されていくことが予想できます。

このようなことから、次月のISM非製造業は下がるだろうことが分かりますし、株価はまだ上昇するかもしれませんが、今まで業績が良いと言われてきたものも今後、悪化するだろうと分析できるのです。

来期は10~12月期になりますので、決算期であるサービス業は悪くなるだろうと予想ができます。もし業績が良くなった場合は、おそらく自社株買いなどがあったのであろうということになります。

つまり、「現状のISM指数が57、50より上だから景気がいい」と解説するような人やサイトの情報では不十分なのです。ファンダメンタル分析について何も理解をしていないし、どこかの経済指標を単に転記しただけとしか思えません。

本来のISM指数の分析方法は、総合指数がどういう理由で57になったのかを解析し、そのうえで来月はこの数字が上にいくか、下にいくかの話をしなければなりません。

これを書いているのは2017年12月ですが、2017年11月からISMの数字を分析すると、企業の収益は今後「減る」、そして今月の数字もみても「継続している」。決算は10~12月で決算発表は2018年1月中旬以降になりますから、その時期には株価は悪くなっているだろう・・・。

こういった分析ができる人は、クリスマス前にそのポジションを処分して、クリスマス休暇明けの年明けからオプションを買うか、先物を空売り、信用売りするでしょう。

しかし90%以上の人はこのような分析ができないため、ISM総合指数だけを見て「まだまだ株価が高い」と判断してポジションを維持するのです。だから、結果がついてこないのですね。

筋が通っていれば、ここまで具体的な予想できる

このISM指数の分析は、一本の筋が通っているという仮説の一つです。

そしてここに「株価が下がるからドルも下がり、ドル安なら円高になる」説を当てはめると、ドル円のポジションを持つとしたら円高になることを予想した選択肢以外なく、結果が出るのは1月の中旬以降であろうと予想ができます。

そして、1月末にはアメリカGDPの10~12月期の発表があります。ISMでも雇用だけは順調なのだから個人消費で悪い数字は出ない、と予想できますので、2月からは戻るな、と考えることもできます。

さらには、2月の第一営業日にISMの製造業、そして第三営業日にISMの非製造業の発表があります。

今回の企業業績の悪化は非製造業から進んでいますので、戻っても2月の第三営業日かな、という仮説を立てることもできます。

年内残りの営業日数と年明けから2月までの営業日の間に、これらの仮説をひっくり返すようなものが出ないのであるのであれば、円高は継続するとの予想ができます。

ISM非製造業の数値が悪化したときが転換点

ちなみに、そもそもISMの非製造業が95か月間、つまり8年弱も50以上の数値をキープし続けていること自体が異常事態です。過去にこのようなことはありませんでした。

今後もしこの非製造業の数値が悪化すれば、アメリカ経済の好景気循環の調整が始まったことになるのだろうということも予想できます。

またアメリカは消費者サイドの経済指標も順調ですが、企業の収益が悪化したとしたらお給料が増えるわけはありません。

また住宅販売、新築、中古を含めて堅調ですが、これはアメリカの国土が広く、降雪地帯があるため、雪が降る前に建設をはじめているだけの話であることを考慮しておきましょう。住宅着工などに季節調整値があるのであれば、数字があれほど良くなることはないでしょう。

中古も同じです。雪に埋もれた状態では、中古の家の良し悪しを正しく見極め判断して決めることはできません。

つまり住宅が好調なのは冬を控えているからだけの理由なのですが、安易に「住宅が良いから景気が上向き」と解説する方も多くいらっしゃいます。正しくないことはもう、お分かりですね。

私の仮説があっているのか、間違っているのかはわかりませんが、少なくとも今後、企業、特に非製造業に景気の良い話はほとんど出なくなってくるだろうと思います。

なお「非製造業」とはサービス業であり小売も含まれます。小売があってこそ、製造業が製造する商品が売れます。ですから製造業もいずれ悪くなる、というのが私の仮説です。

この仮説に、何か間違いがあると指摘ができる方は非常に少ないと思います。個人的には筋が通っているな、と思っています。

しかし私の仮説は長い一本道のような筋ではなく、途中消えかかったりする道の筋であることも多く、それほど自画自賛をするほどの筋の通り方ではない、とも感じます。

大きな自信があるか、といえば、それほどない、のですが、このストーリー通りになるだろうな、という予感はあります。

ファンダメンタルズ分析の欠点とは

テクニカル分析の欠点だけ指摘してきましたが、このへんで「テクニカル分析の良い点」と「ファンダメンタルズ分析の悪い点」も書いておきましょう。

テクニカル分析の良い点とは、チャートが「このような形で、テクニカル指標が上限まで達したら」売りとか買いとか、損切りとか、というポイントを万人にわかりやすく伝えられることだと思います。

一方でファンダメンタルズ分析は、長期的な見通しを立てやすいとしても、いくら勉強しても、具体的にはどこで買ってどこで売ればいいのかのポイントはさっぱりわからない、ということが欠点と言えます。

これまで説明してきた私の仮説は、「ISMの非製造業が下げ止まるまでは、株式を含めてドルはずっと売りになるだろう」ですが、では、そのエントリーのポイントはどこか?

どのくらいまで円高にいくのか?という点ではあいまいです。これはファンダメンタルズだけをいくら勉強しても、分からないと思います。

特にドル円の動きは、さっぱり分からない

特にドル円は今のビットコインと同様で、何を基準で動いているのか、私にはさっぱり理解できません。日経平均でしたらある程度下値の予測や上値の予測はできるのですが、ドル円はどこを基準に動いているのかさっぱりわかりません。これが本音です。

ドル円の現在の理論上の基準値は84円くらいです。しかし110円台ですから円安になり過ぎなのです。そもそも戦後、為替レートが360円のときから円安すぎで、常に異常なドル高なのです。

ドル高と分かっても、売買のポイントまでは分からない

今のトランプ政権が「日本や中国の貿易がアンフェア」と叫ぶのには、この為替レートが一番の大きな要因となっています。

為替レートがアンフェアなのだから米国製品を買いなさい、と迫っているのです。その結果、日本は日米首脳会談でアメリカ製の武器を買う約束をしてしまったのです。

トランプ大統領はお得意のツイッターで、円安や人民元安のどちらかになると、必ず貿易に対する不満の発言をします。

ユーロに対しては、ドルは安くなりましたので不満は言いません。これらのことから考えると、トランプ大統領はおそらく、ドル高水準に関して大きな不満を持っているのだろうと思います。

このような状況は、ファンダメンタルズからいくらでも説明ができるのですが、では実際、どこで買ってどこで利食いをするのか、あるいはどこで売ってどこで買い戻しをするのか、ということは、ファンダメンタルズをどんな方法でどのように勉強しても、分からないことは事実です。

有名投資家は、両方使って分析をしている

ただ、世界的に有名な投資家である「ジョージ・ソロス氏」も「ウォーレン・バッフェット氏」もそのほか有名な投資家も、間違いなくテクニカルだけでは相場を判断していないということは言えます。

世界で成功をしている投資家というのは、ファンダメンタルズを基準に、そしてサブとしてテクニカル分析も用いながら、マーケットに対峙しているのだろうと思います。

テクニカル分析だけで生き残れるのか

日本の投資家には、テクニカル分析だけで勝負をしている方が非常に多いです。しかしこのことでいつも個人的に思うのが、「あなたが老齢になって働きに出ないようになっても、果たしてそのやり方で儲けることはできるのか」ということです。

日本人が投資をする理由は極めて明白であって、将来の年金受給に関しての不安からくる老後資金になると思います。

老後は、満足な生活資金が得られないから投資を行っているのだと思います。その老後においても、切った、張った、の丁半博打を繰り返していては仕方がない、と思います。

みなさんは、老人になってもパソコンやスマホでトレードするのでしょうか?私は人生を楽しみたいので、1か月に一度くらいしかマーケットはみたくありませんけどね。

テクニカル分析だけでトレードをやっている方で、相場で長生きをしている人を私はこれまで、ほとんどみたことがありません。テクニカル分析は穴が多く、的中率は70~80%が限界ですから、いつかは穴にはまって大損してしまうのでしょう。

出発点はテクニカル、ゴールはファンダメンタルズ

また、テクニカル分析をやっている方で、出発点とゴールを決めない方がいることには非常に驚きます。古くから言われているように、何事も成功するためには準備が必要で、準備が事の成否に大きくかかわってくるでしょう。

テクニカル分析の基本は移動平均線への集合と離散を見ることであり、付帯事項として乖離の「20~30%以内」に「70~80%」のランダムな値動きが収まるということになっています。

この条件を考えると、エントリーするタイミングは、移動平均線から実際の価格が大きく離れているか、または価格が移動平均線に近いところにあるときです。そして、そのときの移動平均線の向きに従って買いか売りかのポジションを持つことになります。

なお高値や安値で仕込みたいときは、移動平均線から乖離している状態でエントリーしたほうが有利だということは、感覚で分かると思います。

このように、エントリーに関してはテクニカル分析が非常に優れています。テクニカル分析を使って勝負をしている人は、エントリーの理論については非常に詳しいのですが、どこで利確するかという出口戦略には全く詳しくないことがあります。

そのような方は、景気がまだ再拡大する見込みにもかかわらず売りをエントリーしてみたり、だいたいの値幅の見通しも計算をしないままエントリーしたりするのです。

相場では、エントリーをするだけでなく、そのポジションを利確してはじめて「勝利」です。

エントリーのタイミングはほぼ正確に測れたとしても、出口戦略が曖昧なままでは十分ではありません。投資家が知るべきことは出口戦略です。

例えば膨大な利益が乗っているときは、早く利食いをしたいという焦燥感に駆られるものです。何度も言うように巨万の富があるときの苦痛は、損をしているときよりも苦しいものなのです。

まだ利益が伸びるような気がする、もっと儲けられるかもしれないのに、早く利食いをしてしまうことにならないか?という不安も常にあります。

このようなときの答えは簡単で「欲張るのはよくない」の一言で終わりです。

しかし今後の相場人生を考えた場合には、できるだけロジカルに最大益のところで手仕舞いしたいと思うのが人情でしょう。それにはテクニカルでは正確な答えは出せない、ということになります。

フィボナッチだの、倍返しだの、言う人がいますが、なぜフィボナッチのとおりになるのか、なぜ半値戻りになるのか、人間の本質的には信じ切れなくて当然と言えます。

根拠が薄弱で分からないから本能では理解できない、理性でむりやり理解しようとしているから信じ切れないのです。

テクニカルが出口戦略には向かない、と考えるとファンダメンタルズでの解析によって戦略を立てる方がよいことになるでしょう。

ファンダメンタルズでは、エントリーのタイミングははっきりしませんが、値幅や利確するべきポイントとしてどこの値段を目指せばよいのかは、程度分かるようになると思います。

例えば、景気は今まで良かったのだけれど、各種の経済指標をみると悪化が見越せる、つまり現状は価格が上昇しているが、先行きは悪くなるだろうと予測した場合、結果は相場の下落につながるだろうとロジカルに考えられるため、ロジカルに手仕舞いができるのです。

初めて大儲けをしたときは誰でも興奮状態になるものですが、これも場慣れの問題で、二度や三度同じことを経験すると、冷静になっていきます。

ビットコインはバブル相場

参考までに、今のビットコインはもうすでに1ビットコイン200万円が見えてきていますが、この相場はバブルなので、とことんいくほかありません。

この相場の先行きの参考になるものと言えば、中国のかつてのH鋼やアルミの例などでしょう。

これらの商品は大連商品取引所に上場されているのですが、中国人は、一時期はとことん買っていくことがあっても、5年後には値段が0で動かなくなるほど買わなくなる、というように極端です。

ビットコインも、いつの日か暴落するでしょう。そして結果として忘れられた通貨になるだろうと思います。

バブルには乗らない有名投資家たち

バブルの場合はとことんついていくしかなく、ロジカルも理屈も何もなく、無限大に上昇をしていきます。バフェット氏などはバブル相場には参加しない方針を貫いています。

バブル期には必ず彼のパフォーマンスはマイナスになったり、平均以下になったりしています。

彼らは、バブル相場など経験するとその後の相場生活に甚大な影響を与えることをよく知っており、参加するものではない、と考えている節があります。

彼らの例は、ほどほどの利益で欲張らずに普通に投資していたら、大金持ちになってしまったという帰結であり、まともな考えを持って普通に投資をしていれば、誰もが彼らのようになれる可能性があるということなのです。

「普通に投資する」とは

「普通の投資」とは例えば、ファンダメンタルズ分析で長期投資を行う場合、景気が今後悪くなるだろうと確信したときに手仕舞いすることです。

また短期売買の場合には、自分の作ったストーリーと実際の相場のストーリーとの乖離を計算し、どこが適当なものになるかを判断していけばよいのです。

例えば、今度発表される経済指標の結果が良くなるとあなた自身が予想をし、周囲の予想もそうであった場合は、その結果マーケットでは買いが優勢になるでしょう。

しかし、経済指標の結果があなたの予想よりも、周囲の予想よりも低かった場合には、売られます。

このとき買ったポジションがあるのなら、手仕舞いをしなければならないのですが、周りもみなさんが一斉に手仕舞い売りをする行為に出ますので、実際は二倍売られることになるのが一般的です。

そしてさらにその後の歩調は再び買いになるので、売り切った値段から元のトレンドに戻るまでをまた買えばよい、ということになります。

このようにファンダメンタルズの威力を出口戦略で発揮できるようになると、「普通の投資」も着実に実績として積み重なり、形になっていきます。

テクニカル分析はエントリーだけで活用する

テクニカル分析を有効に活用できるのは、ポジションのエントリーのタイミングを見極めるためだけであって、そのほかの見通しはファンダメンタルズに頼ったほうが良いのではないか、と個人的には思います。

綿密な準備が結果のすべてを支配する

さきほど、準備は結果を支配するという話をしましたが、このことを深く考えてみます。

例えばあなたが、相場やあなたの人生の中で「うまくいったこと」と、それについて準備をしたかしないかについて、考えてみてください。

準備をしないで「たまたま」うまくいったことについては、みなさん鮮明に覚えていることと思います。しかし、準備をしないで失敗したことは覚えているでしょうか。

また、たくさんの準備をしてもうまくいかない結果となる典型が「受験」です。みなさんも高校や大学などの受験をしていると思いますが、その結果はさまざまだと思います。

私も受験は何度も経験しましたが、いい思い出はありません。志望校にすべて合格した方も中にはいると思いますが、多くの方は志望校に合格ができなかった経験があると思います。

なぜ多くの人が合格という結果を手に入れられないのかといえば、時間の制約があることと、そして若い頃ですから精神的なプレッシャーの対処方法を知らないためです。

時間の制約がある中で努力して結果を出せるかどうかは、人の才能によるものですから如何ともしがたいのです。受験は、始める時期は本人や親の意向次第ですが、試験の日は万人共通で自分の意志で決定することができません。

つまり決められたことを決められた期限内に達成することが幼少から苦手な人は、よい結果を出せないことになるのです。

宿題を翌日の朝にきちんと提出できる子は、幼少のころから時間制約に慣れていて期限を設定されていてもプレッシャーを感じないタイプでしょう。

しかし私のように宿題もやらず、適当に学生生活を過ごした劣等生タイプの人間は、なかなか準備の大切さというものが分からないものです。

準備の努力をすればたいていのことは実現できる

人生いろんな経験を積みながら大人になると、「準備して努力をすれば、たいていのことは成し遂げられる」と知ることができます。

結論を言えば、準備はすべてを支配します。時間の制約さえなければ準備は十分にできますから、個人的にはどんな目標であっても、とんでもないことではない限りは成功するだろうな、と思います。

最近では、準備の心構えを説く人は非常に少ないことも、分かりやすいテクニカル分析に安易に走る人が多い原因だろうと思います。

ファンダメンタルズは、使い方を説明してもすぐには理解できませんが、テクニカルのRSIなど「80以上は売り、20以下は買い」これなら小学生でも理解できる分かりやすさですからね。

分かりやすいものが流行るということは、なんでもかんでも合理的にやろうとする傾向の表れだと思います。私は合理主義には一部賛成ですが、ほとんど反対の側の人間です。

なぜなら、若いころに難しいことを習得していれば、それは一生の宝となることも知っているからです。

例えば掛け算の九九、小学生のころに苦労して覚えました。掛け算ができて人生に損なことはありましたか?掛け算が分からなくて損した経験がある人もそんなにはいないでしょう。若いころの努力は一生ものの宝なのです。

基本を覚えずに儲けられることはあり得ない

基本を覚えて、それを合理的にこなすことについては大いに賛成なのですが、基本をすっ飛ばすことには反対です。最近は、一生懸命働くという基本をすっ飛ばして、本当に楽だけしてお金儲けができると信じている人がたくさんいるようです。

10年間、真面目に働いた結果が裕福な生活を生み出すのに、その10年間の努力をすっ飛ばしていきなり裕福な生活ができると考えている人が本当にいることが不思議です。

近所に金持ちがいたら聞いてみればいいと思います。期限内に約束したことをやる、ウソをつかない、周囲は常にピカピカに磨いておく、というような、小学生や幼稚園で習うようなことを、金持ちの人たちは完璧にこなしていると思います。

そうでない人は、まぐれで金持ちになっているだけで、何れ消えていくものです。

ですから準備の大切さ、基本を学ぶことの大切さを改めて重視して実行してから、相場に臨んでみてはいかがでしょうか。

また準備のほかに、初めの入り方も結果を左右する重要なものです。例えば最高値を買いでエントリーして、よい結果など生まれるでしょうか?

最高値を更新しない限りそのポジションは永遠にマイナスですから、エントリー失敗です。最高値で買うという決断をしたことがすでに「準備不足」なのです。

マーケットにエントリーした状態で、結果はほぼ決まります。最高値で買い、最安値で売る、ということをしないためには事前準備が非常に大切であり、必要なことなのです。

私は主にファンダメンタルズの優位性のお話していますが、この記事で述べたとおりエントリーに関してはテクニカルが優位であること、この重要性は忘れないでほしいと思います。