みなさんはFXでトレードをするとき、何が重要なのかを考えたことがあるでしょうか?この話は、何度もしていて恐縮なのですが、もう一度させていただければと思います。

例えばドル円が現在100円だとします。「この価格は高いですか?低いですか?」という質問をします。あなたはこの値段に対してどのようなイメージを持つでしょうか。

もしドル円相場に関する情報が一切なく、初めて真剣に考えた場合と仮定して、あなたはこの水準が割高か割安という判断を、どうやって下しますか?

…判断なんかできるわけありませんよね。提示された情報はただ一つ「100円」という値段です。それだけで判断するなんて、誰もできないと思います。

テクニカル分析は、この判断をしやすいようにするものです。100円という情報と一緒に、例えば過去20年の値段の推移のチャートを渡されて「さあ、どう判断しますか?買うか売るかで判断してください。」

これなら、テクニカル分析を知っている方であれば、テクニカルツールを付け加えてなんとか判断できますよね。

テクニカル以外の見方もぜひしてみてほしい

しかしそれで分析終了ではなく、テクニカル以外のこと、ファンダメンタルズ的な見方もぜひしてみてほしいと思います。

チャートは、1972年に変動為替相場に移行してから、ずっと円高です。

1972年以前は1ドル=360円でしたからね。現在は売られすぎと判断しますか?それともまだ円高になると判断して、さらに売りますか?

私は本サイトの中で何度も「日本の景気が良くなると円安、逆に悪くなれば円高になる」と言っています。ドル円相場には、こういった大きな「前提条件」があるのです。

テクニカル指標がいくら円安を示唆していたとしても、今後、日本経済が悪くなることがほぼ確実な状態から、果たして円安になるのでしょうか?

テクニカル分析が、エントリーのタイミングを見極めるために有効であることは、私も十分理解しています。しかし、今後の先行きに関しては全く不透明であると言えると思います。

なぜかというと、日本の景気が悪くなることが分かっているのに、大前提にそぐわない指標を出すことがよくあるからです。

テクニカルだけを信じて従う、という方はいつかどこかで大けがをすることになると思います。

株の例えで分かりやすく解説すると

為替だと分かりにくいのですが、分かりやすく説明するために株を例にお話しします。

株は、日本の景気や企業の業績がいいときに上がるものですよね。この真理はゆるぎなく、テクニカル分析でどのような結果が出たとしても、長期的には「株価は上がるものだ」ということを、誰でも認識することができると思います。

株式では、景気がどんどん低迷していくのに、株価は天井知らずに上昇する、というケースは過去にありません。

例外的にバブル経済の状況であればそういった現象もあり得るかもしれませんが、バブルも最終的には崩壊して、株価は暴落しますから、長期的には売りという判断になります。

大前提がないのに「円安」とはおかしい

たいていの方は「円安になるだろう」という認識だと思います。マスコミもその方向で扇動していますからね。しかし、そうなるための大前提は、達成されているのでしょうか?日本の景気はそれほど良くなっているのでしょうか?

あなたの実際の足元の生活はいかがでしょうか。景気ウォッチャー調査でも、7割以上の方は、景気がよくなっているとは感じていません。ほとんどが「現状維持」、残りは「悪化している」と感じています。

このような状況であるにもかかわらず、FX参加者の多くが、景気は良くなるとなぜか信じて「円安」と言っているわけです。明らかに矛盾していますよね。

何度も言いますが、円安になるためには、「日本の景気がよくなっている」という前提条件が必要です。

そして、さらに条件をきつくすると、日本の景気が「アメリカよりもよくなっているときに」円安になるのです。ドル円ですからアメリカとの比較です。日本の景気が悪くなっていても、アメリカがさらに悪い場合には、円安になります。でも、現在はそうではないですよね。

株のときは日本の景気が良くなっているということを前提条件にするのに、為替の場合は前提条件を重視しないのは、おかしいと思います。

テクニカル分析だけでは、大前提が見えない

FXで、大前提を無視して円安に向けたポジションを持つ方が多いこの状況は、何を意味しているのでしょうか。単純に、大前提のことなど全く考えていない、いわば勉強不足の方が圧倒的に多いということなのではないでしょうか。

ずっと「円安、円安」と叫んでいる一部アナリストもいますが、これはカジノのルーレットでずっと黒にだけ賭けるのと同じことであって、そりゃときには当たることもあるでしょう。

少なくとも、日本政府や官僚が円安になるように努力をしているのですから、いつかは円安になる日は来ると思います。

この努力が全く報われないことは、ないと思います。ただし、今政府がやっていることは目先の治療だけであって、根治を目指す方向の治療に匹敵する政策を行っているとは、とても思えないのです。

日本人であれば、日本がよくなってもらいたいと思うのは当然のことです。みなさんが生まれ故郷を好きだったり、この国を誇りに思ったりする感情は分かります。

しかし、良くなってほしいから円安に張る、というのでは、あまりにも感情に流されすぎています。全く論理的でもロジカルでもない、ということにお気づきでしょうか。

日本の景気がよくなっていないのに、平気で万年、円安、円安と叫ぶアナリストも、この感情に支配されていると思います。万年、円安方向にポジションをとる投資家も同様です。

私のように万年、円高と騒いでいる投資家もいますが、これは彼らとは異なって、しっかりと根拠があってのことです。実際の数字を見ても、経済指標を見ても、日本が良くなる見通しが少ない、と感じるのが根拠です。

このような話を聞いて、みなさんはどうお感じになるでしょうか?

感情に影響されて「円安」に張ってはいないか

初詣の祈願ではないのですから、自分の住んでいる国が良くなりますように、円安になりますように、という願望の感情で判断してはいないか、ポジションを持つときにはきちんとチェックをしてみてください。

そして、本当に現在の日本がよくなっていると感じるのであれば、そのときは円安に張ればいいと思います。その判断を私は尊重します。

判断の助けになるデータを差しあげます

この判断の助けになるデータを差しあげましょう。

アメリカのGDPは、1990年代から5倍成長しています。中国は10倍成長しています。

そして日本の成長は、1990年代のバブル崩壊から30年間、「ほぼ変わらず」という水準です。アベノミクスでわずかに、5パーセント程度成長しただけです。

アメリカ、中国と比べると、日本は全く成長をしていないのと一緒です。ゆえに「失われた20年」などと言われるのですね。

このことからも、本来のドル円の為替レートは、民主党政権時にあった70~80円台というのが、現在も妥当な水準であると私は判断します。今のドル円のレートなど割安すぎると思います。

現在の為替レートの水準は、アベノミクスや日本銀行の異次元緩和によって操作されている結果です。これを止めればすぐにでも元の木阿弥で、為替レートはアベノミクス以前の水準に戻りますし、株価も大暴落するでしょう。

これらのことを理解していないマスコミに対し、黒田総裁が出口論など議論をしないと言下に否定するのは、アベノミクスや異次元緩和を止めるわけには行かないからです。

為替やFXに取り組む姿勢の一番の基本とは、「こうなれば円安になる」「どうなれば円高になる」の基本の構図を見抜くために、考えることが非常に大事ということになります。

通説が本当に正しいかどうかも自分で考えよう

株や日経平均の場合は、「日本の景気が良くなったら買い、悪くなったら売り」という基準があります。FXの場合、「日本の景気が良くなったら円安」なのですが、一方で、「日本に財政破たんの懸念がある場合も円安」と言われています。

これは矛盾していますよね?財政悪化とは景気が悪くなって起こりますから、円安になどなりません。

東日本大震災後に、当時の野田首相が、「このままでは日本は、ギリシャ(の二の舞)になる可能性がある」と答弁しました。あの当時のドル円の為替レートは80円前後でした。

アベノミクスによって多少財政が改善をしたことを考えると、財政危機とは、円高になる要因であることは明確です。にもかかわらず未だに、「財政難、危機が起こると円安になる」と勘違いしている専門家が非常に多いです。

FXの学習の分野には、こういった専門家がたくさん混じっているため、円安と円高の大前提のロジカルな話が成立しなくなっているのです。

もう一度、話をすると、

ドル円相場の基本的な動きというのは

・円安になる場合には、日本の景気がいいとき
・円高になる場合には、日本の景気が悪いとき

この大前提について、ご自身できちんと論点を見極められるようにしておきましょう。

「お金」の価値とは、国の信用度

歴史を勉強すると、人間はどの文化であっても必ずお金に金、ゴールドを使っていることに気付くと思います。

金は、光輝く性質をもっている貴金属です。人間は自然に光るものが大好きな生き物です。鉱石の一種である金は天然であり自然に光輝くもの、これが人間が金に魅了される理由だと思います。

他の光り輝くものである火は、自分で点火しなければ光を放ちませんが、金のように自然発光するものは、人間は大好きです。

例えば日本では、古くからホタルという昆虫を特別視する傾向があります。大人も子供もホタルは大好きだと思います。昨今の昆虫が嫌いというような世の中で、ホタルも昆虫なのに、なぜあんなにもホタルを眺めるのかというと、自然に発光するからですよね。

つまり、自然に光るものが好きな人類にとって金は、永遠に価値を持ち続けるのです。価値のあるものだから、金銭にもなり得たのです。

一方、福沢諭吉さんの絵が描かれている1万円札は、何なの?と思いませんか?1万円札とは、よく考えれば単なる紙切れですが、日本人は価値があると思いこんでいます。つまり、福沢諭吉さんという偉い方は金と同じように、日本人にとって共通の価値がある人なのです。

単なる紙切れが価値あるものとされている理由は、発行元である日本政府や日本銀行にあります。紙幣は、日本政府の信用によって「価値があるものである」認識を共有しているだけなのです。

そして日本政府の信用とは、もし財政危機に陥り、破たんしたら消えてなくなってしまいます。このことを経済学では信用本位制度と言います。

財政危機になれば世界的にも信用がなくなり、円の価値は下がりますから、つまりは円高になります。FXは、お金を外国の通貨と売買する取引ですから、政府の信用は非常に重要なものなのです。

「政府の信用」とはどこからくるものか

政府の信用とは何が源泉にあるのかといえば、国の予算の執行です。国会議員の最大の仕事は、日本の予算を国会で決議することにあります。そして予算になる元は何かと言えば、私たちが支払う税金です。政府が信用されるためには、徴税能力があることがまず重要です。

少々脱線します。税務署が怖いと言う人がいますが、脱税すると政府の信用の源泉を脅かすことになるから、重罰を課されるのです。

しかし、一方で日本の脱税の手口は年々巧妙化しています。お金持ちほど海外に税金逃れのために海外に口座を作って送金していますよね。社会的な地位がある人たちが、節税と称して税金逃れをすることは、モラルハザードと言ってもよいでしょう。

国家を運営するために税金が必要だと認識しているのかどうなのか、節税と脱税に違いはあるのか、ほぼ同じであるのではないかと思います。

納税の義務は、小学校で習うと思います。個人的には、教える学校の先生たちが税金の意味をよく理解していないから、国全体に税金が重要である認識が伝わらないのかな、と思います。

話を戻します。国家は徴税によって成り立っているのですから、日本のように赤字国債を1972年から発行し続け、結果として国の債務が天文学的な数字になってしまうのでは、国会議員や政府、行政がたるんでいる、明らかに失政の結果ですね。

徴税を増やすと国家予算が潤う、そのためにどうすればいいのかというと、国の景気を上昇させればいいのです。ですから政府はさまざまな景気刺激策をやって、徴税額を増やそうとします。

日本は、徴税能力に関してはほぼ問題ないと思われますので、問題はどうやって税収を上げるか、どうやって景気を良くしていくかが焦点になってきます。

景気、経済成長の拡大を測れる経済指標がGDP

景気が拡大しているか否かを判断する経済指標はGDP、国民総生産です。この金額の上下で成長する/しないと判断できます。「日本の経済成長」はイコール「GDPの増額」です。

例えば「プラス成長」と言えば、GDPの総額がプラスであることを意味します。

GDPは、経済指標としてグローバルスタンダードです。世界の国の豊かさのランキングも、GDP総額のランキングで、1位アメリカ、2位中国、3位日本、となっています。

このように考えていくと、為替相場もGDP次第と言う理論が、なんとなく理解できると思います。

国の信用によって守られる財産、税金は保証料

お金の価値の話に戻ります。

ただの紙切れにすぎない紙幣に価値があるのは、日本政府や日本銀行が信用に基づいて発行をしているからであって、信用とは日本政府の予算が執行されていることで生まれます。その紙幣、また不動産なども、財産として守られることが法律で決まっています。

お金を盗まれたら、盗った泥棒は、国家が運営する警察が捕まえてくれます。不動産の所有権の権利を保証してくれるのも日本政府です。このように、財産を守ることができるのが日本政府です。

あなたの財産を保証すると言っている日本政府に対して、税金という名目で保証料を支払うことが、国民の義務とされています。これは小学校で習っているはずです。

保証料を払わない人が多かったら、財産を守ってくれる日本政府がなくなることを意味し、世の中は荒れ狂うでしょう。だから税金を払わなければならないのです。

日本人は、税金を「取られる」意識が強すぎると思います。税金はあなたの生活を守るための礎であり、決してむしり取られるようなものではありません。

財産を他人に盗られる感覚で税金を支払っている方も多いと思いますが、あなたの財産を守ってくれる保証料である、と考えれば、少し気持ちよく払えるようになるのではないでしょうか。

あなたが将来、FXで莫大な利益を上げた場合にも、日本政府が財産を保証してくれたから儲けられたと考えて、心よく払うのが筋なのです。儲けを盗られる意識でトレードしても、儲かることはないと個人的には思います。

みなさんが安心してお金を稼ぐことが国の発展につながり、景気が上昇し、税収も拡大することになるのです。そしてこの税収の基本の数字がGDPです。

国のお金の世界的な価値は、GDPの金額によって決まってきます。「国民総生産」の生産とは、稼ぎ出すお金のことです。その国に居住している人たちが、年間いくらのお金を稼ぎ出すかによって、彼らの生活を保護する政府の能力も分かってくると思います。

グローバルスタンダードであるGDPを使って、世界的なお金の価値、例えば日本人ならば円の価値を、アメリカ人であればドルの価値を決めていこう、これが為替相場の変動である、円安や円高の話になってくるのです。

クロスレートの表記は分かりづらい

円安や円高の話が理解しづらい理由のひとつには、クロスレートであることがあります。一言で言うと「ドル円」ではなく「円ドル」だったらもっと分かりやすかっただろう、という意味です。

チャートを見れば上昇しているのに、言葉の表現では円「安」。でもお金の価値としては上がっているという…ここまでだけでも、充分混乱します。

このクロスレートが日本人の円安、円高の概念と理解度をおかしくしていると思います。

景気が良くなると円安になるという概念と理由を、自信を持ってロジカルに説明できる方は、FXをやっている人の中に何人いるでしょうか。「みんながそう言っているから」ではなく、自分の言葉で説明できることが重要です。

しかしクロスレートの表記は、1ドル=360円の頃からのもので、今さら1円=0.008ドルとしてもかえって分かりづらくなりますよね。言いにくし書きにくいから変えないのだと思います。

アジア各国は、このような表記になっていることが多いです。欧米などでもカナダなどはドルカナダと表記しますし、スイスもドルスイスですよね。

このようなクロスレートで表示されている国の為替への理解は相当難しく、混乱しがちになります。しかも、間違った概念や考え方がさも正しいことように、たくさん飛び交っています。

つまり私たちは、為替変動が起こる明確な定義も理解せず、基準値がなければ割安か割高の判断もつかないような状態で、FX取引を行っているのです!

為替相場をロジカルに分析できるようになろう

私の場合は、バフェット氏のような証券分析論によって、為替レートもロジカルな理論構築を考えていますので、定義は非常に大事なことだと思うのです。

・どうなったら円安になるか
・どうなったら円高になるか
・その基準値は?

この3点の定義が最も重要で、ここがあいまいなままではファンダメンタルズの計算はできません。

逆にいえば、この計算をすることによって、円安、円高になった原因を割り出すことができますし、また、基準値を計算することによってそれがいかに大切なものであるかを思い知ることになると思います。

世の中、ハウツーものの本が極端に売れる状態ですが、気を付けたいことがあります。こういったハウツーものにはたいてい、「こうすれば簡単にできる」と詳細は書かれているのですが、そのやり方がほんの少しでもずれると、結果が全く出なくなります。

真似してやる人には結果が出ない、やり方がずれてしまう理由は簡単で、真似してやる人はそもそもの基本を押さえていないからです。何が重要かを知らないため、機能しなくなる原因にも気付かないのです。

言葉を1週間でマスターする赤ちゃんがいないように、手っ取り早く結果が出るなんてことはありえないのに、なぜ人間は、手っ取り早い結果を求めてしまうのでしょうね。

最近はAIの誕生とともに、そんなことも可能になるような錯覚を起こしやすくもなっています。機械にはできるのかもしれませんが、人間にはそんなことは不可能です。でも機械も、元は人間が作ったものであることも忘れてはいけないでしょう。

というようなことを覚えておくと、あなたの人生にいつかきっと役立つのではないかと思います。