下記は、日本とアメリカの消費者物価指数のグラフです。
消費者物価とは、みなさんがスーパーやコンビニなどでみるモノの値段のことです。
この値段には、「サービス」の価格も含まれています。他の例では、ディズニーランドの入場料なども「サービス」の価格を支払っていることになります。
消費者物価指数とは要するに、日本で売られているサービスを含めたモノの物価の、平均価格が年で何パーセント上昇しているかの指標です。
オイルショックから実際の物価上昇までの期間
日本で「オイルショック」が起こった際に物価が高騰したことは、みなさん実際に経験をしたり学校で習ったりしたことでご存知だと思います。オイルショックは2度起こっており、第一次は1973年、第二次は1979年です。
ここで「卸売物価指数」のグラフを見て注目していただきたいのですが、実際に物価が上昇のピークに達したのは、いずれも数年後であることです。オイルショックの影響が物価に顕著に表れるのは、1~3年後になっています。
企業が工場から出荷した際の製品価格を卸売物価といいますが、卸売物価指数は通常、消費者物価の変化よりも早く指標に表れるはずのものです。
しかし物価指数は指標の中でも先行指標ではなく、一致指数に分類されます。その理由がこのグラフを見れば分かると思います。オイルショックというイベントの影響が実際に表れたのが2年後以降と、遅延しているからです。
ただ、これだけ反応が遅いのも珍しく、近年ではかなり、物価の上昇や下落が値段に織りこまれるようになっています。
なお、「別の記事」でもご紹介しましたが、日本では物価指数の調査方法が変更された関係で、「卸売物価指数」の名称が「企業物価指数」と変わっています。企業物価指数は毎月、15日前後に日銀から発表されています。
物価指数の変遷 アメリカと日本
アメリカの卸売物価指数は、黄金の1960年代には全く上がらず、1972年前後から上昇し始めています。これはこの時期、アメリカで極端なインフレが発生したためです。
通常、インフレの際には通貨安が示現するものですが、アメリカでは金利も高いうえに通貨も高い状態で、1985年までは卸売物価も消費者物価も毎年のように上昇していました。
そして1985年のプラザ合意によってアメリカドルは売られて安くなり、代わりに他国の通貨は高くなりました。アメリカの物価の上昇、特に卸売物価の上昇も止まったことは、プラザ合意効果といっても過言ではないでしょう。
近年の消費者物価はというと、リーマンショックのときに日米双方の物価は落ち込みました。
アメリカはこの危機を上手に脱出できたことが鮮明に分かりますが、日本は大きく失敗をしています。さらに数年後、日本では東日本大震災が起こりました。このことで日本の景気はさらに悪化し、財政破綻の懸念も出てきたのですが、アベノミクスによってかろうじて息を吹き返しています。
ここで覚えておいてほしいのは、アメリカの場合、自然災害やテロの直後には復興需要によって景気が持ち直し、事件が起こる前の状態よりも景気が良くなることです。
リーマンショックのような大不況や、9.11のなどのテロのあとがそうでした。今年のハリケーン・イルマのアメリカ本土直撃も、復興需要によって景気は持ち直すと予想されます。
日本の場合、リーマンショックや東日本大震災の後も復興需要はなく、全くと言ってよいほど景気の回復はありませんでした。
アベノミクスによる経済支援によってやっと再生した状況です。つまり、日本の景気の悪さはそれだけ重症であると言えます。ちょっとやそっとの治療では改善しないため、異次元緩和という特大のカンフル剤を打って、不景気を突破する必要がありました。
なぜ日本は、素早く景気回復できないのか
なぜ日本はアメリカのように復興できないのか、なかなか景気が回復しないのかと言えば非常に簡単な話で、国に構造的な問題があるからです。具体的に言うと、日本の少子高齢化からくる増税と借金の多さです。
復興をするために政府は通常、減税をするべきなのですが、日本は逆で増税しています。
FXで確定申告をしていた方はわかると思いますが、申告分離課税か総合課税の累進課税でたっぷり所得税と住民税を徴収されたうえに、復興税も取られるのです。
復興のためには、こういった税金は一時的にでも免除されるべきところ、そこまで課税をするというところに、日本の病の深刻さがあります。
景気がよくなろうがなるまいが、変わらず国会議員による税金の無駄使いが横行しています。これだけの財政難の中で、議員は頻繁にスキャンダルなど起こしている場合ではないと思います。
参考までにアメリカの議員は、国会議員を辞めても生活に困るような人はいません。日本は、根本的に議員にふさわしいかどうか大きく疑問の方々も多くいて、みなさん議員バッジにしがみついています。
テレビ出演で稼げなくなった人が国会議員になれるという仕組みが疑問なのです。このような方々に運営されている日本ですから、借金などなくなるわけがないでしょう。
財政難なら、予算を決める国会議員のお給料を真っ先に見直すべきであると、私は思います。私がよく言う「蜃気楼」とは、外側の見栄えだけよくても中身が全く伴っていないことを指摘しています。
日本の景気は、アベノミクスがもし金融緩和を止めたとしたら、そのまま物価は反落し、株や為替ももう、どうしようもない状態になるでしょう。
物価指数はGDPを予測できる重要指標
消費者物価指数とドル建ての名目GDPを並べるとよくわかりますが、日本もアメリカも、GDPは消費者物価指数の形とそっくりです。
つまり、GDPの成長を細かく測るためには、消費者物価指数を見るとよい、これがセオリーとも言えることになるでしょう。GDPは3か月に一度しか発表されませんが、消費者物価指数は日米ともに、1か月に一度発表されます。
参考までに、アメリカのGDPは毎月発表をされますが、これは内訳が「速報値」「改定値」「確定値」の3種類あるからです。日本も以前は、同じ方式で発表されていましたが、現在は一次速報と二次速報のみで、三次の発表は廃止されています。
為替相場を検証するためのGDPは、GDPそのものでなくても、物価の指標である消費者物価指数でだいたいの値の判断はできるのです。
なおここで「物価」と記したのは、消費者物価の先行指数はアメリカでは卸売物価指数(PPI)と言い、日本では企業物価指数であるからです。
また消費者物価指数は、別名インフレ指数とも言わます。物価が上昇することをインフレと言うからです。合わせてぜひ覚えておきましょう。