今回はまずは今一度、アメリカと日本の名目GDPをご覧いただきたいと思います。

アメリカが1960年から一貫して成長路線を辿っているのに対し、日本の成長は1995年までです。

アメリカの成長の詳細を分析していくと、1975年から角度が鋭く上昇していることが分かります。この背景にはレーガン大統領のレーガノミクスの効果があり、そのおかげで成長にも加速がついた結果になります。

1970年代以降のアメリカ大統領の中で、もっとも尊敬されているのがレーガン大統領である理由も分かる気がします。

彼は、元はB級俳優だったのですが、強烈な共産嫌いでアメリカの自由を愛した結果、ソ連を崩壊させた(勝手にソ連が転んだこともありますが)、そして東西冷戦を終わらせた偉大な大統領として、アメリカの歴史に名前を刻んでいるのです。

そして、このレーガン氏を愛してやまない大統領が今年、アメリカで誕生しました。トランプ氏です。彼はレーガン元大統領がやったことを模倣するでしょう。

レーガン氏を知ればトランプ氏の行動も読める

私が誰よりも早く、アメリカと北朝鮮のリスクがあることに気付いたのには、レーガン大統領の時代にどんなことがあったのかを分析したためです。

レーガン政権発足当初、大統領の支持率は当時の過去最低を記録していました。そして彼は、支持率回復のために中南米にアメリカ軍を出動させたのです。戦前予想でも軍事的に圧勝でした。

当時のアメリカは景気が悪いうえに、インフレが起こるという最悪の景気循環の中にあったのですが、このグレナダ侵攻が成功裏に終わったことで、アメリカ人が「強いアメリカ」に希望をもったことが、レーガン政権の支持につながったのです。

今の大統領も、支持率がどうにもならなかったときにはどこかに攻撃を仕掛けるでしょう。4月にはシリアに攻撃し、そして、北朝鮮やイランへの軍事的攻撃を示唆しています。

また彼は、イスラエルの首都をエルサレムに認定して中東とヨーロッパを敵に回し、ドイツには経済戦争を仕掛けています。

これについては、私はあまり詳しくありませんが、トランプ大統領が政権に就いている間にメルケル氏と仲直りすることは、よほどのことがない限りないと思います。

なお、トランプ氏が「北朝鮮の金総書記と友達になれるのかもしれない」発言したときの金書記の容姿に関する発言は、単なる軽口でしょう。

アメリカ経済が好調で、支持率も回復する見込みだから、当分戦争を仕掛けるつもりはなくだからこそ、あのような発言をしたのだと思います。

北朝鮮は軽口とは受け取らずに、またICBMを打ち上げて挑発していますが、アメリカは沈黙を守っていることからも分かります。

1992年の湾岸戦争の開戦は1/17でした。今は2017年の年末ですが、アメリカ軍の作戦は秋の終わりから冬にかけて起こす可能性が高い過去があるため、年末の今も緊張が走っているのです。

軍事関係者によると、冬になる前が一番戦争を仕掛けやすいとのことですが、1992年の湾岸戦争は、中東のクェートでしたから冬がありません。ほぼ砂漠で雪など降らないでしょうから、1月に作戦を決行したのでしょう。

北朝鮮の場合、1月などは雪の中に埋もれていますので、そこで戦争を仕掛けてもアメリカ軍の兵士が苦労するだけです。

エルサレムの首都認定では、ヨーロッパ各国から反発を招いています。これに関しては、もしアメリカが北朝鮮と国連軍として戦うのであれば、エルサレムの首都認定を12月に行うはずはないと思います。攻撃の予定があるのであれば、NATOの協力も得たいでしょうから、発表時期をずらしたでしょう。

つまり、あの首都認定の宣言があったことで、アメリカが北朝鮮へ攻撃する可能性は、この冬にはない、と個人的にはみています。

ただでさえNATOに、もっと出資せよ、と強気の外交を行っている状態ですから、北朝鮮がいくら無謀な行為をしているとはいえ、北朝鮮制圧のための軍隊をNATOがアメリカに出すとは思えません。

トランプ大統領は、少なくとも筋は通っている

トランプ氏は、一般的には無法者の大統領として認知されていますが、やっていることはすべて理論的で実践に適っています。

ただしやり方があまりにも唐突であるためメディアも先を読みにくいし、ツイッターでの発言には下品なものが多いため、上品な人からは全く支持されていないのです。

ただ、トランプ氏はアメリカの名門私立大学「アイビーリーグ」の1校であるペンシルバニア大学を卒業していますから、頭の良さは折り紙付きです。

銭勘定やビジネスセンスも一般の人の数倍上を行くことを考えると、好きにはなれない人だけど能力は高い、と評価するべきでしょう。

トランプ氏の今までの政策の出し方やパフォーマンスなどは、思いつきでやってはいるのですが、そこには少なくとも「アメリカをよくするんだ」という筋が、きっちり通っているように思います。

前大統領のオバマ氏は、確かにリベラルとして理想の社会を目指した素晴らしい大統領と思いますが、現実に稼げない多くの白人労働者からすれば、カッコつけやがって、と思われてしまうのは当然とも思えます。

ある程度の稼ぎがある人はリベラルを支持し、そして稼げない人は共和党を支持する、というのがアメリカの構図です。アメリカ社会の分断とは、保守とリベラルの対立が鮮明になっただけなのです。

レーガン氏は、共産主義に対抗することで政策を実現をしましたが、トランプ氏はアメリカ人に夢を与えるために頑張っているような気がします。

「トランプとレーガンは全く違う」という意見もたくさんあるとは思いますが、結果としては、おそらくトランプ氏は第2のレーガン氏になるだろうと考えています。

ここまで1年やってきて、筋が通っているからそれなりの成果が出るのであって、本当に思いつきでやっていればこんな結果にはなりません。

人を小ばかにしたような発言をすることで、そのたびに知性への評価が下がってしまいますが、実際は成果が出ていることは評価できると思います。

アメリカは、この先どんどん成長する

さて、名目GDPの話に戻りますが、トランプ大統領は成果を出しているうえに、アメリカの人口は増える、人口構成比もまともになってきている、世界は変わらず成長している、そしてレーガン氏がやったことをなぞろうとしている、などなどを考えると、この名目GDPがここから、急に横向きになったり下向きになったりする可能性は低いと言えると思います。

むしろ成長が加速する、グラフの角度が鋭くなって上に伸びていく可能性の方がずっと高いと思います。

日本の安倍政権の政策は成果が出ていない

日本は、安倍首相がアベノミクスを行い、日本銀行は異次元緩和を行っています。その結果はというと、日本の国力であるGDPが、名目では、始めた年の2013年から下がっています。

円建てのGDPで見れば少しずつ上昇してはいますが、「モノづくり日本」を標榜するからには、ドル建てのGDPを伸ばさないことには、成果が出ているとは言えないでしょう。

「モノづくり日本」とは、メイド・イン・ジャパンのものを世界の人に買ってもらうためにやっているものです。しかしドル建ての成長が止まっていたら、大量の注文を出そうとしている外国人は、注文を思いとどまってしまうと思います。

例えば、原子力発電所のように、建設から稼働まで何年もかかるような案件の場合、このグラフを見たら、本当に大丈夫なのか?と躊躇する要因になると思います。

トランプ氏が提言する「アメリカ・ファースト」とは、アメリカ人の誰もが望むことだと思いますが、安倍さんのやりたい三本の矢はどうも国民に理解が浸透しておらず、いまだに有効な成長戦略を描けないような状況です。

私からしてみれば、安倍さんのやりたいことは憲法改正だけなのでは?という疑念を生み、その憲法改正は国民がもろ手をあげて賛成をするものではない、と思います。だから安倍政権は筋が通っていない、と感じるのです。

トランプ氏は筋が通っているので成功する可能性が高いのですが、安倍首相は「日本の輝きを取り戻したい」と言うばかりで政策は具体的には何もありません。オリンピックの招致などはお金を使うばかりで、効果が出るのかどうかは、昨今の五輪をみていれば明らかです。

民間の力をうまく活用する方法にしても、企業は政府の方針を全く無視しているような状態で、減税してあげても余計に言うことを聞かなくなる、悪いスパイラルに陥っているように感じます。

日本のGDPは、この先横向きのままか、下向きの可能性になるほうがはるかに高いと、グラフを見て感じませんか?私はそうなる根拠の話ばかり書いていますが、みなさんも日本のグラフを見て、この青い線の将来がどうなるかをご自身で感じてみてください。

このグラフにラインを引くとすると、短期線なら下向き、長期線は辛うじて上向きですが、トレンドはどんどん弱体化しているようにしか見えません。

ここから立ち上がるとすれば、強烈に長い大陽線が必要なのですが、起爆剤ある気はしません。つまりこの停滞は、個人的には三本の矢の三本目の矢、成長戦略を描けないというところからきているのだろうな、と思うのです。

長期的に見ても、「アメリカ>日本」という不等号になる理由がよく分かりますよね。

そして何度も言いますが、「アメリカ>日本のときは、円高になる」のです。

アメリカ>日本は、円高

金利も、物価も、成長率も、雇用も、企業も、家計も、政府の借金も、その実行力も「アメリカ>日本」だと思いませんか?

これだけの材料を提示、これでも円安だと思う方がいれば仕方がありませんが、どこをどうみてもアメリカ>日本なのですから、円高でしょう。

短い期間では日本>アメリカになる場合もあるでしょうけれど、長い目でみれば圧倒的にアメリカ>日本でしょう。

円安のとき、本当に必ずドル高なのか?

毎日のニュースを聞いていると、「現在の為替相場は1ドル〇円で、昨日よりも〇円〇銭の『円安ドル高』」や、「昨日よりも〇円〇銭の『円高ドル安』」との声が流れてきます。

ドル高であれば円安である、そして円高であればドル安である、というフレーズはセットになっているように感じてしまいますが、真剣に考えていくと、これは本当に正しいのか?という疑問が出てきます。

「アメリカと日本の比較」でなければ、ドル高のときに円高、円安のときに同時にドル安であるということも、実際には起こっていると思います。

景気の良し悪しと、通貨の高い低いの真実とは

私は今まで「アメリカ>日本」であればドル円レートは円高になると言ってきました。まずはここから考えていきましょう。

「アメリカ>日本」の図式の意味は、アメリカの景気の方が、日本の景気よりも良いということです。アメリカの景気が良いということは通貨のドルが高いということになります。そして相対的に日本の景気は悪く、円の価値が下がります。

ここで混乱しやすいので要注意です!円の価値が下がるのが「円高」でしたよね。「円安」ではありません。

みなさんが一般的なニュースで聞き慣れているフレーズは常に、「ドル高であれば円安」「ドル安であれば円高」と刷り込まれていますが、実は、ドルの景気が良ければ、日本の景気は相対的に悪くなるので「円高」になるのです。

これが普通に起こっている現実なのです。

ニュースで流れる「円安ドル高」「円高ドル安」とは、2つの通貨を比較した相対的表現としては非常に正しいのですが、本質的には間違っていることになります。

この「相対」的とは為替特有のもので、株式の価格は「絶対」値です。相対値と絶対値の考え方については「別の記事」で詳しく説明していますのでぜひご覧ください。

とにかく、ドル円レートの本質とは、アメリカと日本の経済格差の数値であり、比較対象として両国の通貨で表したものです。

比較の場合は一方が高ければ一方は安い、で正しい表現ですよね。でも実質とは異なるので、混乱しますね。でも大事なことなので、しっかり覚えておきましょう。

ものすごく長い年月をかけて「ドルが高ければ、円は安い」という刷り込みが行われてきているわけですが、この話は実際のところ、景気の良し悪しとはイコールではないのです。

日本の景気が、全世界比べても比較的に良くても、アメリカより悪ければ、「ドル円相場上においては、日本の景気は悪い」と表現されます。「アメリカよりも悪い」という形容詞が抜けてしまい、単に「日本の景気は悪い」と認識されてしまいます。日本語も難しいものですね。

比較しなければ「良くも悪くもない」日本の景気

現在のアメリカ経済は、絶好調と言ってもよいと思います。ただし目先の、企業の設備投資や賃金の上昇などを考えると、年明け以降は下押す可能性が高いと思います。

日本経済を他国と比較なしに単体で考えた場合、2017年7月~9月期には、名目で年率3.2パーセント成長をしています。実質でも2.5パーセント成長していますから、悪くはない数字です。カラクリを書いてしまうと、去年が悪すぎたから、大きな数字が出ているだけなのですが…。

なお、前期比の場合は0.6とか0.8という平凡な数字になり、「よくもないし悪くもない」です。しかしここでアメリカと比較すると、成長しているとは言えなくなります。

参考までに、アメリカのGDPは前期比で3.3パーセントの成長ですが、これは年率ではありません。そして、日本のGDPの名目が前期比で0.8パーセント。「アメリカ3.3>日本0.8」ですから、誰の目から見ても、相対的に「日本の景気が悪い」と判断されることになると思います。

あくまでも仮の例ですが、日本の年率の3.2という数字がもし前期比の数字であったのなら、「アメリカ3.3>日本3.2」になり、この数字であれば「アメリカの景気もいいが、日本も景気がいい」という判断になります。

景気拡大の目安を「GDP成長率3パーセント以上」と定義した場合、日本とアメリカの成長率の差がさほどなく、どちらも数字的には変わらない、という状態になれば、どちらの景気が悪く、どちらが良いと定義する必要がありません。「どちらも景気が良い」でいいことになります。

「アメリカも強い、日本も強い」と円安ドル高

これを為替相場で考えると、日本は景気がいいのだから円安、アメリカも景気がいいのだからドル高、この状態では確かに「円安ドル高」ですね。

1972年に変動為替相場に移行したとき、日本は景気が良かったのですが、このときはドルを買ってもよかったし、円安方向のポジションをとってもよかったのです。

どちらかを選ぶのかは、その人の価値観と判断次第で、価格差がほとんどない場合は、人の志向が運命を決定づけることになります。

1972年から1995年までの日本経済は、途中にオイルショックなどの挫折はありましたが、急成長しました。

その過程にあったので、アメリカも強ければ日本も強い、つまりは円安ドル高になっていたのです。一方、今の日本は「アメリカ3.3>日本0.8」に代表されるように、アメリカと比べれば圧倒的に景気が悪いです。

アメリカは景気が良いから「ドル高」、日本は景気が悪いから「円高」であることは、この数字を見れば一目瞭然なのですが、世の中には景気指標の見方が分からない人がほとんどで、マスコミの報道で「景気がよい」なら「円安」だと思っている人がほとんどです。

ドル高のときには円高になるケースが多い

ドル高のときに、自動的に円安とは必ずしもならないこと、理解していていただけたでしょうか?

ドル高円安になるときの条件は、日本もアメリカも景気が拡大していることです。この条件のときのみ、「円高ドル安」「ドル安円高」になるのです。

例えば、景気の拡大の定義をGDP3パーセント以上の成長と仮定すると、日本とアメリカがどちらも前年に比べて3パーセント以上、成長していることです。

現状は「アメリカ3.3>日本0.8」との数字が出ていて、日本は景気が悪い、アメリカは景気が良い状態です。景気が良いアメリカがドル高になるのは必然で、比較対象である日本は、相対的に景気が悪いのですから円高なのです。

その結果、ドルは買われる可能性があってますますドル高になりますが、日本は景気が悪いので円高になる。つまり、現象としてはドル高、円高になるケースが非常に多いのです。

リスク回避の円高は、日本が信用されているのではない

よく「リスク回避の円高」と言いますが、日本円は割安すぎるからリスク回避で円高、も良い説明だと思いますが、実際には、日本の景気がより一層悪くなるから円高になるだけなのです。

先進国の中で、1995年から20年も景気が停滞しているのは日本だけだから円高になるのです。

ユーロも似たようなもの、と感じる方も多いと思いますが、ご存じのようにユーロ多国籍企業みたいなもので、それぞれの国家に特徴があります。

詳細に分析すると、ユーロ各国もほとんど成長はしていないのですが、国ごとの特徴それぞれを分析していくよりは、日本のほうが分析は楽ですよね。そういった意味もあって、日本はリスク回避時に円高になりやすいのです。

なお、アメリカが関与しないでどこかで戦争が起これば、日本は見向きもされずにドルが買われてドル高になるでしょう。相対的にユーロは安くなるのです。

アメリカが当時国の場合は別ですが、リスク回避の通貨としては通常ドルが買われ、アメリカが当時国の場合には、永世中立国であるスイスが買われる傾向があります。

ただ、アメリカが当時国であってもなくても円は買われる、つまり円高になります。このときの買われ方は、投資家が財産を保全する目的でアメリカやスイスを買うのとは異なり、どちらかというと株式の「空売り」と同じ概念です。

リスク回避時に、日本が信用されているから円が買われるという報道は、誤りであること、理解できたでしょうか?そもそも円高は、日本の景気が悪いことを意味しますので、世界の投資家が円を信用して買うわけがありません。

これまでも、世界の景気が悪くなると日本経済の落ち込みが一番激しくなっていたことを投資家は知っていて、だから円を空売りするのです。

その証拠にリーマンショックが起こったとき、日本の庶民には一切関係がないにもかかわらず、日本円は叩き売られました。

どの経済指標の数値も、よくなっていない日本

私は来年早々中国が悪くなると予想していますし、アメリカも好景気循環の中で、景気の下押しする場面だと思っています。

しかしアナリストは一様にこの年末、株価が25000円を突破すると言っています。私は行くわけないと思います。

景気の実感としては、株価が上昇をしたので良いと感じますが、日本全体の数字は悪いまま、でよくなった経済指標なんて一つもありません。

よくなったのは、日銀短観などの景況感調査など、人へのアンケート調査の結果のみです。

人間は、前が悪すぎると通常の景気上昇場面だとしても、実際より数倍よくなったと感じるものです。2016年のGDPの名目や企業物価の結果が悪すぎるから、良くなったと感じているだけです。

そういう意味では株価も景況感調査と一緒のことで、何の背景もなく上昇しているのですから、バブルと言っても過言ではないのです。そのバブルが過熱をすれば3万円も夢でもありませんが、その前にやりすぎたと感じるのが日本人です。

「日経平均が3万円になる」と言った人はオーナーからの命令で、デフレマインド脱却のために日銀から頼まれてやっただけのことでしょう。

為替は相対値。どこかの通貨は安くなっている

もう一つ、為替が相対値であるということは、もう理解されたと思います。

ドル高や円高になったときには、どこかに安い通貨が存在するのであり、それはユーロだったり中国人民元だったりするのです。その関連性もいつかお話しできればと思います。