今回は、「信用力」についてのお話をしたいと思います。世界経済を震撼させた「リーマンショック」は、そもそもなぜ起こったのでしょうか?

簡単にまとめてみます。大元の原因は、信用力のない低所得者層までに住宅ローンを契約させたことです。景気が失速したため彼らはローンを返済できなくなりました。

そのせいで、この住宅ローンの運営に多額の出資をしていた大手証券会社のリーマンブラザーズが倒産しました。その結果、世界を巻き込むあのような崩落を引き起こしたのです。

リーマンショック前のアメリカ経済は?

リーマンショック前の時期に、アメリカでは何が起こっていたのでしょう?

借りたお金を返せない可能性が高い低所得者層までがお金を借りて住宅を購入できるほど、彼らの「信用力」が格段に上昇していたことが挙げられます。

低景気が上向きであったし、住宅価格も上昇していたため、ローン返済に充てるお金がなくなったとしても住宅を売れば返済に充当できる見込みがあった、だから誰でも住宅ローンの契約を許されたと言われています。

この流れで、低所得者層には「信用力」がつきました。信用力をつけたことで借金する人が増え、この借金が住宅産業の活性という経済の大きな循環を生み出し、アメリカの景気を支えていたことになります。

なお、住宅産業が経済に与える影響については、「中古住宅販売件数」「新設住宅着工戸数」の記事でも話題にしています。ぜひ読んでみてください。

信用力が誤って評価された結果はどうなったか

なお借金は、してよい性質のものとそうでないものがあることを別の記事でもしました。

繰り返しになりますが、してもよい借金は、「借金することによって別なところで新たなお金を生み出せる」類のものです。返済の目途がついているのなら、銀行もお金を貸してよいと判断できるでしょう。

アメリカの住宅ローン「サブプライムローン」はあいにく、借りた人がお金を生み出せる類の借金ではありませんでした。住宅の購入は「消費」に分類されます。

返済の目途が立つかどうかの観点で考えれば、確信などなく景気動向頼りだっただけ。本来は相当裕福な人にしか貸してはいけない性質のお金だったのです。

景気が低迷すればお給料が減少します。そもそも、それほどたくさんのお給料をもらえる人たちではなかったのに、家を購入してしまった、家はお金を生み出せないこと、返済が滞る可能性には気づいていない。しかしこれがリーマンショック前の景気だったのです。

景気が腰折れし、ローン返済が滞ったことで彼らが購入した住宅は差し押さえられてしまいました。しかし差し押さえた住宅も、価格が下落したため返済額には満たなかったのです。

彼らは家を取り上げられただけでなく、多額の借金まで背負うことになってしまいました。

借金させることで好景気循環が生まれるならOK?

アメリカの例は借金まみれの経済です。これは良いことなのか?と疑問に感じる方も多いと思います。経済学では借金すること、信用力を「クレジット」と言います。

ちなみに識者や学者によると、このクレジットの部分が、今の経済学で最も研究が足りない分野であると言われます。

アメリカの例でも分かるとおり、借金によって一時期、好景気循環が生まれることはあります。

しかし景気が失速し始めれば崩壊もあっという間です。

借金して買ったものがお金を生み出すものではなかったからです。これもリーマンショックが発生した一因ですね。

CAOとは?信用力を測れる新しい指標

CAOは日本語では「信用力オシレーター」と呼ばれています。リーマンショックの後に開発された歴史の新しい指標で、民間の研究機関により発表されています。

借金の信用力がどのくらいあるのかを測るバロメーターになっていて、CAOが上がると、信用が上がって借金しやすくなることを意味します。

リーマンショックでは発生の原因から崩壊まで、信用力が過剰に評価され、過剰に暴落しました。

CAOは、この教訓から信用力調査の標準となることをめざして作られたものです。調査方法や何のデータを使っているかは非公表ですが、景気循環動態を測れる新たな指標として注目されています。

現在アメリカ経済は、リーマンショックからも立ち直って絶好調と言われます。好景気循環の一因は、日本の少子高齢化とは異なり、若年層の労働者が増え続けていることにあります。

どこの国の若年層もお金は持っていませんが、老齢の人たちと比べると時間的な余裕と将来の可能性は大きいです。今後、アメリカの人口は増えていくのですから、住宅需要も増えていくでしょう。

しかし住宅は借金してローンを組んで購入をするものですから、返済の見込みが薄い層にお金を貸し込んで結果、再びリーマンショックのような経済危機が発生する可能性も、全くないわけではありません。

CAOオシレーターには、あのようなことが二度と起こらないように、普段から信用力の動向を監視しようという意味合いもあります。

そもそもこのCAOオシレーターの開発は、「住宅ローンの借り換え需要がなかったら経済はどうなるだろうか?」という研究から始まったものです。その研究の途中に起こったのが、リーマンショックでした。

家計が原因のバブル崩壊は今後も要注意

リーマンショックは別名、「信用バブル」ともいいます。この言葉をさらに簡単に言い換えると「借金バブル」です。

昨今日本のメディアは、借金に関する話題をかなりの頻度で取り上げています。借金、クレジットの残高が増大すればするほど、家計も企業も支出の金額が減ることになり、それが景気後退の一因となることが考えられるためです。

これまでの景気後退は、主には「企業」の投資や支出の減少によってもたらされたものでした。

景気後退の理由はさまざまありますが、リーマンショックは「家計」が原因のバブル崩壊でした。人類史上初めて、家計の債務によって景気が後退したため、あれだけの大きな規模でマーケットが崩落したのです。

この先、景気が後退する局面を迎えた場合は、その源泉は「政府」なのか「企業」なのか、それとも「家計」なのかを十分に分析し、判断しなければならないでしょう。「家計」が原因ならば特に要注意であること、もうお分かりですね。

消費のための借金は今後規制される可能性あり

日本の銀行カードローンなどの無担保ローン、アメリカの自動車ローン、世界の政府債務の問題などは必ず、過去の経済危機の背景をもとに規制が引かれていくことになるでしょう。

日本政府のように無駄に債務が多い国とその家計、企業は、規制の対象になっていくことは確実だと思います。

ですから私は「借金があるのなら、早く残高を減らすようにしたほうがいい」と言っているのです。

返済は早いに越したことはないです。借金があると決断を鈍らせ、判断を誤らせる原因にもなります。

クレジットカード利用も実質上借金の一種です。返済のことをよく考えずにカード決済を多用するようなことは、しないほうが賢明でしょう。