最近は日本でも、金融商品としての「VIX指数」の認知度がかなり上がってきました。VIXは「ボラティリティ・インデックス (Volatility Index) 」の略で、「恐怖指数」とも呼ばれます。

しかしこの日本語名のせいでみなさんが勘違いしやすくなっていることがあります。

確かに、市場が暴落するのではないか、というときには「恐怖」が支配するわけですが、ここで「恐怖の度合いと、リスク選好やリスク回避が連動している」と、安易に解釈してはいけないのです。

VIX指数とオプションの関係

VIX指数は、主にはオプション取引のオプション料から算出されています。

オプションを購入する目的は、ヘッジのためです。株やFXを買ったり売ったりするときには、市場の揺り戻しで反対方向に動き、損をする恐怖がありますよね。

このため、値上がりや値下がりのリスクをヘッジするための保険としてオプションが購入されるのです。

オプションのもともとの意味は「保険」のことです。みなさんも加入している火災保険や自動車保険、生命保険もオプションの一種です。

その保険料の算出は、オプションを使って行われます。もし自動車の本体価格500万円に対して保険料が300万円などと高ければ、自動車保険に加入する人はいませんよね。

保険料に支払うよりも新しい車を買った方がずっといいです。こめため保険料、すなわちオプション料は、本体価格に対してだいたい1パーセントから数パーセントに設定されているのが通常です。

株やFXの買いに対して、保険としてのオプション価格も非常に安いのです。ただし、プット取引は損失が無限大になるということは覚えておいてください。損失してしまっては「保険」の意味がありません。

なおオプション取引は本来、長期投資をする場合の保険のために作られた市場です。日本では、金融庁も認めた「バイナリーオプション」が流行っていますが、これは保険商品としてのオプションの価値は全くないに等しいものです。

VIX指数の上昇はオプション料の上昇とイコール

保険の価格のことをオプション市場では「オプション料」といいますが、この価格が跳ね上がるのは、市場が下落する直前か暴落の最中です。

また、下落幅が大きくなるときを暴落といいますが、市場が暴落とはボラティリティの上昇も意味します。そして暴落でオプション料が上昇するとVIX指数が連動して上昇します。

逆の視点から見ると、VIX指数の上昇イコールオプション料の上昇で、暴落の保険であるオプションが上昇するということは、市場が下落や暴落をしていますよ、という意味にもなります。

市場が高騰をしているときのVIX指数は

保険とは、万が一に備えて加入するものですが、市場での保険にあたるのがオプションです。

オプション料という保険料は、市場が下落するときにしか上昇しません。市場が下落することは恐怖であるから「恐怖」指数とも言われるのでしょう。

では、高騰の場合、VIX指数はどうなるのでしょう?実際のところ、現市場を空売りしている人は少数派であるため、買いオプションを購入する人はほとんどいません。

買いのオプション購入は常に割安状態になるということも想像できます。購入する人がそもそも少ないため、市場が高騰するときのオプション料には変動はありません。VIX指数も上昇しないことになります。

VIX指数の読み方の例

株価、特にアメリカ株のニューヨーク株が新高値を更新すると、通常であれば買っている人は不安になってオプションを購入し、資産の保全を図るはずです。

しかし昨今のVIX指数は、最安値近辺をはい回っている状況で上昇はしていません。この状況からは「下値不安があまりない」という意識があることが読み取れます。

つまり、みなさんほとんど下値不安がなく株を買っている状態で、株価の上昇が起きていることになります。これはアメリカ経済が安定をしてきていることの表れと解釈することもできるでしょう。

しかし2017年の秋からは「VIX指数」がじわりじわりと上昇してきており、株価は相変わらず新高値を更新中です。

特にS&P株価指数が上昇し、新高値を更新したときから、このVIX指数が上昇しているのです。

ちなみに「別の記事」でも話題にしたとおりアメリカの代表的な株価指数はニューヨークダウではなく「S&P500株価指数」です。

なお、2017年の春から夏にかけては、VIX指数が上昇しませんでした。これは市場参加者のほとんどが、アメリカ株は割安であると判断をしており、オプションによるヘッジをかけなかったからです。

ところがS&P株価指数の新値を更新してアメリカ経済の実力以上に株を買ってしまった時点で、みなさんオプションの購入を始めました。オプション価格は上昇し、VIX指数も底打ち確認されて上昇したともいえるのです。

ただしこれは、アメリカの税制改革、つまりは法人税減税を考察の対象に入れていない状態です。この税制改革が施行された場合には、企業の利益が増えて株価が上昇する可能性があります。

そうなると財政赤字が拡大して債券の金利は上昇しますから、相殺される可能性のほうが高いと思います。もしここから株価が上昇したとしたら、バブルとも言えると思います。